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第四章.愛する私のシャルルへ
61.閑話、キーリー視点
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やっとローワンがいなくなって安心していたのに、シャルルは、よりによって、変態男に創薬を習いたいと言い出した。
どう考えても、人選ミスだろう。魔法特訓を名目に、ベタベタ触られて嫌がっていたのをもう覚えてないのだろうか。時間遡行前のことは忘れているかもしれないが、その後、罪滅ぼしと言って、教えてもらう時も酷かった。人間恐怖症克服直後のそれだ。覚えてないとは、思えないのだが。
薬草の買い出しに行くことになった。
ジョエル目当てのうぜぇメス共は、ジョエルに片付けさせた。ずっと一緒に遊んでやがれ。いっそどれかに食われてしまえ。
「よし、今のうちに出るぞ」
近寄ってきた変態目当てのメス共は、睨んで退散させた。邪魔だ。ウセロ。
それを見たシャルルは、笑顔で俺を不細工だと褒めやがった。なんでだよ。それ、絶対褒め言葉じゃねぇだろ。ふざけんなよ。可愛い顔しても、許してやらねぇ。
薬草問屋に連れて来たシャルルは、まったく役に立たなかった。薬草の注文が、できないらしい。
思い返せば、村で創薬する時、材料に変な名前を付けて呼んでいた。ローワンとダコタと俺には通じるが、あんな名前で発注を出しても、誰も正解の商品を持って来ないだろう。発注の段階で断られるか、別の何かを買わされるのかは、知らないが。
髪の染料が売れて、有名薬師の仲間入りを果たしたくせに、なんというポンコツなんだ。可愛いから許せる限度を逸脱している。それじゃあ、仕事ができない。
逐一説明するのは面倒なので、薬師は放置で注文を済ませた。元々、ペットみたいな扱いだったんだ。諦めよう。俺がやった方が、早い。
帰ったら、会計も洗った方が良さそうだ。致命的なことになる前に、掌握しといた方が安全だ。
「他に行きたいところは、あるか?」
「? 用が済んだら、帰るんじゃないの?」
「ジョエルがメス共をまいたら、また建物に近寄れなくなるだろう。戻ったら、出られなくなるしな」
「そっかー。戻っても暇だしねー」
特に希望はないようなので、市場に連れて行った。食材調達をしてもいいし、屋台で買い食いもできる。シャルルは、飯だけ与えておけば不満のない女だ。食わせるのが1番に違いない。
「タケルー。何食べたい? 今日は、熊じゃなくていいよ」
「ネズミ」
「えー? ネズミ? 売ってるかなぁ???」
やはり食い物が鉄板だった。シャルルは、目を輝かせながら、次々と屋台飯を買い漁っている。よくもまあ、そんなに甘いものばっかり入るものだ。
「キーリーは、何か食べたいのある?」
「俺は、いらん。さっき飯食っただろう」
魔獣はわかるが、シャルルはそんな状況でも食欲が止まらないようだった。太るのも、納得だ。
しばらく眺めていたら、ジョエルがやってきた。後ろにわらわらメスを連れて。
「1人じゃないなら、合流するな」
「最初のは置いてきた。次から次へと湧いてくる分は無理だ。諦めろ」
街を歩いているだけで、女が付いてくるって、どういうシステムだ。自慢なら、他所でやれ。
「あー、ジョエルだ! あーんして」
さっきネズミを買ったら、大量におまけをもらっていた。もらったはいいが、食いたくないのだろう。シャルルは、いらない物をジョエルに食わせる悪癖がある。俺にはやらないから、放っておいているが、ジョエルにやるのもムカつくんだよな。
ジョエルについてきた女も、すげぇ顔でシャルルを睨んでいる。それに気付いたシャルルは、青い顔だ。バカだな。少しは周りを見ろよ。
「こ、この人は、私のお母さんですよ」
そんなことを言いながら、ジョエルの髪をほどいて、女にしようとしている。どんな言い訳だよ。
「お前、時々、本当にバカだな。イケメンに近寄るから、そんな目に遭うんだ。俺んとこに来い」
「イケメン怖い。キーリーは安全」
シャルルは俺の背中に隠れて、涙目で震えている。
なんだそれ。もしかして、ケンカ売ってんのか?
宿に戻ったら、また女が増えていた。何故だ。この街には、何人女が住んでるんだよ。
「うわぁ、すごいね。大変だね。もうあそこ怖いから、村に帰ろうよ」
「そうは言っても、宿に行かなきゃ馬がねえ」
「ジョエルは、ダッシュで帰れるでしょ? キーリー1人くらいなら、タケルに乗れるんじゃない?」
シャルルとタンデム? 俺は構わないが、絶対イケメンが許さないだろう。死ぬ。殺されてしまう。
「俺も走る」
走る? 言ってみたけど、無理じゃね? ジョエルとタケルは、馬より速い。スピードは元より、持久力でもついて行ける気がしない。
「キーリーには無理だよ。タケル、キーリーを拘束して」
魔獣の背中から、紐が沢山出てきて、そのままくくりつけられた。そして、シャルルが騎乗する。
「ちょっと待て! なんだ、これは。正気か?」
「タケル、はい、しゅっぱーつ!」
絶対に、後でシャルルが見てない隙に、殺される! 何でだ。俺は悪くないだろう?
