尽くされ男と尽姉妹

霞ヶ丘霞

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   第五話 入学式

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「お兄ちゃーん、起きてー、早く起きないと入学式に遅れちゃうよー」
「っ……!?」
 小春からそう言われて飛び起き、時計を確認する。
 午前7時、朝起きるのが苦手な晴は、小春がいてくれたことに感謝が溢れてきた。
「ふぁ~あ、ありがとう小春」
 前日に用意は済ませているとはいえ、入学式に遅れる訳にはいかないので、早めに行った方がいい。初日から、遅刻魔などというレッテルを貼られたらたまったものじゃない。
 ベッドから起き上がろうとすると、横に咲希と凪沙が寝ていた。
「今日は早めに起こすか」
 咲希と凪沙はいつもは7時半くらいに起きている。まだ30分程早いが、なにせここは実家ではないので、早めに起こすことにする。
「咲希、凪沙朝だぞー」
 そう言って、優しく体を揺らし、ニ人を眠気から覚醒させる。
「んん…にぃに…?」
「うん、にぃにだ。さ、起きて」
 晴はそう言ってベッドから降り、リビングに行こうと一歩踏み出し、止まった。真下に光と春花がいたのだ。
(もう少しで踏むところだった…)
「ほら、2人共、ここにいたら危ないから」
 すると2人はううぅと唸りなが目を開いた。そして、2人の合間を跨いでリビングに出た。晴は、先に洗面を済ませてから台所に向かった。あとから来た姉妹たちを見て、先に洗面を済ませて良かったと思う。
「あ、お兄ちゃん、もう朝ごはんできてるよー」
 台所にはすでに先客が二人いた。
「だから晴はテーブルに座って待ってて、すぐにご飯持っていくから」
「はぁ、陽姉はるねえは来客なんだからゆっくりしとけばいいのに…」
 結局、姉妹がいると晴は何もやらなくて良くなる。
(ほんと、皆世話好きだよな…)
そんなことを考えながらテーブルに座ると、朝食が運ばれてくる。ちょうど洗面や着替えを終えた姉妹たちがそれぞれテーブルに座る。こういうときの為に親が人数分椅子を買っていたため、みんな揃って朝食を食べることができる。晴は小声でいただきますと言って、朝食の卵焼きに箸を伸ばし、口に運んだ。その後味噌汁に口をつける。
「ふぅ、相変わらず陽姉はるねえは俺の好みの味を把握してるね」
 すると陽菜は、ふんっと鼻を鳴らした後、優しく微笑んだ。
「そりゃあ、昔からみんなのご飯作ってるしね。」
「まぁ、そうだけど」
「晴は昔っから、味の好みが変わらないから助かるの、いっつも美味しいって眩しい笑顔で食べてる晴を見るの好きだったから」
 すると、横から小春が割って入ってくる。
「私も、昔っから変わらないんだよね、味の好み。ずっとお兄ちゃんと一緒だったからね」
「昔はいっつも一緒だったもんね、二人共。そっか、もう高校生かぁ」
「まぁ、これからも陽姉はるねえには世話になると思う」
「うん、私もいっぱいお世話になると思う、だからこれからもよろしくね、お姉ちゃん!」
 そう言って、二人で今までの感謝を伝えた。
「うん!こんなお姉ちゃんで良ければ、二人のお世話をこれからもさせてね!」
 晴は心の中で、どこまで謙虚で良い姉なんだと、そう思った。
「そういえば、今日もお母さんとお父さん忙しいみたいだから、私が入学式に行くね」
「うん、ありがとう陽姉はるねえ
「さ、そうと決まれば行く準備をしよ!」
 陽菜がそう言うと、光と春花が立って食器を片付け始めた。
「私達が洗い物とかはやっとくから、お姉ちゃんたちは用意をしてていいよ~」
「うん、ありがと光、春花」
 その言葉に甘えて、晴たちは用意を始めた。


