僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル

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大学生編

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「はぁ、マジでうまいわ。慶太、中華得意だもんな」

「そうかな?いっぱい食べて?」


(やった!)


僕は心の中でガッツポーズ。

やっぱり中華にしてよかった。

いつものおざなりの『おいしい』じゃなくて今日は聞く前にちゃんと言ってくれたし。

本当においしいんだ。

もっとレパートリー増やさないと。


がつがつと夕飯に食らいつく玲人を僕は自分の箸を止めて見ていた。


「慶太食えよ。お前の分なくなるぞ?」

「あ!ちょっと待ってよ。…その酢豚、僕のだよ」

「そうだっけ?食っちゃった」

「もう!……でもいいや」


君の笑顔で僕のおなかはいっぱいです。

なーんて、ダサすぎるかな?


玲人は「訳分かんねぇ」って顔して僕のほうを見てからまた食事に戻る。


そこで僕はあることをふと思い出した。


「ぁ…あのさ、玲人。来週なんだけど…」

「来週?何?」


二人して視線はカレンダーへ。

来週。

それは…


「あぁ。クリスマス…な」

「…うん」

「お前バイトだっけ?」

「ううん。その日はお休み」

「俺もそうだから、久々にどっか出かけるか」

「いい…の?」

「いや、俺が誘ったんだし」


これってデート…だよね?

いいんだよね?

二人で出かけるなんていつ振りだろう。

しかも記念日に。


込み上げる嬉しさを抑えることができない。

どうしても顔がにやけてしまう。


なぜか玲人は急に立ち上がった。

え?と思ったのは一瞬で、次の瞬間には玲人の手が僕の後頭部に回る。

そのまま引き寄せられてキスをした。


ちゅ、と一度触れて五センチくらい離れる。

とても近い距離に玲人の顔。

恥ずかしいけどでも目がそらせない。


「なぁ、慶太」

「な…何?」

「あのさぁ。……中華味のキスってやっぱなんとも言えねぇな」

「……ぁ、だね」


三秒ほど沈黙が続き僕らは一斉に吹き出した。


「酢豚味のキスってなんだよなぁ。ははっ」

「玲人が始めたくせに、もう」

「好きなくせにぃ」

「……好きだけど」

「慶太」

「ん?」

「今日エッチしよっか」

「ぇ…なに?」

「しよっか?」

「……いいよ」


その後夕飯の続きを食べてお風呂に入って、寝室へ向かった。

こんなに甘い雰囲気の中でセックスをしたのは一体いつぶりだろう。


記念日のデートが予定に加わる。

玲人の体温感じて眠る。


この幸せを知ってるから。

抜け出せないんだね。


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