87 / 105
85. 凶暴化
しおりを挟む
「おにい、ちゃん?」
そう、芽衣を投げ飛ばしたのは紛れもなく、兄の彼だった。
しかし、その後ろ姿にはいつもの優しい雰囲気は一切なく、獣のように野蛮で凶悪的な雰囲気が溢れ出ていた。
「邪魔だ、下がっていろ」
「う、うん…」
彼女は、ぎこちなく返事をすると直ぐに後ろへと下がっていった。
「来い、筋斗雲」
彼がそう言うと、空から黄金の雲が集まり、彼の周りに飛んできた。
そして、彼はそれに乗ると、ダンジョンの中央へ向かった。
「伸びろ、如意棒」
‹グギャァァァァ!›
「喚くな、雑草」
彼は、超高速で伸びた如意棒をボスに当てると、冷徹な瞳でボスを見つめた。
「主に代わり、此度は我が相手をしよう。
案ずるな、直ぐに楽にしてやる」
そう、彼は今気を失っており、孫悟空が前の仙人戦の時のように体を操っていた。
「去ね、ここは既に我が領域に達した」
孫悟空は、赤く、燃え盛るような瞳をそのボスに向けると、直ぐに如意棒を巨大化させ、かつ高速で空から落とした。
「ドゴォンッ!…この程度か」
その瞬間、ボスの居た場所には巨大なクレーターができダンジョンクリアのアナウンスが鳴り響いた。
「スタッ…小娘よ、今回は我が主の危機だからこそ、たまたま助けてやったが…次はない」
そう言うと、孫悟空は肉体の主導権を戻し眠りに着いた。
「やった…生き残った!俺達の勝ちだぁぁぁぁぁ!」
そうして、1人、また1人と歓声をあげると、生存者は全員、喜びを噛み締めた。
「お兄ちゃん…ありがとうね」
私は、兄にだけ聞こえるような小さな声でお礼を伝えると、救護班の者に託した。
「絶対に、助けます。
何度も国を救った英雄なのです。
最善以上を必ず」
そして、ダンジョンの生存者を含め、全員が運ばれた後、その静かになった場所に2人だけ、女性が残っていた。
「…帰らないのですか?」
「…家には私一人だしね。
そっちの方こそ、ギルドマスターなんだし帰った方がいいんじゃない?」
「…今は、この光景を目に焼き付けたくてな」
そこにずっと居たのは、芽衣と夜鈴荘のギルドマスターだった。
「改めて自己紹介をしよう。
夜鈴荘のギルドマスターを務めている炎宗寺 明日香だ」
「私は名乗るつもりはないよ」
「ああ、無理に名乗らなくとも良い。
…此度の、もう1人の英雄に感謝を申し上げる。
本当に、ありがとうございました」
彼女は、私にそう告げると、直ぐに頭を下げた。
「…良いよ、別に。お兄ちゃんに比べたら、私なんて全然何もしてな…いや、何も…出来なかったしね」
「だが、それでも私達にとっては英雄の1人だ。
礼だけは、せめて受け取って欲しい」
「…ん」
「それにしても、あれは神の類の様だったな…」
彼女が頭に思い浮かべた先程の圧倒的な戦闘…それは、ハンターが想像している神そのものの光景だった。
「…あの時、お兄ちゃんの体ではあるけど、中身はお兄ちゃんじゃなかったの。
多分…孫悟空、彼がお兄ちゃんの代わりに倒してくれたんだと思う」
私は、彼女に淡々とそう告げた。
「孫悟空…確か、西遊記に登場する主人公で、斉天大聖と呼ばれた…」
「うん…
あーあ、結局…また、お兄ちゃんに無茶させちゃった。
…無茶はしないでって言っても、私たちのせいで無茶させちゃう。
…私、決めた。
今よりも、もっと強くなってお兄ちゃんの隣になって、負担を減らせるように頑張る!」
芽衣はそう決意すると、荒れ果てた都市に向かい、大声で宣言した。
「いつか、私が本当の意味でハンターになれた時、その時はお兄ちゃんの隣で最高で最強の相棒としてお兄ちゃんを支えてあげる。
だから…私は、これからは覚悟を以てこの能力を使いこなしてみせる!」
そう、芽衣を投げ飛ばしたのは紛れもなく、兄の彼だった。
