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3章
【90】死んだダンジョンに潜入
しおりを挟む「死んだダンジョンだな」
洞窟の中はうっすら明るい。
魔光石だったかしら、魔素に反応して光る石。
壁に魔石が埋め込まれていて、その周りが光ってる。
足元と目線辺りに等間隔で埋め込まれているから、どのくらいで消費するのか分からないにしても、大量の魔石が必要だと見れば分かる。
「これの為に魔石を集めていたのかな」
「それが濃厚ですかねぇ」
2列で隊列を組んで進んで行く。
前衛はルーシとティチで、しんがりがディオ。
一応みそぎは審問官の手伝いと護衛なのでナミルとコリティスを間に挟む形になった。
1層目は真っ直ぐ大きな道が伸び、両側に枝分かれした小路の先が部屋になっている。
部屋には棚が並んでいて、その中にマッシュルームが沢山生えていた。
「確か、キノコの栽培で生計立ててるって言ってたにゃ」
「死んだダンジョンにこんな使い道があるんですねえ」
冒険者が討伐したダンジョンのその後なんて気にしないわよね。
こんな使い道が珍しいのか当たり前なのかすらアタシ達には分からない。
とりあえず人気もないので次の階層に降りる。
登り降りは坂。1層目も2層目も伸ばせば手が届く位の高さの天井なので坂も緩やかな造りだった。
2層目全体の造りは1層目と同じで、部屋の中もマッシュルーム。
「‥‥行き止まり?」
大きな道の先に降りる坂がない。
「これだけって事はないよな」
「あれだけ馬車があって人っ子1人居ないとかそりゃないにゃ」
確かに最低操縦者1人は乗ってないとおかしいわ。
「ダンジョンならボスの部屋があるはずですよねえ」
あ、ダンジョン討伐は1度しか経験してないから詳しくないけど、最下層にボスモンスターが居てその部屋にあるおっきな魔石を回収するとダンジョンが機能しなくなる。
「それらしい部屋なかったですよねえ」
ダンジョンごとで大きさも深さもまちまちだけど、そのシステムは変わらない。
「何処かに隠れた部屋か、下に降りられる所があるって事にゃね」
「さっきの手押し車がいっぱいあった部屋は?」
ルーシが言っている部屋は、大きな道の突き当たりそばの部屋。
そこだけはマッシュルーム農場ではなく、手押し車の格納庫になっていた。
「近いし、そこからもっと調べて見ましょうかあ」
その部屋は真ん中に手押し車が通れるスペースを開けて他は車がびっしり置かれている。
さっきは特段不自然に思わなかったけど、運搬用資材が1番奥にあるって変じゃない?
マッシュルームを馬車まで運んだ後、またここまで車を戻しに来るとか手間にしか思えない。
「ナナチャがこの部屋怪しいって」
「お、動物の勘かにゃ?」
勘なのは違い無いけど、動物的勘ではないかな。ナミルじゃないし。
見渡した限り他の部屋と同じか少し広いのかな。角まで調べるには車をどかさなきゃならないわ。
「ナナチャ、上から見て回ってくれる?」
ルーシに頭を撫でられながらお願いされて、断るわけないじゃない。
「任せといて!」
アタシは天井すれすれまで飛び上がり、壁沿いを半時計回りに回る。
手押し車は4台づつキレイに並べられていてる。
数が多くて全てを使いきる事がなんのでしょうね、壁側の車は埃を被っちゃってる。
「怪しい所発見!」
「みんな、今ナナチャのいる所が怪しいって」
みんながいる入口から見て左奥の隅っこ。そこだけ1台分空いてる。
床には木板が並べられてて、その下に階段があるってアタシの勘が言っている。
「ここだけ少し隙間が広いわ」
とティチ。横歩きで進めば細い子ならギリギリ通れそう。
ナミルとディオは苦労しそうだけど。
「俺が先に行く」
車を退かせば良いだけなんだけど、侵入の痕跡を残しときたくないのでその隙間を頑張って進んで来たディオ。
木板を外すと口の狭い階段が現れた。
アタシの勘、正解。
ディオが1度降りていき、下を確認して戻ってくる。
「とりあえず殺気も気配も感じなかったよ」
そう言って手招きするとまた階段を降りて行った。
他のみんなはディオの手招きを確認してから手押し車の隙間を通って階段を降りていく。
ルーシが最後に木板で階段に蓋をしながら降りる。
3層目は天井が少し高くなってるけど、構造は変わらなそう。
階段を降りて真っ直ぐ道が続いてる。
「かなり暗くなったにゃ」
今まで目線位の高さにも魔石が埋め込まれていたのに、この階層には足元だけ。
「より慎重に進みましょう」
また隊列を組み直して進みだす。
枝分かれした先の部屋も同じ造り。
ただ何ヵ所か回ったけど、棚があるだけでキノコは生えてなかった。収穫後なのかな?
