許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。

wakaba1890

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若輩の心意気。

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「・・えぇーっ?!天堂さんって女の子だったんですか?!」

「まぁ...確かに言われてみれば....」

「全くわからないな」

 もう隠せるような状況でなくなったため、諸々の事情を察していた久留米に説明を委任すると、別クラスというのも合ってか久留米以外は彼女の正体を知らなかったようだった。

「てか、なんで付けてたんだよ。」

「それは....まぁ...」

「今朝の件があり、天堂から悪い遊びを教えられてないかと思ってな」

 ソフィアが言いづらそうにしている中、虎野と関わりの深い楢崎はあらぬ事を言っていた。

「ん、悪い遊び?」

「それはつまり、天堂くんと海道くんが女の子を侍らせてエッチな事してるって事ですね。」

 海道がその言葉の意味を追求すると、久留米が代わりに答えてくれた。

「なっ?!そこまで、噂が行ってたとは....うぅ」

「スゥ....お前らな...」

 確かに今朝天堂を庇った事で、そう言った推測が行き交うのは考えうるにして、そのゴシップはあまりにジャンク過ぎており、海道と天堂は頭を抱えていた。

「それはともかくとして、飛鳥ちゃん。女の子って事これからも隠し続けるの?」

 やはり久留米も俺と同じ考えのようで、いよいよ隠しきれないのを踏まえて、これからどうするかへ焦点がいった。

「えぇ...っと、それは....その....」

「口利きするか?」

 親と子の二人でその話をすると拗れそうだったため、今日のようなことがなくなるのであれば、彼が仲介するのもやぶさかであった。

「しかし、それだと僕がまた君の手を煩わせてしまう....」

「何でも自分でやる必要はないだろ、ここは実利を取れ」

「うぅ...でも....」

彼女の頭の中では『またもや、彼に借りを作るのか....』と父が失望した顔で呟いているのが、かなりのネックなようだった。

「うーん...天堂さんが海道くんと婚姻関係にならないと男装を辞められないんですよね?」

「まぁ...そうなるかな。」

 青鷺がそういうと彼女は先とは異なり若干申し訳なさそうにしていた。 

「スゥ....なら、俺どうこう以前に普通に辞めたらどうなるんだ?」

「あー....それは、まず僕は家に居られないかな...ははは」

「これ以上隠しきれないけど、海道くんと結婚するか、続けないとお父さんに認められないって感じだね。」

 彼よりも色々知ってそうな久留米の言う通り、おそらくしきたりどうこうよりも、ただ一つの縛りを守れない事こそが彼女の父に見限られる要件のようだった。

「時代錯誤だろうが、一度決めたら筋は通せ、か。」

「っ!...あぁ、そうなるね。」

 彼の重低な声から聞き覚えのある言葉を聞いた彼女は、体をビクッとさせて一瞬父の圧を感じていた。

「「「「うーーん」」」」

 八方塞がりな状況に皆頭を悩ませており、放課後、なぜか海道の家で久留米、海道、天堂の三人で話し合いをすることになった。

「...海道くん。やっぱり君凄い人なんだね。」

 天堂は海道邸の庭や広々としたバスケコート、ちらっと見たジムルーム、サウナ室と同じ同い年とは思えない程の成功ぶりに感嘆していた。

「天堂の所とは比べ物にならないがな」

「いや、それはどうかな。過度に豪華絢爛さはなくとも住むところとして最適化されているというか....」

「海道くん。このお家に一人って寂しくないんですか?」

 天堂は欧米的なただ広く空間を無駄遣いしているのとは異なるとフォローしようとしていると、ソファーに置いてあったポケットなモンスターの等身大ぬいぐるみを抱きながら、心配そうにそう呟いた。

「どうだろうな、実家の時も基本家で一人だったから、変わらず今も快適だな」

 父は頻繁に出張に行っており、芝春は放課後桜楼の家かデートしていて、霧雨ママは3階で仕事してるため、1階の自分の部屋でゲームアニメ趣味三昧だった彼は今も寂しさは感じる時はなかった。

