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第一章.美女と熊と北の山

18.閑話、モブラ視点

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 わたくしは、モブラと申します。黒竜ナーガブレ様にお仕えするモグラ獣人の1人で御座います。


 わたくし共は、普段は、黒竜様の食事のお世話や住居のメンテナンス、見回りなどをして過ごしております。働くことで黒竜様の庇護を得て、魔物などから守っていただくのです。わたくしは、見回りの係をしております。まだ黒竜様のお側につくことは、認められていないのです。

 ある日、住居内の見回りをしていると、通気孔側に人間の子供が落ちているのを見つけました。恐るおそる近付いてみると、ケガをしたため保護をして欲しいと言われました。 
 とても困りました。子どもと言っても、我々と比べて、背丈が3倍ほどもあるのです。どこの誰とも知れぬ巨人を自分の居住区にいれたがる者は、おりません。食事くらいは用意できますが、人間用の薬の持ち合わせも御座いません。
 協議の結果、宝物庫に滞在させ、食事だけ提供することに決めました。もしも、この子どもが盗人であれば、宝物庫に入れればすぐに露見するだろう、という判断でした。盗人であれば、黒竜様に成敗していただくのは、簡単です。こっそりやられるのが、1番迷惑なのです。魔がさして、手をつけてもらうのが、手間が掛からなくていい、ということに落ち着きました。 

 それから何日かして、また侵入者を見つけました。今度は3人も来ました。ロープを伝って降りて来たのだから、今度こそ盗人だということで、話がまとまりました。
 ロープを回収し、槍や弓を射かけます。食事班も呼んできて、総出で敵を迎え撃ったのですが、まったく当たりませんでした。3人の中に、見覚えのある人物がいるような気が致しましたが、あんなに大きな人間の知り合いはいないので、気の所為でしょう。  
 どういう訳か、武器は全部奪われてしまいましたが、1人捕まえることに成功しました。あと2人です! 

 武器がなくなってしまったので、やむなく人海戦術で体当たりを決行しましたが、吹き飛ばされてしまいました。侵入者を黒竜様のお部屋に入れてしまうとは、不甲斐ないことです。 
 侵入者は、黒竜様と戯れ始めました。我々が敵わないのも、納得です。侵入者は、ジョエル様だそうです。以前は、半分くらいの大きさではなかったでしょうか。何年も経っていないと思うのですが、随分と大きくなるのですね。

 ジョエル様だというのであれば、もう排除の必要はないでしょう。我々では、太刀打ちできません。黒竜様にお任せするしか、手立てはないのです。それでは、お茶の準備をしましょうか? ジョエル様は、お茶を飲まない人だったような覚えもありますが。


 よくはわかりませんが、ジョエル様たちは、お茶を飲むこともなく、帰って行かれました。人間の子どもも連れ帰って下さったので、元の生活に戻れます。

 ジョエル様が、大分洞窟を壊してしまったので、補修をするのと引越しをするのと、どちらがいいか、連日会議をしております。宝物庫の品が、大分少なくなったので、引越しをした方が楽だという意見が、今のところ優勢です。
 確か、前の引越しも、ジョエル様が住居を壊したからだったと記憶しております。新たな住まいには、ジョエル様が遊びに来ませんように。そう願わずには、いられませんでした。
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