尽くされ男と尽姉妹

霞ヶ丘霞

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   第四話 入学式前日 2

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「晴くん?」
 そう呼ばれ振り向くと、そこには幼馴染である橘小菜たちばなさなが立っていた。
「小菜、よく分かったな」
「だって、幼馴染なんだから、後ろ姿でわかるわよ、それに相変わらず視線を集めるわねー小春ちゃんは」
 そう言われ小春は周りをキョロキョロした後、晴にくっついた。
「こ、小春?どうした?」
 すると小春は、不機嫌そうにうぅと唸りだした。 
「私は別に視線を集めたくて集めてるわけじゃないのに、あんまり見られるのも困るっ!」
 まぁそうだよなと思いながら、晴は周りを見渡す。いくら視線慣れしている小春といえど、やっぱり知らない人から色々な視線を向けられるのは嫌なはずだ。
「私は、もっとお兄ちゃんを見て欲しいと思ってるのに…」
「は!?」
「だって、こんなにかっこいいお兄ちゃんいる?」
 そんなふうに言われても、俺と小春は髪色も違うし、そんなに顔が整ってる方でもない。だから、小春の隣にいると別の視線が集まる。するとそんな二人を見ていた小菜が、ちょっと呆れ気味に苦笑していた。
「ほんと、二人とも仲がいいわよねぇ」
「あのな、だいたい視線を集めてるのは小春だけじゃないんだよ…」
 晴はそう言って、周りを指差す。
「ん?」
「小菜自身に向けられている視線もあるだろ…」
 そう、小菜にもかなりの視線が集まっていた。小菜は中学校でもかなりの人気があった、ライトブルーの瞳に、地毛の白髪、整った目鼻立ち、スタイルもよく、男子の憧れの存在だった。恐らく告白を受けた数では小春よりも多いだろう。
「ほんと、なんでこんな美人と幼馴染になれたのかね…」
 晴のそんなつぶやきが耳に入ったのか、小菜の顔が真っ赤になる。
「は、晴くんは小春ちゃんと買い物…?」
(今、美人って言った!?晴くん、今美人って言った、聞き間違いじゃないよね…?ううん、絶対言ったもん、っ~~~…晴くんに美人って言われちゃった、へへっ)
 小菜は、必死に照れを誤魔化しながら、話題を変える。
「あ、ああ、ちょっとね」
「へ、へぇ、春物を買いに来たの?」
「小菜、ちょっといいか…」
「ん?な、何?」
 そして、言うか言うまいか迷ったが、結局言うことにする。
「誤魔化せてないぞ?」
「ぇ……ぅ…、へ…?」
 小菜は、まさに意表を突かれた様な表情をしていた。そして照れを隠せなくなった小菜は、
「だ、だって、晴くんがあんなこと言うからじゃんっ!」
 そう言って、顔を真っ赤にしながら二の腕をぽこぽこ叩いてきた。小菜のそんな微笑ましい姿を見てえみが溢れる。
 それから、小菜を宥めるのに結構時間がかかった。その間、小春が小菜を羨ましそうに見ていたが、小春にはこのあと名一杯付き合うつもりでいたので問題はないだろうと思う。
「こほん、じゃ、じゃあ、ほんと残念だけど…私はちょっとがあるから帰るね、またね晴くん小春ちゃん」
 小菜はそう言って去っていった。ちょっと用事が、のところが妙に嬉しそうだったのは気のせいだと思う。
「小春、どの店が良いとかあるのか?」
「うん、お気に入りのお店があるの」
 小春はそう言って、いくつかあった服飾系の店の一つに入っていく。
「お兄ちゃん、どうせならお兄ちゃんに感想聞きたいから、いくつか持っていって実際に着てみようかな」
「わかった、いいよ」
 そう言うと、小春は試着室に入っていった。
 
 ということで、小春のファッションショーが始まった。
「じゃーん」
 着替え終わった小春が、カーテンを開け着た服を披露する。
 最初の服装は、フリルが多めの白いワンピースだった。夏にぴったりで、麦わら帽子がすごく合いそうだった。
「うん、小春の見た目にすごく合ってて、なんか、こう、すごく可愛い」
「へへっ、お兄ちゃん褒めすぎだよぉ」
 晴は、自分で感想を言っていて恥ずかしくなってくる。
(やばい…誰かを真正面から褒めるって、こんなに恥ずかしいのか…)
 そして、再びカーテンが閉まる。
(ふふっ、可愛いだって、お兄ちゃんに可愛いって言われた!次はどんな服を着ようかなぁ)
 また着替え終わった小春が、試着室のカーテンを開ける。
 次は、上は黒色のTシャツ、下にはジーンズというボーイッシュな服装だった。
「はぁ、ほんと、小春って何着ても似合うな…」
 まさに、馬子にも衣装という言葉がぴったりな似合いっぷりで、晴は心の底から感嘆の声を漏らした。
 
 それから十数分、小春のファッションショーは続き、結局その中から、最初に着た二着を購入した後、店を出た。
「さて、もうそろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね」
 そう言って、二人は帰路についた。

