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1章
【22】お家で稽古①
しおりを挟む朝食はトーラインと同じ様なものだった。
素材の質はあれど、定番な朝食なのかしら。
「今週はエイミラットと学園に行ってくだい」
食事の後半でロジバールさんが言う。
「えぇ、1週間ずっと?」
意外にもテルティアが難色を示す。
「私ではご不満ですか?」
「だって、エイミ-、一緒にご飯してくれないんだもん」
「当たり前です。学園ではご学友と昼食をとるべきです。ハマールが甘やかし過ぎなのです」
エイミラットもスパルタ系なのね。
ってかエイミ-の方が呼びやすいからアタシもそう呼ぼう。
ロジバールさんもロジィで、セドリックはセド?
愛称で呼ぶのって何だかウキウキしちゃう。
「ハマールにエイミラットみたいにしろって言うのは酷でしょう。彼にも良い所があるし、色んなタイプの人間に子供達と接して貰うのが良いと僕は思っているんだよ」
「それにしたってぼんやり過ぎです」
「す、すみません‥‥」
「今週は僕と一緒だから厳しく教育しとくよ」
長い付き合いじゃないけど、このガイウスさんの笑顔は嘘を付いているってのは分かる。
「むしろ、ガイウス様が調子に乗らないか心配です」
「おっと。僕がかい?」
「いい?ハマール。絶対に賭け事はさせてはダメよ」
「おいおい。僕はギャンブル狂じゃないよ?」
「ガイウス様は賭け事で敵を作るタイプですから」
それこそ付き合い短いから予想だけど、例えばガイウスさんがジークリットさんと勝負して勝ち様ものならメチャクチャ茶化しそう。
それを誰彼構わず遣るような人なら‥‥殴られるわね。
「ハマール、頼みましたよ」
ピレティアさんまで言う始末。
「僕は信用がないねぇ」
「「「はい」」」
2人にロジィさんまで加わって頷いてる。
カシウスさんは笑いながら頭を掻いた。
食後、裏庭に移動して、ロジィさんとの稽古が始まった。
「まずは私の動きを見ていて下さい。その後、同じ動きを間違ってもいいので一緒に遣りましょう」
ロジィさんは10分位、太極拳みたいな動きをしていた。
アタシには最初と最後位しか覚えられなかったけど、ルーシは
1度見ただけで動きを真似して見せた。
「すばらしいです。1度見ただけでここまで出来る方は居ませんよ。細かい所修正して行きましょう」
それから、足の向きとかホント細かい所を直して1時間ほど同じ動きを繰り返してた。
「準備運動も兼ねてますので、これから毎日行って行きましょう。次はもっと激しい動きに移ります。次も型で、基本となりますので、見ていてください」
今度は少林寺憲法っぽい。
これもちょっとゆっくりだけど遣ってのけてしまったので、細かな修正ってのになった。
「では、約束組手に入りましょうか」
なんでも、お互いに決まった動きをする組手らしい。
アタシには2人でやる型って感じに見える。
アタシはやる事ないので、お昼まで寝ようかしら。
ん?なんか気配?視線を感じる。
そっちの方を見ると遠くでピレティアさんが見ていた。
もっと近い所から感じたけど、気のせいか?
ま、いっか。
「昼食までの残りの時間は自由組手を致しましょう。好きに攻撃して頂き、思った様に防御して下さい」
「はい」
ルーシが右ストレートを繰り出す。
ロジィさんはそれを左手で払うと同時にルーシの右脇を叩く。
「申し訳ございません。痛かったですか?」
「大丈夫」
結構いい音したけど?
「覚えもいいですし、時間も有限ですので、早めに厳しく行かせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか」
「はい。お願いします」
ははーん。ロジィさん、わざと強く打って挫けないか試したわね。
「それでは参ります」
30分位かな、ルーシがやられっぱなしの自由組手が終わって昼食になった。
ガイウスさん達は午後から出掛けるらしくって、昼御飯までは家に居た。
「どうだい?特訓は」
「うん。たのしい」
「それは良いね。今朝は何をしたんだい?」
「体術の型と約束組手と自由組手」
「もうそんなに進んだのかい!?」
「ルーシ殿は覚えが早いので、予定よりも先に進んでしまいました」
「それは良いね。もしかしたら3ヶ月も経たない内に独り立ちしちゃうかもね」
「そうかもしれませんな。私も久々に熱が混もってしまいます」
「ロジィはスパルタだから辛かったら逃げなよ?」
「ルーシ殿は貴方様とは違いますぞ?」
「まぁそう言わず、ちゃんと様子見てあげてね。ナナチャも宜しくね」
ええ。分かってるわ。任せといて。
「午後は剣術に致しましょう」
ロジィさんがサーベルを2本持って来た。
ちょっといきなりは危なくない?