どう考えても、人選ミスだろう。魔法特訓を名目に、ベタベタ触られて嫌がっていたのをもう覚えてないのだろうか。時間遡行前のことは忘れているかもしれないが、その後、罪滅ぼしと言って、教えてもらう時も酷かった。人間恐怖症克服直後のそれだ。覚えてないとは、思えないのだが。
薬草の買い出しに行くことになった。
ジョエル目当てのうぜぇメス共は、ジョエルに片付けさせた。ずっと一緒に遊んでやがれ。いっそどれかに食われてしまえ。
「よし、今のうちに出るぞ」
近寄ってきた変態目当てのメス共は、睨んで退散させた。邪魔だ。ウセロ。
それを見たシャルルは、笑顔で俺を不細工だと褒めやがった。なんでだよ。それ、絶対褒め言葉じゃねぇだろ。ふざけんなよ。可愛い顔しても、許してやらねぇ。
薬草問屋に連れて来たシャルルは、まったく役に立たなかった。薬草の注文が、できないらしい。
思い返せば、村で創薬する時、材料に変な名前を付けて呼んでいた。ローワンとダコタと俺には通じるが、あんな名前で発注を出しても、誰も正解の商品を持って来ないだろう。発注の段階で断られるか、別の何かを買わされるのかは、知らないが。
髪の染料が売れて、有名薬師の仲間入りを果たしたくせに、なんというポンコツなんだ。可愛いから許せる限度を逸脱している。それじゃあ、仕事ができない。
逐一説明するのは面倒なので、薬師は放置で注文を済ませた。元々、ペットみたいな扱いだったんだ。諦めよう。俺がやった方が、早い。
帰ったら、会計も洗った方が良さそうだ。致命的なことになる前に、掌握しといた方が安全だ。
「他に行きたいところは、あるか?」
「? 用が済んだら、帰るんじゃないの?」
「ジョエルがメス共をまいたら、また建物に近寄れなくなるだろう。戻ったら、出られなくなるしな」
「そっかー。戻っても暇だしねー」
特に希望はないようなので、市場に連れて行った。食材調達をしてもいいし、屋台で買い食いもできる。シャルルは、飯だけ与えておけば不満のない女だ。食わせるのが1番に違いない。
「タケルー。何食べたい? 今日は、熊じゃなくていいよ」
「ネズミ」
「えー? ネズミ? 売ってるかなぁ???」
やはり食い物が鉄板だった。シャルルは、目を輝かせながら、次々と屋台飯を買い漁っている。よくもまあ、そんなに甘いものばっかり入るものだ。
「キーリーは、何か食べたいのある?」
「俺は、いらん。さっき飯食っただろう」
魔獣はわかるが、シャルルはそんな状況でも食欲が止まらないようだった。太るのも、納得だ。
しばらく眺めていたら、ジョエルがやってきた。後ろにわらわらメスを連れて。
「1人じゃないなら、合流するな」
「最初のは置いてきた。次から次へと湧いてくる分は無理だ。諦めろ」
街を歩いているだけで、女が付いてくるって、どういうシステムだ。自慢なら、他所でやれ。
「あー、ジョエルだ! あーんして」
さっきネズミを買ったら、大量におまけをもらっていた。もらったはいいが、食いたくないのだろう。シャルルは、いらない物をジョエルに食わせる悪癖がある。俺にはやらないから、放っておいているが、ジョエルにやるのもムカつくんだよな。
ジョエルについてきた女も、すげぇ顔でシャルルを睨んでいる。それに気付いたシャルルは、青い顔だ。バカだな。少しは周りを見ろよ。
「こ、この人は、私のお母さんですよ」
そんなことを言いながら、ジョエルの髪をほどいて、女にしようとしている。どんな言い訳だよ。
「お前、時々、本当にバカだな。イケメンに近寄るから、そんな目に遭うんだ。俺んとこに来い」
「イケメン怖い。キーリーは安全」
シャルルは俺の背中に隠れて、涙目で震えている。
なんだそれ。もしかして、ケンカ売ってんのか?
宿に戻ったら、また女が増えていた。何故だ。この街には、何人女が住んでるんだよ。
「うわぁ、すごいね。大変だね。もうあそこ怖いから、村に帰ろうよ」
「そうは言っても、宿に行かなきゃ馬がねえ」
「ジョエルは、ダッシュで帰れるでしょ? キーリー1人くらいなら、タケルに乗れるんじゃない?」
シャルルとタンデム? 俺は構わないが、絶対イケメンが許さないだろう。死ぬ。殺されてしまう。
「俺も走る」
走る? 言ってみたけど、無理じゃね? ジョエルとタケルは、馬より速い。スピードは元より、持久力でもついて行ける気がしない。
「キーリーには無理だよ。タケル、キーリーを拘束して」
魔獣の背中から、紐が沢山出てきて、そのままくくりつけられた。そして、シャルルが騎乗する。
「ちょっと待て! なんだ、これは。正気か?」
「タケル、はい、しゅっぱーつ!」
絶対に、後でシャルルが見てない隙に、殺される! 何でだ。俺は悪くないだろう?
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