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3章
【91】
しおりを挟む螺旋階段を下りきると踊場の先にまた扉がある。
奥に開く観音扉。木製っぽい。なかなか重厚感がある。
後からこしらえたのか、壁との隙間がちらほらあって、そこから光と煙が漏れている。
今のアタシのサイズなら何とか入れそうな隙間。
中に入る大きな広間になってて、丸テーブルが並べられている。
壁側に何席か椅子が用意されていて、それに座る年配者がちらほら。
まるでパーティー会場の様だわ。
広間の中央より少し奥に位置する台座の上におっきなお香。
そこから沢山煙が漏れてて、足元に溜まって歩く度に舞い上がっている。
あれを吸わない対策も必要ね。
更に奥に上等な白いテント。
あそこにイプノシーが居ると思うのだけど、探る前にみんなを中に入れ込みたいかな。
よくよく広間を見渡すとローブを着た人よりも私服の、それも村人風な格好の人の方が多い。
みんな似たようなバックを肩から掛けているのは仕様のなのかしら?
入口の扉は門みたいに板で施錠するタイプで、今はされてない。
これってしれっと入れちゃうんじゃないかしら。
武器は流石に隠さないとダメだろうけど、状況をルーシに念話すると直ぐに扉が開く。
アタシが探りに行ってる間に扉の外まで来てたのかしら。
少しだけ開けた扉からスッと全員入ってくるのを見守ってたけど、特に気にする人は居なかった。
1度ルーシの肩に戻る。
「武器はどうしたの?」
「バックに入れてティチが持ってるよ」
スムカに貰ったバックね。あれならティチの盾をしまってもかさ張らない。
ルーシは指輪やブレスレットに変えて自分で持ってられるし、ナミルの武器は爪だから隠す必要もないか。
ディオとコリティスはバックに一緒に入れているのかティチの隣に陣取ってる。
「とりあえず、椅子の方に行きましょうかあ」
みんなの顎辺りから風の音が微かに聞こえる。
「コリティスが風の魔法を掛けてくれたんだよ」
煙対策って事か。アタシもして欲しいけど、ここで詠唱したら目立っちゃうかな。
「ナナチャはなるべく高い所に居てね」
って事なので、背の高くて掴まり易いナミルの頭に乗る。
ってかアタシ達は馴れすぎてて何とも思わなかったけど、ナミルの格好、けも耳も目立ち過ぎじゃない?
「お前ら、何でここに!?」
ほら見つかった。
「もしかして俺について来たのか?」
村長の息子がまぁまぁな剣幕なので周りの注目が一気に集まる。
参ったわねぇ。でももうどうしようもないか。
ティチがバックに手を掛ける。
「そうにゃ。だって苦労して来てるのに適当にあしらうんにゃもん。てへ」
ナミルがふざけてるのかぶりっ子なポーズを取る。
ちょっと寒気がしたのはアタシだけ?
「どうしたのですか?」
白いローブ姿の背の高い男が近付いてくる。
とても見覚えのある顔‥‥
「セドリック!?」
セドリックはあの時亡くなったはず。
「セドリックさん、生きてたんですかあ?」
コリティスとナミルは居なかったからあれだけど、あの場でセドリックの姿を見ていたら生きていられたとは思えない。
「もしかして、僕の知人ですか? すみません、過去の記憶が曖昧でして。」
セドリックが言う。
「彼女を連れてきて下さい」
村長息子がしぶしぶ席を外し、変わりに現れたのはヴィオラだった。
「ヴィオラ!」
「ルーシ?それにみんなも」
彼女も白いローブ姿だ。
「ヴィオラ、彼らが僕を知っているみたいなんだけど」
「ええ。みんなセドの冒険者仲間よ」
「あぁ、そうなんだね」
絶対偽物のはずなのにセドリックにしか見えない。
「ホントにセドリックなの‥‥?」
ルーシの目が潤む。
「えっと、君は?」
「ルーシだよ‥‥」
「ルーシ君か。覚えてなくてごめんね」
「みんな久しぶりね。それにしても珍しいメンバーじゃない?」
「色々あって今はこのメンバーでパーティー組んでるのにゃ」
「へぇ、そうなんだ‥‥パーティー名は、なんて言うの?」
「『にゃんにゃんパラダイス』っ!」
ナミルの小脇をコリティスが殴る。
「まだ正式に組んでるのわけじゃないんでえ、パーティー名は決まってないんですよお」
