異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百十九話 平和?

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第百十九話 平和?


猫の家族達が島に来てから、数日が経った頃。
島で初めて、作物以外の新しい命が産まれた。
夜中にお産が始まりそうだと黒猫さんから聞いて、部屋の外から静かに応援していた。
そして明け方、可愛い子猫が三匹産まれた。
扉の隙間から覗いていた私達だが、母猫さんから許しが出たので、そっと部屋へと入る。

「か、かわひぃ~」

皆それぞれ、小さな声で歓喜!
一生懸命乳を吸う子猫の姿。

「タオルの追加いる?ご飯は?」
『ありがとぉございます』

ちょっとおっとりした喋り方の母猫さんは、クリーム色の長毛猫さん。
子猫が毛の中に半分くらい埋まっている。

「お疲れ様。ゆっくり休んでね」
『はい~』

無事に産まれて良かったぁ。
あまり見ていても負担になるので、早々に部屋を出た。

「かわいかったぁ!」
「ちっちゃい!」

食堂に移動すると、皆それぞれに嬉しそうに話をし始める。
産まれたばかりの子猫を見るのは、初めてだった。

「本当、可愛かったわぁ」
「あんなに小さいんだな」

コマ達は得に嬉しそうだ。あの子達が来てから、一生懸命お世話してくれていたしね。
猫が猫トイレを掃除すると言う、不思議な光景を見た時はちょっとほっこりした。

「エスト、どうしたの?」

いつも手伝ってくれるエストがぼんやりと自分の手を見つめている。

「猫って」
「ん?」
「猫って・・・あんなに小さかったんだな」
「まぁ、気持ちは分かるけどね」

この島で猫って言えば、私(二メートル)かコマ達(一メートル)だもんなぁ。

「でも、その手の動きは変態オヤジっぽいから止めた方が良いよ」

モフモフを思い出しているのか、手が怪しい動きをしていたからね。

「へん・・・おや・・・」
「さぁ、朝ご飯の準備するよぉ」

子猫用のおもちゃを用意しようか?
黒猫さんの子供はまだ目が開いていないし、う~、楽しみだ!
そして次の日の昼頃、もう一人の出産が終わり、三匹の子猫が増えた。
皆がその姿に更にデレデレになったのは、言うまでもない。





「お、今日はミケとサシか」

猫家族達の部屋に、ミケとサシが入って行くのが見えた。
あまり大人数で入るのはストレスになりそうなので、交代制でお世話をしているらしい。
ガーゴとジェスカ夫妻は身体が大きいので写真で我慢してもらっているが、時々庭の方から部屋を覗きに来ている。

「ヒナ」

噂をすればと言うか、温室に行く途中でガーゴがやって来た。

「新しい写真なら、ここに」

日々ページが埋まっていくアルバムを渡そうとしたが、ガーゴが落ち込んでいる様に見えて手が止まった。

「どうしたの?」
「その・・・鉱石の事」

ガーゴには島の鍛冶をお願いしてあり、ジロー達もお世話になっている。
使う鉱石は島にある洞窟から好きに採掘して使ってくれと言ってある。

「ヒヒイロカネ、使うのに、必要な物。でも、伝説級」
「鍛冶をするのに必要な物があるけど、それが伝説級だからどうしようって事?」

ガーゴが頷いた。
何とも分かり辛いが、最近少し分かるようになってきた。

「その伝説級の物って?」
「バラ。数百年、見つかってない」

伝説級の・・・バラ?

「ガーゴ、ちょっとこっち」

手招きをして、一緒に温室へと入った。

「もしかして、これ?クリスタルローズなんだけどさ」

振り返ると、ガーゴが固まっていた。

「ちょっと育ち過ぎちゃって」

初めて花が咲いた時はかなり感動したんだけど、それからにょきにょきと成長。
まるでガラス細工の様な薄い緑色の茎と葉とトゲに、これまたガラス細工の様な透明感の深紅の花。
温室の側面を埋め尽くしそうな程になりました。

「こ、これ・・・」

固まっていたガーゴがプルプルと震え出した。

「一つで、ヒヒイロカネの山、買える」
「へぇ~」

と言われても、いまいち価値が分からん。
ヒヒイロカネが伝説級ってのは知っているけど、どれくらいの価値で取引されているのかはさっぱりだ。

「綺麗だもんねぇ」

貴族とか好きそう。
因みにこの花、見た目と名前はバラなのに、枯れる時は牡丹の様に花ごとぽとっと落ちる。しかも、綺麗な形を保ったまま。

「花だけなら・・・よいしょっと。ここにあるよ」

温室の隅に置いてあった箱を持って来た。
スーパーの買い物かごくらいの大きさだが、落ちた花が山盛り入れてある。
捨てるのももったいなくて、ね。

「あ、白色もあるよ。白っていうか、透明だけど。ん?」

固まっていると思っていたガーゴが、よく見ると白目になっていた。

「へ?」

そのまま、パタリと地面に倒れた!

