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3章
【73】村を見て廻る。
しおりを挟む次の日昼過ぎ、村長宅に居た娘が訪ねて来た。
「クリラと言います。奥様から食糧庫に案内する様に申し付かって来ました。」
今日はいい天気で暖かいのに、彼女はローブのフードを深く被っている。
「食糧庫?」
「はい。食材は共同で保管しているんです。」
「へー。ナミル達もいいのにゃ?」
「はい。滞在中はいいそうです。」
「助かるにゃ。」
「それじゃぁ案内します。」
「あ、ちょっと待って。」
ルーシはそう言ってその辺に落ちてる石ころを拾うと、スキルでとても大きな日傘に変えた。
「日が当たると痛いでしょ?」
クリラの肌は非常に白い。
「わぁ、ルーシ、紳士にゃ。」
「そんなに大きかったら持つの大変そうなのですう。」
と言ってコリティスが魔法を唱えると、日傘が浮き上がる。
「それなら楽チンにゃね。」
「だったらもっと大きくするね。」
ルーシは日傘をまた触り、更に広く、クリラの体が完全に影に入る大きさに作り替えた。
「あ、ありがとうございます。」
フードを取ったクリラは嬉しそう。
食糧庫は借家から真っ直ぐ村の入口方向に下りていった所にあった。
石垣が積まれてる地域の1番先頭。
それより前は入口まで広場になってる。
隣の建物からは山羊の声が聞こえる。
「この倉庫は常に解放されてますので、節度を持って頂ければ中の物は好きに使って貰って構いません。」
中には乾き物ばかりだけれど、ちゃんと整理されてて干し肉なんかもある。
「右の倉庫は高価な食材で、左は山羊小屋で乳が摂れます。ただそちらの2ヶ所に入るのは村長の許可を取ってから、村の者と一緒にお願いします。」
「ここだけで充分にゃ。ありがとう。」
「それでは私はこれで。」
「色々見て廻ってもいい?」
「、ええ。構いませんよ。案内しましょうか?」
「とりあえず大丈夫ですう。1度私だけで廻って気になった事あったら質問してもいいですかあ?」
「はい。それじゃぁ、また伺いますね。傘ありがとうございました。」
クリラはまたフードをかぶり去っていった。
街並み自体に印象が変わったりする様な所はなかった。
ただ、広さの割にかすれ違う住民が極端に少ない。
それでも出会った人はみんな男で、何やら黒い石を担いでる。
「こんにちわ。」
挨拶すれば笑顔で返してくれるけど、まずは訝しむ目で見られる。
村に部外者が来てたらそんなもんなのかな。
村の半分を見て廻り終えた位で日が落ちて来たので借家に帰った。
「やっぱりこの村、変ですねえ。」
コリティスが窓から外を覗いている。
この村で1番立地のいい家を貸してくれてるみたいで結構見晴らしがいい。
「なんでにゃ?ナミルには儲かってるのに過疎ってる村に見えたけど。」
「その時点で変じゃないですかあ。それに、」
コリティスに促されてみんな外を覗く。
「昼間あんなに人が居なかったのに、灯りが沢山灯ってますう。」
「確かに。みんな夜型なんだにゃぁ。」
「村で?」
普通、村って言ったら朝も夜も早いモノだって言いたいのでしょう。
「農業とか盛んじゃないみたいだし、生計立てるのに早起きする必要がないんじゃにゃい?」
「まぁそうかもですねえ。」
「クリラがまた来たら聞いてみたら?」
「ルーシの言う通りにゃ。」
次の日の同じ時間に、クリラは現れなかった。
「まぁ、明日とも同じ時間とも言ってなかったからにぁ。待っててもしょうがないから残りを見て廻ろうにゃ。」
と言う事で昨日見てない方を半日かけて廻ったが、特に代わり映えもせずに日が落ちた。
「やっぱり日が落ちてから活動しているみたいですねえ。」
また外を覗いてコリティスが言う。
「ナナチャが見回ってみるって。」
「あ、いいですねえ。お願いします。」
アタシは窓から外に飛び立ち、村の上を旋回して廻る。
外を歩いているのは男ばかり。
女性を全然見かけないので、不道徳だけど幾つか窓から中を覗いて見た。
・・・野暮だったかな。
覗いた家には女性がちゃんと居て、お楽しみ中。
女性の居る家はだいたいそうだった。
やけにお盛んな村ね。
偶然、クリラの家を発見。
中から扉を空けて男を招き入れてる。
彼女の旦那か彼氏かしら。
ぐるぐる廻って見たけれど、やっぱり男がちらほら歩いているのを見掛けるだけで、ほとんどの人が家に籠ってるみたい。
帰りしなにクリラの家の上を通ると、さっき入って行った男が出て行き、すぐさま別の男が入って行った。
んー、自由恋愛かな?