悶絶するナミルを尻目にコリティスが答える。
「ふふふ。相変わらず可笑しな人達ね」
ヴィオラが微笑む。
久々の再会だからなのか、ヴィオラの雰囲気が凄くマイルドに感じる。
「ここには何しに来たの?」
「それは、亡くなった人と会えるって聞いて……」
ティチが答えた。
ティチとディオの家族が全員亡くなって居るのはヴィオラも知っているから、不謹慎だけど嘘に信憑性がましてちょうど良い。
「なるほどね。」
そう言うとヴィオラはセドリックに何かを囁いた。
「わかった。斎主様にお伺いしてくるね」
セドリックがテントに向かって行く。
「斎主様なら貴方達の願いを聞き届けて下さるわ。」
「あの方は本当にセドリックさんなの?」
「ええ。斎主様のお力で甦ったのよ。その反動で記憶をほとんど失くしてしまったけど」
信じられない。全身大火傷で即死だった彼が傷1つなく歩いてる。
「貴方達も斎主様のお力に触れれば分かるわ」
セドリックが人数分の飲み物を持って戻ってくる。
「少しお話を聞かせて頂いても宜しいですか?」
セドリックの顔で他人行儀されると何だか切なくなるわね。
「それでは斎主様のお力添えを受けたいのは、そちらのお2人と言う事ですね。」
セドリックにダンジョンで亡くなった2人と孤児院で亡くなった20人の話をする。
孤児院の方は流行り病って事にしたけど、本来ならセドリックも知っているはずなのに覚えている様子はない。
そもそもヴィオラが知っているから嘘にならないのだけれど、彼女はとろんとセドリックを見つめてあまり話を聞いていない様だった。
「もうしばらくすれば斎主様もお手透きになられますので、それまでお茶を召し上がりながらお待ち下さい」
セドリックがお辞儀して立ち去るのに続いてヴィオラまで行ってしまう。
「宜しいのですか?温情が過ぎませんか」
セドリックに村長息子が近付いて来てそう言ってる。
アタシ達には聞こえていないと思っているのでしょうが、アタシの耳は良いのだよ。
「知人には便宜を図りたくなるものじゃないですか。それに、ここまで付けられたのは貴方でしょ?」
村長息子が一瞬固まり、項垂れて歩いていく。
「このお茶飲んでも大丈夫ですかねえ」
「絶対飲んじゃダメだって」
さっきセドリックが持ってきたお茶。
お香と同じ香りがするのよね。
「やっぱりそうですよねえ」
「ヴィオラもやっぱり催眠にかかってるのかにゃ」
「十中八九う?」
「でもセドリックさんは?私には他人の空似には見えなかったけど‥‥」
「ルーシはどう思った?」
この中でセドリックやヴィオラと1番近しい関係だったのはルーシだ。
「‥‥セドリックだったけど、何か違った。」
「記憶ないって言ってましたし、雰囲気違いましたねえ」
「本当にセドリックなんだったら助けなきゃ……ヴィオラも」
「そうにゃね、イプノシー捕まえて解決してからゆっくり真相探ろうにゃ」
ナミルがあえて元気に言ってくれる。
「テントの中には俺とティチーノしか入れないのかな。俺達そのイプノシーって奴の顔、絵でしか見た事ないけど大丈夫か?」
「ナナチャも一緒に連れていって。ナナチャが1番ハッキリ覚えてるから」
「ミュー!」
『任せといて』って意味で鳴いてみる。
「それじゃぁナナチャ、テントの中にイプノシーが居たら上に向かって火を吹いてくれにゃ」
「そんな事したら調査じゃ済まなくなりますけど、そのつもりですかあ?」
「みんなもそのつもりにゃろ?覚悟決めようにゃ」
「うん。ボク、イプノシー絶対許さないよ」
ルーシの目付きが鋭くなるなんて珍しい。
ヴィオラの事もあるからかな。
そうしている間にセドリックが迎えに来た。
「中で斎主様がお待ちです」
ルーシ、ナミル、コリティスはテントの入口で近くで待機。
テントの中はかなり暗い。
煙も外より濃い。
椅子に腰掛けたローブ姿の男、両脇には屈強な男が立っている。
「貴殿方が新たな迷い子ですか」
ローブ姿の男が顔をあげる。
その顔を確認して、アタシは真上に一筋に登る炎を吐いた。
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