「うぉぅ!?ちょ、うぇぇ!?」

慌ててイヤーカフスでジェスカを呼び出し、温室に来てもらった。

「ちょっと、あんた!どうしたってんだい!」
「ごめん。花を見せたらこうなっちゃって」
「花って・・・こいつは・・・」

温室の中を見たジェスカが固まった。
そしてそのまま、ふぅっと意識を手放してしまった。

「えぇぇ・・・これ、どうしたら良いのさぁ」

結局、ジローとエストに手伝ってもらって二人を運び出し、縁側に寝かせた。
三十分後、目を覚ましたジェスカに頭を殴られた。解せぬ。

「とんっでもないもん、突然見せるんじゃないよ!」
「え、えぇ~?だって、花じゃん」
「伝説級の、ね!まったく、心臓が止まるかと思ったよ!お前さんはもうちょっと物の価値ってのを」

お説教が始まってしまった。
そこから一時間、希少な物は数が少ないから希少であり、伝説級の物をジャガイモみたいに箱に入れておくな!的な話を延々聞かされた。

「お~い、ジェスカ。その辺にしてやってくれ」
「ジロー!あんたや他の冒険者がいながら!」
「ヒナにとっては、花は花。石は石。伝説級だろうと、そこらに落ちているもんでも、一緒」
「はぁ?」
「伝説級のお宝も、飾っておくだけなら何の意味もない。逆に、そこらに落ちている石でも、使える物なら大切にする。そこの漬物石みたいにな」

私が今朝、洗って綺麗にした漬物石。縁側で日干し中のそれをジローが指さした。

「そういう所、俺は結構好きなんだけどな」

わしゃわしゃと頭を撫でられた。

「この子が良い子なのは、あたいも知ってるさ。ただ、心配なんだよ」
「ありがとう、ジェスカ」

こうやって怒ってくれるのも、私を心配して言ってくれているのは分かっている。
私が騙されて、酷い目に合わない様に。

「ちゃんと気を付けてるから、大丈夫だよ」

この島で採れる物や作った物を、外に流通させるつもりは無い。
渡している人達には厳重に扱う様に言ってあるしね!

「その割には、欠損も治すようなポーションやら色々出してるけどな」
「ヒナ!」

ジローの裏切り者!

「いや、ほら!それは、売ったとかじゃなくて、その、ヤマタノオロチの時に怪我をした女の子とかさ!もう!ジローの馬鹿!」
「ヤマタノオロチって、あの東の島国の?封印されてるっていう化け物かい?」

うわぁっほう!墓穴掘ったぁ!

「ジェ、ジェスカさん、顔が怖いよぉ?」
「・・・まさか・・・戦ったのかい?」
「あの時のヒナは凄かったなぁ!あの化け物が手も足も出なくて」
「ジロー!ちょっと黙ろうか!?ジェスカ、その、大丈夫だったよ!?私は怪我もしなかったし!」

あああああ、ジェスカの顔がどんどん鬼の形相に!

「伝説の化け物と戦って、無傷?はは、そいつは凄い・・・って、このお馬鹿!」
「あの時はその、頭に血が上ったっていうか・・・。でも、もしまた同じ事になっても、私は戦うよ」

世界を救うなんて事は勇者とか英雄がやれば良い。
私は、私の腕が届く場所を守りたい。

「・・・はぁ・・・まぁ、あたいも冒険者なんてやってるから、気持ちは分からないでもない」
「あはは」
「それで、ヒナが化け物と戦っている時、あんたは何をしていたんだい。ジロー」
「へ?」
「まさか、黙って見ていた、なんて事はないだろうねぇ。ねぇ?Sランク冒険者さんよぉ」

あ、矛先がジローに向いた。

「ま、待て!話せば分かる!」
「へぇ~・・・じゃあ、その話とやらを聞かせてもらおうかねぇ」

ジェスカがユラリと立ち上がった。
ジローは既に、逃げ腰だ。

「ヒナ!」

助けを求められたが・・・。

「頑張れ!」
「裏切り者!」

先に裏切ったのは、そっちです。
あ、ジローが逃げた。

「待ちなぁ!」

すかさずジェスカが追いかける!
わぁ、早いなぁ。
やれやれ。今日も島は平和です。
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