171 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-セン: 無題。
しおりを挟む
「いいか、いいか?!……お前は最強だ、そう信じろ、いいや事実がそう示している!
……お前が本当の本当にとびきりの全力を出せば、間違いなく———この宇宙で1番強いはずだ、だから———!」
僕がこの宇宙で1番強いはず、かあ。
そんな言葉、聞くことになるとは思わなかった。
期待されていなかったんじゃない、確実に期待されていた、むしろ切り札とまで思われていたんじゃないか。
そうだ、立たなくちゃ。
うじうじしていたって仕方ないって、とうの昔に分かりきっていたはずだ。
結局は僕の気の持ちようだ、そんなくだらない課題だったんだ。
なんで見失っていたんだ、僕があの地獄の戦場から持ち帰ったのは、絶望なんかじゃない。
そうだ、次に———僕に託されたんだ。
僕たちに、全てを終わらせてもらうために。
無理だと、戦場でそう判断した瞬間から、彼らの意志は僕の保護に移っていて、その為にみんなは庇ってくれたんだから。
ありがとう、ここまで———結局僕は、貴方に頼りがちだったけど。
それでも、もう俯かない理由はできた、いいや見つけた。
再燃だ、再点火だ。
命の炎は再び燃え上がる。
何者にも邪魔されず。
何事にも拒まれず。
少年は再起する。
期待と、不安と、恐れと、絶望と、戦慄と、怒りと、意志を背負って。
「………………やります、僕……やってみせます、もう思い留まりません、もう迷いません、最後まで走りきって、そして———」
紅く、染まった。
「うわあああああああああああああああっ!!!!!!」
いいや、紅く染まったのは———視界の真ん中だけだ。
じゃあ、いや、なんで紅く染まった?
恐る恐る下へと目をやる。
現れていたのは、僕の身体をまるで両断するように縦に伸びた血の跡。
でも、僕は何も———外傷はないんだ。
見たくなかった。
僕が、僕自身が。
ようやく決意を固めて、ようやく奮起したのに、それが崩れてしまうのが嫌だったから。
「ああああああああああああっ!!!!……あああ、あああぅ……ああぁっ!!!!」
目の前で———果物のようにばっくりと、2つに割れゆく身体を両手で支える。
それらをゆっくり左手に寄せ、自らの身体に飛び散った肉片を右手で掴み取る。
一瞬にして流れるように落ちていった腸の破片を集めて、それらを凝視しながら。
「あああああ……ぅ……あああ……」
そんなことしたって、どうにもならない事こそ———僕が1番知ってるっていうのに。
そんな簡単に立ち直らせてくれるわけがないだろう。
僕にあそこまでの受難を浴びせてきた現実が、そんな簡単に再起のチャンスをくれるわけ、なかったんだ。
どうせさっきのだって、もう一度完膚なきまで叩きのめされれば、その想いは挫かれていたんだ。
だって、僕は、弱いから。
でも、今回は、今回ばかりは許されなかった。
もう今回は、戻ってこない。
前のように、身体を共有させていたから生きていた、だなんて甘い現実は微塵も存在しないんだ。
だから。
だから、僕は、許さない。
絶対に。
「終わらせよう、ロストとなって生き地獄を味わせる事も、その首を差し出すことすらできそうにはないがな」
「…………本っっっっっ当に、どこまでも」
煮えくり返ってたまらない。
「やってくれたな…………レインっ!!!!!!」
……お前が本当の本当にとびきりの全力を出せば、間違いなく———この宇宙で1番強いはずだ、だから———!」
僕がこの宇宙で1番強いはず、かあ。
そんな言葉、聞くことになるとは思わなかった。
期待されていなかったんじゃない、確実に期待されていた、むしろ切り札とまで思われていたんじゃないか。
そうだ、立たなくちゃ。
うじうじしていたって仕方ないって、とうの昔に分かりきっていたはずだ。
結局は僕の気の持ちようだ、そんなくだらない課題だったんだ。
なんで見失っていたんだ、僕があの地獄の戦場から持ち帰ったのは、絶望なんかじゃない。
そうだ、次に———僕に託されたんだ。
僕たちに、全てを終わらせてもらうために。
無理だと、戦場でそう判断した瞬間から、彼らの意志は僕の保護に移っていて、その為にみんなは庇ってくれたんだから。
ありがとう、ここまで———結局僕は、貴方に頼りがちだったけど。
それでも、もう俯かない理由はできた、いいや見つけた。
再燃だ、再点火だ。
命の炎は再び燃え上がる。
何者にも邪魔されず。
何事にも拒まれず。
少年は再起する。
期待と、不安と、恐れと、絶望と、戦慄と、怒りと、意志を背負って。
「………………やります、僕……やってみせます、もう思い留まりません、もう迷いません、最後まで走りきって、そして———」
紅く、染まった。
「うわあああああああああああああああっ!!!!!!」
いいや、紅く染まったのは———視界の真ん中だけだ。
じゃあ、いや、なんで紅く染まった?
恐る恐る下へと目をやる。
現れていたのは、僕の身体をまるで両断するように縦に伸びた血の跡。
でも、僕は何も———外傷はないんだ。
見たくなかった。
僕が、僕自身が。
ようやく決意を固めて、ようやく奮起したのに、それが崩れてしまうのが嫌だったから。
「ああああああああああああっ!!!!……あああ、あああぅ……ああぁっ!!!!」
目の前で———果物のようにばっくりと、2つに割れゆく身体を両手で支える。
それらをゆっくり左手に寄せ、自らの身体に飛び散った肉片を右手で掴み取る。
一瞬にして流れるように落ちていった腸の破片を集めて、それらを凝視しながら。
「あああああ……ぅ……あああ……」
そんなことしたって、どうにもならない事こそ———僕が1番知ってるっていうのに。
そんな簡単に立ち直らせてくれるわけがないだろう。
僕にあそこまでの受難を浴びせてきた現実が、そんな簡単に再起のチャンスをくれるわけ、なかったんだ。
どうせさっきのだって、もう一度完膚なきまで叩きのめされれば、その想いは挫かれていたんだ。
だって、僕は、弱いから。
でも、今回は、今回ばかりは許されなかった。
もう今回は、戻ってこない。
前のように、身体を共有させていたから生きていた、だなんて甘い現実は微塵も存在しないんだ。
だから。
だから、僕は、許さない。
絶対に。
「終わらせよう、ロストとなって生き地獄を味わせる事も、その首を差し出すことすらできそうにはないがな」
「…………本っっっっっ当に、どこまでも」
煮えくり返ってたまらない。
「やってくれたな…………レインっ!!!!!!」
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる