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2章
【60】火情
しおりを挟む参ったわね。
みんな動けないまま、火が勢いを増していく。
幸いアタシ達の周りまで火が廻って来てないけど、このままじゃホントにみんな焼け死んでしまう。
そんな中、セドリックが膝に手を付くまで起き上がった。
火事場の馬鹿力なのか、スキルのお陰なのか分からないけど、1人でも動ける様になれば助け出して貰えるかも。
最悪、アタシとルーシは焼け死なないだろうから他の人を助けて欲しい。
「うおぉぉぉ!」
セドが吠えるのなんて初めて見た。
その瞬間、体の自由が戻った。
セドに絡み付いた鎖が砕け、それに連なったアタシ達の鎖も弾ける。
比喩だけど、そんな感覚だった。
「外に出るぞ!」
抗い続けた疲労はあるものの、みんな立ち上がり外へ走り出す。
ヒヒィン!
繋いでいた馬が暴れてる。
「どうどう」
セドが馬を落ち着かせて縄をほどく。
「ヴィオラ、馬車を安全な距離まで移動してくれ」
「了解!」
ヴィオラが馬車に飛び乗り、広場の反対側まで走らせる。
「ニコラ、魔法で火を消せないか?」
「やってみるわ。」
ニコラが呪文を唱える。
「『豪雨』!」
何も起こらない。
「え?なんで?『滝水』!」
またもや。
「ニコラどうしちゃったの!?」
「分からないわ。魔法が発動しない‥‥」
「!もしかしたら大きな魔法を無効化する結界が施されているのかも知れません」
「ビックスさん、そんな事あり得るんですか?」
「ええ。教会のほとんどの建物がそうですから。もしここが元々教会関係か、貴族の所有物だったのだとしたら有り得ない話ではありません」
「そんな‥‥」
「何も出来ないの?中に取り逃された人とか居ないのかしら」
「アイツの言い草だと居ないと思います。たぶん‥‥ みんな実験されたんじゃ」
ディオの言葉からフィンティスとの決別が感じとれるけど、家族の事に関しては何て言ってあげれば良いのか分からない。
「桶1杯位の水なら出せるみたいだわ。森にだけは燃え移らない様にみんな、手伝って!」
ドドドドド
突然地面が揺れる。
「地震!?」
揺れは大きいけど、ヴィオラが繋ぎ直してる馬が反応してない。
アタシ達の側だけ揺れている?
ガシャン!!
地面から大きな口を開け、建物の4分の1を呑み込み、巨大な長細いモノが現れた。
「地竜!?」
あれが竜?巨大なミミズにしか見えないんだけど。
気持ち悪い、エイリアンみたいな口を開き地竜はマグマの様な液体を吐き出した。
その先にはニーダさんが居る。
「危ない!」
セドがニーダさんを突き飛ばす。
そこにマグマが着地。一瞬で燃え上がる。
「セドリック!」
その炎はすぐに消えたが、もろに喰らったセドは力なく倒れ込んだ。
ルーシが駆け寄り、指を噛みきって血を呑ませる。
「飲んで!」
呑み込む前に指の傷が治ってしまい、また噛みきって血を垂らす。
「どいて!」
ヴィオラがルーシを突飛ばし、ポーションをセドの口に流し込む。
セドは呑まない。
息をしていない。
地竜はアタシ達に目もくれずに炎を建物ごと喰らい、マグマを吐き出す。
それが森にも飛び木々が燃える。
アタシ達に目も暮れていない。
最初のは吐き出した所にたまたまニーダさんがいただけって事?