「どうでしたあ?」
なんてルーシに伝えさせたらいいのか悩む。
「えーとね、ベネル見たいだったって。」
ルーシはよく分かってないみたいだから良かった。
ベネルとは王都に近い色街。
ナミルとコリティスには伝わったみたい。
「村の者だけでそんな事してても飯の種にはならないにゃね。」
「ですねえ。一応クリラに聞いてみましょうかあ。必要な情報が得られるかも知れませんしい。」
2日ぶりにやって来たクリラは疲れた顔をしている。
「この村はどうでした?」
「静かでいい村にゃ。」
「そうですか・・」
疲れているからか、一瞬暗い顔をする。
「疲れているみたいですねえ。」
「え?ええ。昨日、一昨日と忙しくて。。」
「そうなんですねえ。」
「何処か案内しましょうか?」
「大丈夫にゃ。でも、時間あるならお話してかにゃい?」
ぴょんぴょんとクリラに近づくと、微笑みながら頭を撫でてくれる。
「そうしようかな。」
他愛もない話やナミル達の掛け合いがよほど楽しかったのかクリラは終始笑顔だった。
「明日も来ていいですか?」
「もちろんにゃ。」
クリラがまた昼過ぎに来てアタシを撫でる。
今日は膝の上に乗ってあげようかしらね。
「この村の人達は朝遅いんですかあ?」
「え、ええ。そうですね。。」
「昼間出歩いても全然出会わないけど、何の仕事をしてるのかにゃ?」
「男の方は石矢を作ってます。」
矢尻が石で出来てる矢の事か?
だから出会った男は黒っぽい石運んでたんだ。
でも、それってやっぱり隣の国に売ってるって事よね。
犯罪じゃないみたいだけど。。
「女の人は?」
「その手伝いと言うか、、」
クリラが言葉を濁したので、この話しはお仕舞いになった。
無理に話させても不信感が募るから時間を掛けて聞き出そうって判断なんでしょう。
「あの、」
帰りしなクリラが何かを思い立ったのか、決心したのか、振り替える。
「後日、村長から村に棲むか聞かれると思います。、その時棲むって言って下さい。」
「まだ棲むかどうかは決めてないにゃ。でもどうしてにゃ?」
「それは、棲んでくれたら嬉しいのと、、棲まないって言ったら酷い目に合うから。。」
「なんで?」
ルーシが聞く。
みんな同じ表情になってる。
アタシも人間だったら同じだったかも。
何で棲まないと酷い目に合うのか分からない。
それにどんな酷い目なのかしら。
「どんな?」
ルーシがまた聞く。
「知らない方が良いと思います。私も詳しくは知りませんし、いざと言う時は逃げて下さい。」
「よくわからにゃいけど、何でナミル達にそんな事教えてくれるにゃ?」
「皆さんお優しいから、、」
そう言い残しはクリラは会釈して出て行った。
「どう思いますう?」
「管轄外の話っぽいにゃ。」
「でも気になりますよねえ。」
「そうだにゃぁ・・」
「まだこの村に居るんだよね?」
「そうですねえ。本題についてまだ調べないとですからあ。」
「じゃぁさ、一緒に調べてみようよ。クリラなんだか辛そうだったよ。」
「そんだにゃ。どの道調査するんだから2個も3個も増えたって変わらないにゃね。」
「決まりですねえ。でも、どう調べましょうかあ?」
「やっぱりナナチャに調べ廻って貰うのが目立たなくていいんじゃないかにゃぁ。」
「ナナチャ、いい?」
「いいけど、何処調べたらいいのかしら。」
「、、何処調べたらいいの?って言ってる。」
「やっぱり勝手に入るなって言われた所じゃにゃい?」
食糧庫の両隣か。
「了解。夜が更けたら行ってくるね。」
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