「....無理してないですか?」

 彼が前世と今世で4人の両親とジィちゃんばあちゃんから絶え間ない愛を注がれた事を知らない彼女は、それでも心配そうに彼の肩に手を添えてきた。

「あ...まぁ、一人には広いから犬猫を迎えたい所ではある。」

 旅行する際、母にも預けれるため、念願でもあった犬か猫を飼うのは考え中だったことを想起した。

「え...そ、それは、ちょっとやめときません?」

「うんうんっ」
 
 環奈の意見に天堂も賛同しており、彼の独身貴族生活に王手がかかるのを阻止しようとしていた。
  
「なんでだよ」

 時間も金も自由に使える彼に憚れるものは何一つなく、思ってもない言われようだった。

「まぁ...それは、ね。飛鳥ちゃん!」

「ん?あぁ...っと、そうそう壁とか家具とか傷つくからね!」

「あー...それはそうか」

 今思いついたかのような事だったが、彼はそこそこ理解を示していた。

「別に家具は買い直せば良いだろ、それにこの家は俺しか住まないから特に気にならんしな」

 賃貸転用なども考えておらず、仮に売却する際でも土地価格で余裕でこれまでの費用をペイ出来、あってもセカンドハウスになるかな位の余地だった。

「ぐぅ...」

「じゃあ、ここで一人で骨を埋める気なんですか?」

「スゥ、お前なぁ....高校生にする質問じゃないな。それ」

「はっ!...そういえばそうでしたね。すみません」

 それはそれで構わないのは事実だが、環奈のそれは酷い言いようだった。

「てか、本題は天堂のことだろ」

「えぇ、そうでしたね。」

「スゥ、天堂。」

 それにそれていた話を天堂に戻すために、彼は彼女の方へ向いて彼女の名前を呼んだ。

「ヒャ、ヒャい!!」

 彼の重厚な声に気つかされた彼女は学校でのクールさを微塵も感じない変な声で反応した。

「ふふっ」

「あぁぅ...」

 久留米に頭を撫でられながら、彼女は耳を真っ赤にさせ手で顔を覆っていた。

「あー....とかく、お前は負けたままでいいのか?」

「っ....いやだ。・・ーーー」

 確かにここまで勝ってきた者の顔になった天堂のこれからの行動はただ一つであった。

「ーーー・・あー...いるだけで良いんだよな?」

「あぁ、僕が話す。」

 方策が決まったところで久留米とは別れ、彼は天堂パパがいる自宅のマンション前に連れられていた。

「「......」」

 そうして、ロビーにて使用人に出迎えられエレベーターで最上階のペントハウスへと向かっていると、なんとなく雰囲気が虎野家訪問の時に似通っており、嫌な沈黙が流れていた。

「....天堂。親父さんに武の心得は?」

変に色々想像してしまい、彼は思わず彼女に聞いた。

「ん?あーどうだろう、少なくとも護衛無しでも人質にされないくらい?」

 天堂グループは多角的な戦略を取っており海外でのプレゼンスも当然あったため、そう言った事態に陥ることは多々あったようだが、なんとも侮れない力を持っているのは確実であった。

「.....そうか」

 それを理解した彼は念の為入念に体を解しながら、静かに相槌した。

 だが、ペントハウスに到着し東京タワーが直ぐに目が入ると、ホテルのラウンジのような暖色に包まれたリビングのソファーで天堂パパが本を読みながらくつろいでいた。

「....む、おや。これは吉報かな」

 件の男である海道を引き連れて実家に赴いた状況から、東京を一望できるペントハウスのリビングに鎮座していた天堂パパはそれを期待した。

「いえ、違います。」

「では、何かな」

 オフモードだった天堂パパであったが、その一言を聞いてメガネを外すと、勝つために全てを賭けてきた者の眼光が鋭く光った。

「っ....僕は膂力でも知力でも才でも、彼より劣っています。」

(....ん?)

