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修学旅行1日目〜一服〜
しおりを挟む近くのゴールディングジムで体を漫然に動かし、ある程度別のベクトルで色々と解消できた彼は、白木が待つ居室へと向かっていた。
「・・あ、なんかアイスでも買ってくか...」
すると、丁度、旅館の一階受付近くにアイスの自販機があったため、幾つか見繕う事にした。
「....。」
千円札を入れ、しばらく何を買おうかと、白木はどんなのが好きなのだろうかと考えていると、後ろから手が伸び適当なボタンが押された。
ガタンっ!
無情にも商品は決済されてしまい、バニラアイスバーが落ちてきた。
「...篠蔵、一つ貸しだな。」
彼は振り返らずとも何となく気配から、その手の正体を察していた。
「げっ、悪い悪い代金は返すって...お前に借り作っちまったら、あとが怖えよ」
彼が冗談半分で言った落とし前は、篠蔵にはかなり効果的なようだった。
「...いや、もう出ちまったもんだ。取っとけ」
物事は不可逆で、起こってしまった事へは取り返しがつかないため、彼はそう言ってバニラアイスバーを篠蔵に渡した。
「...ぐっ、味わって食わねぇと..」
軽い悪戯のつもりが、アイス一個の割には高くついていた。
ピッ
ガタンっ!
存外にも篠蔵が食べているバニラアイスバーが美味しそうだったので、彼も同じの食うことにした。
「..そういえば、お前らは4人部屋だよな?」
アイスを食べながら、そういえばと少し気になっていたことを聞いた。
「ん?あぁ、うぅ..歯覚過敏がっ...っか..そうだぜ。」
歯覚過敏に当たりながらも、彼は何とか答えていた。
(...うーむ、学年の生徒数が半端なせいか...)
彼は既に食べ終え、木の棒だけになったアイスバーをくわえながら、他に考えられる事を頭に浮かべていた。
「....。」
ぼんやりとそう考えていると、篠蔵が神妙な面持ちでこちらを見てきていた。
「..なんだ?」
男から見つめられても何も嬉しくないので、少し鬱陶しそうにそう言った。
まぁ、白木は白木だから比べるまでもないが...って、何言ってんだ俺....
「...いや、海道。お前、ほんと変わったよな。」
「..なんだ、そんな事か」
珍しく真剣そうな顔でこちらを見ていたので、何かと思えば今更の事であった。
「そんなことかって...側から見れば一大事だろ..」
確かに、わかりやすく目に見えるようなステータスや、見た目は変わったのは事実であった。
しかし、根っこの面倒な偏見に満ちた思想や、考え方、独自の価値観は何ら変わっていなかった。
まぁ、変えるフリくらいならできるようになったが、やはり自分でも自分自身をかなり気に入っているため、わざわざ変えようとは思ってないので特に問題ないか。
世の中の人間は良い人でありたがるが、そんなものは俺に取ってはどうでも良いものだった。
結局、人が何を考えているとか、人からどう思われているとかはキリがないのである。
だから、そんな事よりも一人一人が出来る事へ先ずは専念して、自分の道を進み続ける。そうすれば、小手先の価値よりも、より真意に近づける。
「・・まぁ、何でも良いが..」
「お前、小学校の時からずっとそうだよな。」
「?」
そういえばと、夏明けの初日に、小学校から同じみたいな事を言っていたのがフラッシュバックした。
「なんか、達観してるっつーか、変に大人臭いけど、それでいて自分の時間を楽しんでるつぅーか...」
「....。」
彼の文言からは、どこか真実に達しそうな思考回路が垣間見えると、実際効果はない嫌な予感が的中した。
「ほんと、中身人生上がったおっさんみたいだよな!ははははっ!」
「っ!...ふぅ...やれやれ。」
時折、彼の野生?の嗅覚なのだろうか、兎に角それの切り味は鋭すぎて心臓に悪かったので、アイスの棒をゴミ箱に投げ捨てると同時に、早々と彼との会話を切り上げた。
(...まぁ、大丈夫か。)
白木が待つ居室の前につき、一応やばそうな情欲は筋肉で解消できた筈だと自分でも妙に納得してからドアを開けた。
「・・あ、おかえり!海道くん!」
ドアを開けると、先まで本を読んでいたようだった白木が、立ち上がってテクテクとこちらに駆け寄りながらそう言った。
「...あぁ。ただいま」
あまりの天使度数に思わず目元を抑え、何とか腹に落とし込めた彼は、白木の華奢な肩に手を置き何とかソレだけで情動がおさまった。
「っ..ぁ...ん?」
白木は彼に触れられ、一瞬ビクンっと肩を震わせていが、どうしたの?と言った様子で可愛らしいお顔をこてんと傾げていた。
「...ほい、アイス買ってきた。」
解消したはずの情欲はむしろ、せきとめる間もなく溢れ続けていた中、何とかアイスで気を逸らした。
「うわ!これ、京都限定のアイスだ!ありがと、海道くんっ」
「...あぁ、喜んでくれて良かった。」
白木を制するには、白木の笑顔が最も効果的だったようで、自然と先までの劣情が白木との心地の良い空間に澄み渡っていた。
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