上に上がる手段が階段だから、上がって直ぐの部屋を手押し車の保管場所にしてあったのかも。
ちょっと自分の勘に自信がなくなってくる。
「でも、板で階段隠してたなんて怪しいよ。ナナチャの勘は間違ってないよ。」
ルーシが慰めてくれる。どんどん成長してる彼けど、優しいのは変わらない。
「この部屋にはキノコがまだあるみたい。」
突き当たりまで後3ヵ所目の部屋。
「またマッシュルームですかあ?」
「違うキノコかな。似てるけど」
真っ白だけど、傘が薄くて開いてない。柄も細長い。
「これ食用にゃのか?ナナチャなら食べられるか分かるかにゃ」
アタシに動物的知識を求められても満足に答えてあげられないのだけれど、このキノコに関しては嫌な感じしかしない。
「たぶん止めた方がいいって」
「やっぱにゃ」
ナミルも気付いてたのね。
「食べたら、良くて幻覚症状じゃないかって」
マジックマッシュルームの1種でしょ絶対。
この世界でその呼称が通じるのか分からないけど。
「このキノコってえ、燃やしても効果ありますかねえ」
「どうだろう。ってかどうしてそう思うんだ?」
コリティスが何を思ってそう聞いたのか、ディオとティチは理解出来ない。経験無いから。
なのでイプノシーの集会でお香が焚かれていた事、それを吸ってから頭がぼんやりした事などを説明してあげる。
「なるほど。確かにそのお香がこのキノコかもしれないな」
「あの村を審問する位なら、これを証拠に使えそうですねえ」
コリティスはこの先に何も無かった場合の作戦を考えているのかしら。
「斎主様ってのを探しだして取っ捕まえるのが1番の証拠になるにゃ」
ただ、ここまで来てまだ人の気配を感じない。
「ナミルは下の階層で集会してる気がするにゃよ」
ナミルの勘が発動したか?
「ナミル、ここまで来たらみんなそんな気がしてますよお?」
「いいじゃん、そう言うのは先に口にした方の功績になるのにゃ」
「何の功績ですかあ?」
「ナミルの勘は良く当たるって功績にゃ」
コリティスが心底どうでもいいって顔でナミルを見る。
「にゃんだ?その顔は」
「兎に角先に進もうか」
突き当たりまで進むと、暗くて見えなかったが、大きな観音開きの扉があった。
それを開くとまた階段。
「あのお香の香りがするにゃ」
「本当ですかあ?私には分かりませんけどお」
コリティスはもうふざけてないのだろうけど、口調が少々皮肉って聞こえる。
ただ、ナミルは鼻が常人より利くのでしょうね。アタシも微かだけど香りを感じてるもの。
「ナナチャも香りがするって。ナミル鼻いいんだね。すごいね」
ルーシに無邪気に誉められて、照れたやら恥ずかしいやらでナミルの顔が赤くなる。
でも、暗いからアタシ以外には気付かれてないかな。
「と、兎に角この先は慎重に降りるにゃ」
階段は螺旋状で足元だけが照らされているが、降りるにつれて下からの明かりが漏れてくる。
「人が居そうな感じがするにゃ」
自然と足音に気を使い、声も小さくなる。
「ナナチャ、偵察お願い」
ルーシがアタシの頭を撫でると体が小さくなって行くのが分かる。
今回はだいぶ小さくしたわね。
一寸法師?いやいや、親指姫でしょ。
「ミュー」
アタシはなるべく薄暗い所を飛んで階段を下る。
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