僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル

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過去~高校生編1

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ご飯のお供にと、テレビをつけてベタに紅白にチャンネルを合わせた。


「大晦日って感じだな。」

「そうだね。」


最初はちょっと暇潰しって感じで見てたのに段々と真剣になる僕たち。


「うわ、すげぇ。何このド派手なおばさん!」

「えー知らないの?毎年凄いんだから、電飾とかギラギラーって。」

「こっちのおっさんは?…いや、女か、これ?」

「違いまーす。男の人だよ、多分。この二人はね毎年衣装張り合ってるんだよ。」

「この調子じゃ赤組が勝ちそうだな。」

「僕はね、白だと思う。だってまだsnow boy残ってるし。」

「は?慶太好きなの?どいつ?ラサールか?」

「ううん、ももだよ!」

「おまっ、あいつより俺の方が全然……」


別にどっちが勝ったっていいのに。

そんなに面白いわけでもないのに。

でも玲人と二人ならなんだって面白くなるんだね。

あぁ、もうすぐ今年が終わる。


「ほらね、白が勝ったでしょ?」

圧倒的な得票差で白組が勝ったことになぜか誇らしげな僕。


「でも、別にもものおかげって訳じゃねぇけどな。」

「何拗ねてんの?ほら、もう一年が終わっちゃうよ。何かないの、やり残したこととかさ。」

「ある……けど言わねぇ。」

「え、なんで?教えてくれたっていいじゃん。」

「教えねぇ。」

「もう、意地っ張り。あ、カウントダウン始まっちゃったよ。」


60、59、58……


「なぁ、慶太。」

「ん、なに?ほら、もうすぐだよ。」


33、32、31、30……


「0になったらキスするから。」

「…はっ?え……えっ?」

「するから。」


21、20、19……


「何、言って…だって…僕。」

「あ、あと15秒。」


どうしよ。

どうしたらいいんだろう。


11、10、9……


「玲人、僕…あの。僕どうしたら…」

「目、閉じて。」


5、4…


ぎゅっと目を閉じる。


3…


頬に玲人の手の温もりを感じる。


2…


あ、近づいてくる。


1…


どうしよ。


0。


本当に一瞬。

唇に自分のではない誰かの温もりを感じる。

ふわっと柔らかくて。

「これがキス?」

そう思ったときにはもう終わっていた。



「明けましておめでとう、慶太。」

「あ……おめでとう、ございます。」

玲人の腕に抱き締められた状態で新年の挨拶を交わした。


付き合いはじめて一週間。

初めてのキスを経験しました。

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