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84. 救出を急げ!

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「ふぅぅ…やっと…ついた!」

芽衣は、ダンジョンの中から外まで、彼をずっと運んでいた。

「すみません、兄の治癒おねがいします」

「は、はぁ…」

「なっ…ど、どうしてこんなことに!?彼は…」

そう言って慌てて駆け寄ってきたのは、剣聖の強化を行った時に居た政府の者だった。

「はぁ、スキルの反動だよ。
スキルが安全と決めている可動範囲、あれを無理矢理突破した代償じゃないかな?
さっき、私が皆に送った生存者の場所、あれはお兄ちゃんがスキルで発見したのを私が送ったの」

そう説明すると、彼はブツブツと何かを呟いていたが、それは聞こえなかった。

「それじゃ、私も救助活動を手伝おうかなぁ」

「すみません、よろしくお願い致します」

…とはいっても、明らかにこの違和感のあるダンジョンは、全員分かっているはず。

私はそう思うと、より一層警戒を強めた。
いわゆる、本気モードと言うやつだ。
部活とかでも、本気で集中する時はこうなる…
殺気立って、周りからは鬼とか言われた。

「ふぅぅ…それじゃ、行こう」

雷纏発動…彼女がそう呟くと、周囲に黒い雲が集まり、彼女に雷が落ちた。

「なっ…だ、大丈…!?」

すると、彼女の肉体が雷と同化していた。
その姿は、淡い光を放ち、常に雷を纏ってバチバチと感電している様だった。

「シュッ…まずは、1箇所目」

彼女は、纏った雷の速度と同様に高速で動き、救助ポイントに移動した。

「離れていて、危ないから」

そう言うと、周囲を侵食していた木々が急に切断された。

「収納…ダンジョンの出口はあっちだから、早く行った方が良いよ」

そう言うと彼女はまた、別の救助ポイントに行き、同じ要領で次々に助けていった。
しかも、彼女はダンジョンのフィールド全域に雷を巡らし、誰も行っていない場所を優先して助けていた。

「 …これで、粗方助け終わったね」

彼女がそう呟いた瞬間だった。
突然、ダンジョンのフィールドが拡大して、救助者の居る場所もダンジョン内へと変化し、出口が消えた。

『条件を達成した為、
Bランクダンジョン:荒れた森
が、
Sランクダンジョン:失われた迷宮都市へと変貌しました。
このダンジョンは、死亡すると現実でも死亡判定となり、全員が死亡するか、誰かがダンジョンを攻略するまで出口が出現しません。
それでは、ご健闘を祈ります』

そう、ダンジョン内で"プレイヤー"となった全員にアナウンスが流れると、一気に混乱が広がり、辺りは地獄絵図となった。

「…ボスの、討伐」

彼女は、雷によってボスの居場所が判明していたが、それはものすごく巨大な植物の敵で、太刀打ちすら出来ないような、恐怖を感じていた。
しかし、兄が居ない今、私がやらなければ…
そう思った彼女は前に進もうとするが、突然、後ろに投げ出された。

「…え?」
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