しかし、その後ろ姿にはいつもの優しい雰囲気は一切なく、獣のように野蛮で凶悪的な雰囲気が溢れ出ていた。
「邪魔だ、下がっていろ」
「う、うん…」
彼女は、ぎこちなく返事をすると直ぐに後ろへと下がっていった。
「来い、筋斗雲」
彼がそう言うと、空から黄金の雲が集まり、彼の周りに飛んできた。
そして、彼はそれに乗ると、ダンジョンの中央へ向かった。
「伸びろ、如意棒」
‹グギャァァァァ!›
「喚くな、雑草」
彼は、超高速で伸びた如意棒をボスに当てると、冷徹な瞳でボスを見つめた。
「主に代わり、此度は我が相手をしよう。
案ずるな、直ぐに楽にしてやる」
そう、彼は今気を失っており、孫悟空が前の仙人戦の時のように体を操っていた。
「去ね、ここは既に我が領域に達した」
孫悟空は、赤く、燃え盛るような瞳をそのボスに向けると、直ぐに如意棒を巨大化させ、かつ高速で空から落とした。
「ドゴォンッ!…この程度か」
その瞬間、ボスの居た場所には巨大なクレーターができダンジョンクリアのアナウンスが鳴り響いた。
「スタッ…小娘よ、今回は我が主の危機だからこそ、たまたま助けてやったが…次はない」
そう言うと、孫悟空は肉体の主導権を戻し眠りに着いた。
「やった…生き残った!俺達の勝ちだぁぁぁぁぁ!」
そうして、1人、また1人と歓声をあげると、生存者は全員、喜びを噛み締めた。
「お兄ちゃん…ありがとうね」
私は、兄にだけ聞こえるような小さな声でお礼を伝えると、救護班の者に託した。
「絶対に、助けます。
何度も国を救った英雄なのです。
最善以上を必ず」
そして、ダンジョンの生存者を含め、全員が運ばれた後、その静かになった場所に2人だけ、女性が残っていた。
「…帰らないのですか?」
「…家には私一人だしね。
そっちの方こそ、ギルドマスターなんだし帰った方がいいんじゃない?」
「…今は、この光景を目に焼き付けたくてな」
そこにずっと居たのは、芽衣と夜鈴荘のギルドマスターだった。
「改めて自己紹介をしよう。
夜鈴荘のギルドマスターを務めている炎宗寺 明日香だ」
「私は名乗るつもりはないよ」
「ああ、無理に名乗らなくとも良い。
…此度の、もう1人の英雄に感謝を申し上げる。
本当に、ありがとうございました」
彼女は、私にそう告げると、直ぐに頭を下げた。
「…良いよ、別に。お兄ちゃんに比べたら、私なんて全然何もしてな…いや、何も…出来なかったしね」
「だが、それでも私達にとっては英雄の1人だ。
礼だけは、せめて受け取って欲しい」
「…ん」
「それにしても、あれは神の類の様だったな…」
彼女が頭に思い浮かべた先程の圧倒的な戦闘…それは、ハンターが想像している神そのものの光景だった。
「…あの時、お兄ちゃんの体ではあるけど、中身はお兄ちゃんじゃなかったの。
多分…孫悟空、彼がお兄ちゃんの代わりに倒してくれたんだと思う」
私は、彼女に淡々とそう告げた。
「孫悟空…確か、西遊記に登場する主人公で、斉天大聖と呼ばれた…」
「うん…
あーあ、結局…また、お兄ちゃんに無茶させちゃった。
…無茶はしないでって言っても、私たちのせいで無茶させちゃう。
…私、決めた。
今よりも、もっと強くなってお兄ちゃんの隣になって、負担を減らせるように頑張る!」
芽衣はそう決意すると、荒れ果てた都市に向かい、大声で宣言した。
「いつか、私が本当の意味でハンターになれた時、その時はお兄ちゃんの隣で最高で最強の相棒としてお兄ちゃんを支えてあげる。
だから…私は、これからは覚悟を以てこの能力を使いこなしてみせる!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,010
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる