変異した世界で俺だけズルいスキルで無双タイム？

64. 帰還

「ふぅ～、やっと帰ってこれた！」

彼の意識下では2日、実際には1週間ぶりの外だ。
そこには、多くのテントが建てられ、今にも突撃しそうな程ハンター達が集まっていた。
その為、彼はすぐさま孫悟空と名乗っていた時の狐の仮面と、和装を着て、政府の者が居る場所へと向かった。

「終わったぞ」

「？…っ！？よ、良かった…！無事でしたか！」

「？何を言うかと思えば…あの程度で苦戦する程、我は弱くない。
それよりも、我の存在は秘匿すると言っていたが…これでは意味がないだろうて」

少し焦りつつも、前回同様の演技を続けると、孫悟空は物凄く笑っていた。

〚なにやら着替えてはすぐに移動したと思えば…姿を隠す為に我の名前を使っているとはな〛

面白い、とでも言うかの様に満面の笑みで笑いながら、孫悟空は彼にそう告げる。
彼は、不貞腐れながらも、「悪かったか？」とだけ捨て台詞のように吐き捨て、政府の者に帰宅すること、報酬を後日用意しておくことを話し、直ぐに家に向かった。

「それにしても、1週間空いたのか…こりゃあ芽衣に怒られるかもなぁ」

〚小僧の妹か？〛

「ああ。前に話した、お前のスキルを共有した相手だ」

〚なるほど〛

そう淡々と雑談していると、唐突に孫悟空は考え事を始めたかのように黙った。
しかし、そんなことを考えられぬ程、唐突に背中に激痛が走る。
敵意の全くない、強い力で…

「いてて…め、芽衣。ただいま」

「…おかえり、お兄ちゃん。心配したんだよ？
また、ダンジョン内で珍しいものでも見つけて帰還が遅れてるっていうのは分かってたけどさ…
神社の神様達も、自分たちのせいで死なせてしまったって凄い落ち込んでるし…
未央ちゃんも悲しんでた」

そう、背中に顔を埋めながら彼女は告げる。そこには、じわじわと服が濡れるように、彼女の涙があった。

「…なら、挨拶に向かわないとな。ダンジョンで珍しいものを集められたって自慢話も一緒に」

「…うん」

〚家族というのは、それほどまでに良いものなのか？
仲間とはちがうのだろうか〛

孫悟空は、家族という存在が分からないのか、そう呟いていた。

「お前が最も信頼していて、最後まで自分の命を掛けてでも守り通したいと思った相手は居るか？」

〚うぅむ…封じられる前の猿たちくらいか〛

「なら、そいつらはきっと、お前を兄か父と思ってたんじゃないのか？
大切な者が死ねば、当然悲しくなるものだ。
お前が、幽冥界で暴れた後、仲間の名を消したのもそれが原因だろ？」

彼は、孫悟空にそう告げつつも、芽衣の頭をずっと撫でていた。
孫悟空は、昔を思い出しているかのように、淡々と思考を巡らせては、笑みを浮かべたり、眼を閏わせたりと、まるで百面相の様にしていた。
どうやら、孫悟空にも家族と呼べるものが居たようだ。

「芽衣、帰ろう」

「うん…お兄ちゃん、手…つなご？」

「おう、久しぶりだな」