許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。

wakaba1890

文字の大きさ
23 / 38

修学旅行1日目〜一服〜

しおりを挟む


 近くのゴールディングジムで体を漫然に動かし、ある程度別のベクトルで色々と解消できた彼は、白木が待つ居室へと向かっていた。

「・・あ、なんかアイスでも買ってくか...」

 すると、丁度、旅館の一階受付近くにアイスの自販機があったため、幾つか見繕う事にした。

「....。」

 千円札を入れ、しばらく何を買おうかと、白木はどんなのが好きなのだろうかと考えていると、後ろから手が伸び適当なボタンが押された。

ガタンっ!

 無情にも商品は決済されてしまい、バニラアイスバーが落ちてきた。

「...篠蔵、一つ貸しだな。」

 彼は振り返らずとも何となく気配から、その手の正体を察していた。

「げっ、悪い悪い代金は返すって...お前に借り作っちまったら、あとが怖えよ」

 彼が冗談半分で言った落とし前は、篠蔵にはかなり効果的なようだった。

「...いや、もう出ちまったもんだ。取っとけ」

 物事は不可逆で、起こってしまった事へは取り返しがつかないため、彼はそう言ってバニラアイスバーを篠蔵に渡した。

「...ぐっ、味わって食わねぇと..」
 
 軽い悪戯のつもりが、アイス一個の割には高くついていた。

ピッ

ガタンっ!

 存外にも篠蔵が食べているバニラアイスバーが美味しそうだったので、彼も同じの食うことにした。

「..そういえば、お前らは4人部屋だよな?」

 アイスを食べながら、そういえばと少し気になっていたことを聞いた。

「ん?あぁ、うぅ..歯覚過敏がっ...っか..そうだぜ。」

 歯覚過敏に当たりながらも、彼は何とか答えていた。

(...うーむ、学年の生徒数が半端なせいか...)

 彼は既に食べ終え、木の棒だけになったアイスバーをくわえながら、他に考えられる事を頭に浮かべていた。 
 
「....。」

 ぼんやりとそう考えていると、篠蔵が神妙な面持ちでこちらを見てきていた。

「..なんだ?」

 男から見つめられても何も嬉しくないので、少し鬱陶しそうにそう言った。

 まぁ、白木は白木だから比べるまでもないが...って、何言ってんだ俺....

「...いや、海道。お前、ほんと変わったよな。」

「..なんだ、そんな事か」

 珍しく真剣そうな顔でこちらを見ていたので、何かと思えば今更の事であった。

「そんなことかって...側から見れば一大事だろ..」

 確かに、わかりやすく目に見えるようなステータスや、見た目は変わったのは事実であった。

 しかし、根っこの面倒な偏見に満ちた思想や、考え方、独自の価値観は何ら変わっていなかった。
まぁ、変えるフリくらいならできるようになったが、やはり自分でも自分自身をかなり気に入っているため、わざわざ変えようとは思ってないので特に問題ないか。

 世の中の人間は良い人でありたがるが、そんなものは俺に取ってはどうでも良いものだった。

 結局、人が何を考えているとか、人からどう思われているとかはキリがないのである。

 だから、そんな事よりも一人一人が出来る事へ先ずは専念して、自分の道を進み続ける。そうすれば、小手先の価値よりも、より真意に近づける。

「・・まぁ、何でも良いが..」

「お前、小学校の時からずっとそうだよな。」

「?」

 そういえばと、夏明けの初日に、小学校から同じみたいな事を言っていたのがフラッシュバックした。

「なんか、達観してるっつーか、変に大人臭いけど、それでいて自分の時間を楽しんでるつぅーか...」

「....。」

 彼の文言からは、どこか真実に達しそうな思考回路が垣間見えると、実際効果はない嫌な予感が的中した。

「ほんと、中身人生上がったおっさんみたいだよな!ははははっ!」

「っ!...ふぅ...やれやれ。」

 時折、彼の野生?の嗅覚なのだろうか、兎に角それの切り味は鋭すぎて心臓に悪かったので、アイスの棒をゴミ箱に投げ捨てると同時に、早々と彼との会話を切り上げた。

 

(...まぁ、大丈夫か。)

 白木が待つ居室の前につき、一応やばそうな情欲は筋肉で解消できた筈だと自分でも妙に納得してからドアを開けた。

「・・あ、おかえり!海道くん!」

 ドアを開けると、先まで本を読んでいたようだった白木が、立ち上がってテクテクとこちらに駆け寄りながらそう言った。

「...あぁ。ただいま」

 あまりの天使度数に思わず目元を抑え、何とか腹に落とし込めた彼は、白木の華奢な肩に手を置き何とかソレだけで情動がおさまった。

「っ..ぁ...ん?」

 白木は彼に触れられ、一瞬ビクンっと肩を震わせていが、どうしたの?と言った様子で可愛らしいお顔をこてんと傾げていた。

「...ほい、アイス買ってきた。」

 解消したはずの情欲はむしろ、せきとめる間もなく溢れ続けていた中、何とかアイスで気を逸らした。

「うわ!これ、京都限定のアイスだ!ありがと、海道くんっ」

「...あぁ、喜んでくれて良かった。」

 白木を制するには、白木の笑顔が最も効果的だったようで、自然と先までの劣情が白木との心地の良い空間に澄み渡っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...