 家に着くと、ただいまーと言って玄関へ上がる。
「おかえりー」
 すると、返ってくるはずのない返事の声が返ってきた。
「この声…陽姉はるねえか」
 その聞き慣れた声に、すぐに推測がつく。陽菜はソファに座って、咲希と凪沙とテレビを見ていた。
「咲希と凪沙も一緒か…」
「うん、咲希がどうしても晴に会いたいっていうから、そしたら凪沙も行くってことになってね」
 陽菜は、来るに至った経緯を苦笑混じりに説明した。家では結構苦労しているらしい。
「多分、週に一回はこうやって連れてくると思う」
「まぁ、週に一回くらいなら全然問題ないよ」
 すると陽菜は少し安心したような顔をした。それに対し、姉妹達の世話や家事などで無理をしていないかと心配の目を向ける。
「ありがとう、晴、でも大丈夫だよ?春花や光も家事を手伝ってくれてるからそっちは問題ないんだけど、やっぱり、晴がいなくなったから、咲希と凪沙が寂しがってて…」
 それを聞いて、晴はどうしたものかと頭を悩ませる。
「そういえば、その春花と光は?」
 すると、陽菜がうっと唸って体を揺らした。
「そ、それは……」
 すると寝室の方から、ガタンッという何かが落ちる音が聞こえた。それを聞き逃さなかった晴は、玄関の方を見る。よく見ると、靴が陽菜達三人のものと、他に二足あった。
「はぁ…まぁ陽姉はるねえが微妙な反応をしてたから薄々勘付いてはいたけど…」
 そう言って、寝室を開けるとベッドの布団がやけに膨らんでいてもぞもぞ動いていた。
「はぁ、やっぱり…ほら、春花、光、出てこい」
 そう言って、呆れ気味に布団をめくる。すると中から二人が出てきた。怒られると思っていたのか、縮こまっている。
「妹に怒れるかよ…」
 晴のその言葉を聞いて安心したのか、ベッドから降りて、そのまま晴の前まで来ると、二人とも抱きついてきた。
「やっぱ晴兄はるにい大好きっ!」
「わ、私もっ、晴お兄ちゃんは優しくて好き…!」
 そんな二人に何故来たのか問い詰められる訳もなく、晴は苦笑し、二人の頭を撫でる。
「今日はみんな、泊まってもいいよ、ただし、お兄ちゃんも小春も明日が入学式だから今日は早く寝ること、分かったな?」
 そう言うと、妹達四人は「「「「はーい」」」」と答えた。
「私も、いいの?」
 陽菜は、夕ご飯の支度中にそう言って確認を取ってきた。
「いいに決まってるだろ?陽姉はるねえは俺たちのお姉ちゃんなんだから、もっと強引なくらいでいいだよ」
「そうね、私はお姉ちゃんなんだからね」
 そう言って、陽菜は優しく微笑んだ。
「そうだよ、陽姉はるねえは優しすぎるからね」
 陽菜は優しすぎる、晴はそう思っていた。だが、だからこそ、陽菜の周りには優しい友人が多いのだろう。すると、陽菜は眉間にしわを寄せた。
「晴こそ優しすぎるよ?もうちょっとお姉ちゃんに甘えてくれてもいいのに」
 そう言って、姉離れが始まっている晴に残念そうな顔をしている。
「甘えるときは甘えさせてもらうよ、相談とかね、でも今は何もないから大丈夫だよ」
「そっか、でも頼りたいときはどんどんたよってね」
「わかった、ありがとう陽姉はるねえ
 そう言うと、陽菜は晴に優しく微笑み、手伝うよと言って、夕ご飯の準備に取り掛かった。

 夕食を終えた後、風呂を沸かし、どうしても一緒に入ると言って聞かない咲希と凪沙を、しょうがなく連れて入る。この部屋の風呂は実家ほどではないがそれなりに広い。なので、三人で入っても余裕だったその後、どうやら、小春と春花と光の三人で風呂に入ったらしい姉妹が、バスタオルを巻いたまま上がってきた。
「三人とも、早く着替えないと風邪引くぞ?」
 そう言って、晴はドライヤーで凪沙と咲希の頭を乾かす。二人は、うーと言って気持ち良さそうにしていた。
 寝間着に着替えた小春が、晴の近くに来て、肩をぽんぽんと叩く。
「お兄ちゃん、明日の準備は完璧?」
 すると、風呂から上がったらしい陽菜が小春の隣でうんうんとうなずきながら確認を促す。
「晴、ちょっと抜けてるところあるから」
 それを言われると耳が痛い。晴は時々、忘れ物をすることがあり、いつも前日に確認して翌日を迎えるようにしている。だが、それも妹達の世話に追われて、忘れたと言えば、言い訳が通る。さすがに、入学初日に忘れ物をしたくないため、再確認することにした。
「晴も小春も、明日から花の高校生活かぁ」
「なんか、楽しみだなぁ、ね、お兄ちゃん!」
 そう言って、陽菜と小春が明日から始まる高校生活に実感を沸かせる。
「そうだな、まぁ、色々と不安もあるけどね…」
 そう言って晴は、これから起こるであろう波乱の高校生活を想像するのであった。


 晴と小春の高校入学まで、あと0日!
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