「.....」

 この場にいる誰もがっていうか海道と天堂パパは彼女のその言葉に面を食らっていた。

「これから、彼に勝てるかどうかも定かではないです。」

「.....」

 今現状の事実を述べる彼女の目は字面ほどの悲壮感はなく、天堂パパは黙ってその続きを待った。

「一度負けたからといって、負けを認めたからと言って安易に勝者に下らずして僕は彼に挑み続けます。その姿こそがユーザーを、従業員を事業を守ると僕は確信しています。」

「「......」」

 天堂の方は足が少し震えているものの、天堂家を日本有数のグループに押し上げた者と真っ向から相対している彼女の瞳にはその意志の沈まぬ熱が帯びていた。

 そして、そのしばらくの沈黙を解いたのは一切の感情の綻びを漏らさなかった天堂パパだった。

「.....ふっ、言うようになったな。」

「....っ!!」

 滅多に彼女を褒めなかった天堂パパからのそれは、彼女の全身の細胞を奮い立たせた。

「....しきたりの件は好きにして良い。これからも精進せよ。」

「....は、はいっ!!」

 あっさりと一件落着となった所で、インタホーンがなった。

ーーーーピーンポーンっ

「あっ...ごめん、海道。ちょっと待っててくれるか?」

「あ、あぁ.....」

 別にもう用ないだろ、てか俺いらんかったろと思いつつも彼女を待っているとニコニコした天堂パパがソファーに座ってとジェスチャーを送って来た。

「.....」

「昨日も今日もすまないね。」

 対面する形となりながら、気まずい彼は水槽を優雅に泳いでいる金箔の高級魚を眺めていると、天堂パパが話を振ってくれた。

「兎角、解決して良かった。」

 申し訳なさそうにされるのはこちらも困るため、良い面を呟いた。

「解決しなかったら、どうしたんだい?」

「.....知り合いの所で修行させ、天堂を経営モンスターにでもする。」

 一応の解決策を考えていたと見透かされた彼は知り合いもとい鮎川さんの会社で諸々鍛えさせて、せめて天堂パパと対等に渡り合えるようにさせるといった方策を話した。

「ははははっ、それは願ってもないね.....」

 娘だろうがなんだろうが、後継者候補である彼女が家を継ぐのであれば平気でそれを容認しそうな天堂パパは爽やかな笑顔で今からでも願い込んできそうだった。

「.....マックスウェイバーか」

 勝手に想定していた事であったため、本当にそうする流れになるのを避けるように天堂パパが持っていた本へ話を移した。

「おぉ、最近は高校生でも読むのかい?」

「まぁ齧った程度だが....」 

「海道くんは私のグループをどう見る?」

「官僚主義的な体制を基盤にしつつ、新規事業や基礎研究への投資を惜しまない。組織体系的には常に最前線で戦い生き残ってきた企業に近い。グループ全体の舵取りの意思決定過程に9人いるから、頭がなくなっても回るだろう」

「.....うんうん、その辺りはまだわからないけどね。」

 ソファーの背もたれにもたれ、目を閉じてメガネを拭きながら彼の評価を聞いた天堂パパはそれに安心するのではなく、後継者に必要性を滲ませていた。

「意思決定過程にカリスマは必要なくとも、グループの顔が世襲ならまとまりが生まれるか」
 
「そうだね、内紛が一番無意味だからね。カリスマに見せかけた官僚主義ってところかな」

「どの道、カリスマの立ち位置にいる奴に求められる能力は多いか」

 9人の意思決定の席への監査役として、やはりカリスマの役割は重要であり一つにならないといけない時に、カリスマもしくは同等の共通認識や理念は必要不可欠であり、それが本当に介在しているのかを見極める能力も、またカリスマには必須であった。

「うんうん....やっぱ、海道くん。婿に来てくれない?」

「スゥ....まぁ、プロジェクトリーダーを9人にれるとかで、現場の声を上に汲み取る仕組みが確立されれば少なくとも本事業の大半を担う従業員は逃げないだろうし、なんとかなるだろ」

 今の所、天堂グループの後継者に最も相応しいのは海道くんであったが、彼はとあるぶっ壊れゲーム会社の方策を盾にそれとなく断った。

「ふむふむ、現場で支持されているリーダーを役員にか民主的だね....参考にしよう。....ふぅ、しても、今回は大きな貸しを作ったね」

 今回はそれで見逃してくれた天堂パパであったが、まだ話は終わってないようだった。

「ん?俺はただ些細なきっかけ...てか、あんま俺が介入しない方が...」
 
 武士の家系と聞いた時から、最低限武士が何であるかを知っている天堂パパなら、とそういった時代遅れなしきたりや自分で決めた事へのケリをどうつけるかを試したかったと言うのは想像に難くなかった。
 そこで本来なら彼女自身で自力でそれに近づくのが理想だったのだが、勝つ事に盲信していた彼女に触れるあまり、助言をしてしまったのが少し負い目だった。

「はははっ、一人では気付けんよ。人と人との間に人間が介在するのだから」

「まぁ、時には答案を見た方がいい時もあるか....」

 どうしても計算が合わない時は自分からの死角に修正点があるなっている事なんてザラであるため、外からの視点も必要っていうのはあるかと取り敢えずはと今回のお節介を勝手に免罪した。

「ははははっ、海道くんには答案が見えているのかね?」

 まぁまぁ一緒にいる久留米でも触れられなかった彼の破格の力の源泉を見据えた天堂パパの眼力は鋭く洗練されていた。

「....まさか、ラプラスの悪魔じゃあるまい。ただジィさんの血を色濃く受け継いだだけだ。」

 そして、海道はどちらとも取れない静寂の間の中でゆっくりと立ち上がり東京の夜景を眺めながら確率を支配した悪魔を引き合い出して、現実的に考えうる真実を話した。

「ははははっ、そういう事にしておこう。」

(...いや、本当にそれだけなんだけど)

 大概答えなんて言うのは既に自分が知って持っているものなのだが、それを納得させるのはこれから時間がかかりそうで、東京の夜景は変わらず光り輝いていた。



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