「あれもフィンティスの仕業なの?」
「分からないですけど、あんなの隠して居たのなら、ここを離れないのでは?」
建物を食い付くした地竜は強く燃えている所に向かう。
「このままでは森全体が焼け野原になって仕舞います!」
燃えるものが無くなったら、街の方に行ってしまう可能だってあるわね。
「何とかしなくては」
「起きて、ねぇ起きてよ!」
ヴィオラがセドを揺さぶる。
みんな2人を見てみぬ振りしてるけど、手が震えてる。
ルーシだけは2人を見てた。
「ルーシ、無理よ。分からないかもしれないけど‥‥」
「分かるよ。ボクの血でも治せないんだよね」
「‥‥そうね。治るって次元じゃないわね‥‥ 辛いだろうけど」
「うん‥‥ 今はあれを何とかしなくちゃだよね」
ルーシが今までに無い、精悍な目付きをした。
「ニコラ、家無くなったから魔法使える様になってないかな」
「そうね。もう一度試して見るわ。『豪雨』!」
地竜の上から雲がないのに激しい雨が降る。
地竜に触れた雨は一瞬で蒸発して物凄い湯気が立つ。
「発動するわ!」
地竜は周りを消火され怒っている様に暴れている。
「『氷柱』!」
たぶん、見慣れた魔法を唱えたのでしょうけど、さらに凄い湯気が出ただけ。
「氷だと溶けてしまうわね」
「ボクが行くからニコラ援護して。みんなは消火お願い」
「危険よ!あれの表面も凄い熱いんじゃない?」
「大丈夫!」
ルーシが走り出す。アタシも着いて行く。
「もう!ニコラお願い」
「ええ、分かってるわ」
ルーシが辿り着く前に、岩の棘が地竜の下辺りから何本も着き出す。
1本も当たらない。
外したってより、発現前に地竜がかわした様に見えた。
「魔力か、精霊の動きを探知出きるのかも知れない」
目が有るようには見えないし、そう言った器官が発達してるのかも知れない。
ルーシが胴体に大刃を振りおろす。
ニコラの魔法と違って、避ける気が無い。
地竜の皮膚は強靭で中は柔らかくて、頬っぺたを指で押した時の様に凹んで刃が通らない。
それでも煩わしいのか尻尾で振り払われる。
「『石矢』」
ニコラが数十本の石の矢を放つ。
これはかわしもしないし、当たっても微動だにしない。
「『岩杭』」
地竜の真上に大きな杭が現れ落下する。
当たれば串刺しに出来そうだったけど、とぐろを巻いてかわされた。
「まるで、ダメージを喰らいそうなのだけ判断して避けてる見たい」
だとしたら倒すの難しいわね。
良い方法ないかしら。
マグマがニコラに飛んでくる。
『岩壁』で防いだが、続けざまにもう1発。
これも防げたけど、壁は崩れた。
今までと違って明らかにニコラを狙ってる。
「このままではじり貧ね」
地竜は周りの火を喰らってはマグマを吐き出す。
ルーシとニコラ、それにヴィオラとセド‥‥ 以外が消火にあたってるから燃え広がるのは防いでいるけど、みんな魔力が多い方じゃないので既に疲労感が出てる。
「ずっと水掛けたら弱らないかな」
ルーシが言う。
「やってみても良いけど、魔力切れするまでに結果でるかしら」
そう言いながらも、『豪雨』を唱えてくれる。
10分くらい地竜に水を浴びせているけど、全て蒸発してしまう。
凄い蒸気で地竜の姿が見えないくらい。
やはりダメージを喰らわないからか逃げたりはしない。
Gyueeeee!
うざったいとでも言いたげな雄叫びの後、水蒸気の中からマグマが飛んできた。
ディアボロスで両断する。
大刃が赤くなり曲がってしまう。
「効果無さそうだから止めるわね」
蒸気の所為でマグマがいつ、何処に飛んでくるのかも分からなくなってるし、無駄だったかも。
でも、もしかしたら‥‥
「‥‥ナナチャが、口の中に氷入れられたら水蒸気でお腹膨らんで破裂しないかなって」
ルーシがディアボロスを修復しながら伝えてくれた。
「分からないけど、1度なら試して見るだけの魔力は残ってるわよ。うまく口に入るかが問題ね」
「じゃぁ、ボクが口開いて来る!」
ルーシが走り出す。
何度か胴体に大刃を振りおろす。
尻尾で振り払ってくるけど、こいつの気質ならそのうち鬱陶しくてキーッてなるはず。
もう一撃喰らわすと、尻尾ではなく顔が向いた。
ルーシの至近距離で口を開く。
来た。マグマ吐き出す動作だわ!
ルーシはすかさず口に入り込み、ディアボロスを大きな車輪の様な形状に変えた。
口を閉じられなくなった地竜は、マグマを垂れ流す。
マグマに浸かって溶けてしまいそうなディアボロスを延々スキルで修復し、同じようにマグマに浸かっている足は熱傷と回復を繰り返す。
「!」
白くて痛みの無くなる重度の火傷まで行かずに回復して、また火傷するから痛みは相当なもんだと思う。
ルーシはそれを耐え続けている。
「ニコラ、隙間から打ち込んで!」
「『氷筍』!」
ニコラの放った砲弾状の氷が車輪の隙間を通り地竜の体内に入り込んだ。
口から水蒸気が吹き出す。それが猛烈に熱い。
排出される以上の早さで気化してるみたいで地竜のお腹が膨れ上がる。
ぼぉふん!
体内からの爆風でルーシは吹き飛び、地面に叩き付けられる。
「ルーシ!」
「大丈夫だよ!」
地竜を見上げる。
内臓が破裂したのか、動きが止まっていた。
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