「これは模造剣ですので、刃はありません」
あ、そうなの。
「私の得意とする剣はこのサーベルなので、剣術と言うよりはサーベル術と言った方が良いかもしれませんね」
そう言いながら曲芸ばりにサーベルを振り回す。
それを見て、またルーシがやってのける。もちろんロジィさんよりスローだけど。
「これは驚いた。本当にルーシ殿は未経験者だ御座いますか?」
「‥‥うん」
「失礼致しました。通常半年は練習し続けて出来る様に成るものですから」
アタシですら驚くルーシの才能だもの、疑ったって無理ないわ。
「でわ、剣舞も午後の準備運動に致しましょう」
そう言ってまた細かい修正してた。
「いきなりですが、手合わせと行きましょう。思いっきり攻撃して来て下さい」
ルーシは剣を大きく振り上げ、ロジィさんに向かって振り下ろす。
何となくセドがデュラハンにした攻撃に似てる。
ロジィさんはそれを横に弾く。
「もう1度。次は違う動きで来て下さい」
今度はダッシュで接近して胸目掛けて薙る。
それを下に叩き付ける。
「では次は私の攻撃を受けて見て下さい」
ロジィさんはルーシが最初に行ったのと同じ攻撃を繰り出す。
振り下ろされた攻撃をルーシは剣を横にして受け止めようとして後ろに吹っ飛ぶ。
次の手も同じで、薙られた剣を受け止めたので、横に吹っ飛んだ。
ちょっとスパルタ過ぎやしませんか!?
「次も同じ攻撃をして来て下さい。今度は違う方法で受けますので」
「はい」
ルーシがまた剣を振り下ろす。
それを今度は剣の側面に当てて軌道を変えた。
ルーシのサーベルは勢いそのままに地面を叩く。
次もダッシュからの薙ぎ。
ロジィさんは体をちょっと縦にして、後ろに反りながらルーシの剣の下に自分の剣を滑らせて上に持ちあげながら避ける。
ルーシはバランス崩されて前のめりに転んだ。
「どうでしたか?」
なにかを体感して欲しかったのは分かるけど、どういう事かしら。
「まだ体が成長しきってないので一概には言えませんが、現状ルーシ殿は力がありません。ですので、この老いぼれにすら力で攻撃しても弾かれますし、受け止める事も出来ませんでした。なので最後に行った様な、体術でもそうでしたが相手の攻撃を避ける、もしくはいなしてから攻撃に移るのが有効な手になります」
なるほど。
「また、同じ攻撃を致しますので、今度はいなしてみて下さい」
ロジィがまた同じ攻撃をする。
それを今度はルーシがいなす。
「お見事です。次は突きますのでまたいなすなり避けるなりしてみて下さい」
「つき?」
ロジィさんの突きがルーシの鼻先で止まる。
ルーシは動けなかった。
「やはり」
ロジィさんは1度剣を納める。
「ルーシ殿は見た事を真似するのはとても上手で御座いますが、その分初見への反応が苦手なのだと思われます」
はぁ、なるほど。なんか納得。
「それはとてもすばらしい才能ですが、実践では常に基本と応用が大事になってきます。基本の動きは教えれば直ぐに覚えてしまわれるでしょうし、身に付けるには反復練習しかないと考えます。」
いくら覚えがいいからって、やっぱり反復練習は大事よねぇ。
アタシは苦手だけど、ルーシは得意そうな気がする。
「応用に関しては、これからたくさん手合わせしていけば、経験値も増えて自ずと出来る様になるでしょう。幸いな事に週末には色々なタイプの方と手合わせ出来ますので」
それから日が傾くまでチャンバラしてた。
当分は今日と同じメニューをこなして行くみたい。
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