 用意を済ませた晴たちは、玄関を出て、兄妹揃って学校へ向かっていた。七人兄妹で歩いていると、もちろん注目を集めていた。
(………………………………………………………)
 なんせ、この姉妹ときたら美人揃いなのだ(どっちかというと可愛さが大きい)。長女の陽菜はもちろん、六女の咲希までもが天使の様な可愛さを持っている。
 そんな注目を浴びながら、咲希と凪沙の小学校に着くと、校門前で、行ってらっしゃいと5人の兄妹に見送られ、昇降口へ走っていく。その間、小学生や先生からも視線を集める。それだけ、七人兄妹というのは、インパクトがあるのだ。
 そして、それから五分程歩くと、光と春花の通う中学校が見えてくる。
 もちろんそこでも、中学生や教師の視線を集めてしまう。二人も行ってきますと言い、元気にかけて行った。
「高校は、徒歩登校とはいえ、ちょっとかかるんだよな…」
「まぁ、中学校までが近かったからね、お姉ちゃんも最初は遠いって思いながら登校してたけど、段々慣れてくるものよ?」
「だといいけど…」
「もー、お兄ちゃんはだらしないなぁ、中学では陸上部エースだったでしょ?」
「まぁ、中三の最初でやめたけどね……」
 すると、小春が慌てて口を閉じ、申し訳なさそうに晴を見てきた。
「もう、大丈夫だよ、小春」
「ほ、ほんと?」
「うん、気にしてない、というよりか、その後の小春に感謝してる」
 その言葉を聞き、小春は安堵した顔をする。 
 そうこうしているうちに、晴たちが通う高校が見えてきた。
「ここが、今日から通う綾西りょうせい学園か」
「さ、行こっか」
「うん」
 そう言って、晴と小春、陽菜は、桜の舞い散る校内へと一歩足を踏み入れた。


「晴、小春、クラス割どうだった?」
 陽菜がそう聞くと、小春が嬉しそうにはにかんで、
「一緒だった!」
と言う。
「良かったね、小春」
「まぁ、小春がいてくれるのは心強いかな」
 すると、小春は鼻を鳴らし、胸を張って満面の笑みを浮かべた。
「任せといて!お兄ちゃんを一人にはしないからね!」
「ふふ、良かったね晴も」
 陽菜はそう言って、晴に微笑む。
「俺には友達ができない前提かよ…ていうか、小菜もいたぜ、同じクラスの中に」
「え………………」
 晴がそう言うと、急に小春が固まった。そして、しょぼんとした表情になり、俯いてふらふらと歩き出した。
「ど、どうしたんだよ、小春?」
 晴が、そう心配そうに顔を覗き込むと、小春はむくれ顔で、そっぽを向いた。
「だって、小菜ちゃんがいるなら私、いらないじゃん…」
「い、いや、小春は兄妹なんだから、小菜より俺のこと理解してくれてるだろ?だから、すごく頼りにしてる」
 小春はその言葉に安堵したのか、胸をなでおろし、嬉しそうに微笑んだ。
「それは聞きづてならないわね、は・る・くん」
 そう後ろから、聞き慣れた声が飛んできた。そして、後ろを振り向くと、仁王立ちした小菜が立っていた。銀色の髪が、日光で照らされ、きれいにキラキラ輝いていて、その青い瞳や綾西学園の制服は桜の舞い散るこの場所では、すごく様になっていた。
「小菜……」
「晴くん、何?私だって、小さい頃から晴くんと一緒だったんだから、はるくんのことはある程度知ってるわよ!」
「いや、そうじゃなくて…」
「何?じゃあ、はるくんはこれっぽっちも私に期待してないわけ!?」
 このままじゃ小菜は、話を聞いてくれなさそうだったので晴は、小菜に真剣な表情を向けた。
「聞いてくれ、小菜」
「な、何?」
 晴から何か言いたいことがあると察した小菜は、おとなしく晴の言うことを聞いた。
「ここであまり、大声を出さないでくれ…ただでさえ陽姉はるねえや小春もいて、小菜までいるんだ…さっきから視線が気になって仕方がない…」
 そう言って晴は、さっきから注目を浴びていることに涙目になりながら、小菜に訴えた。
「ご、ごめん」
「小菜ちゃん、晴は注目されるのがあまり得意じゃないから、あまり目立たないようにしてあげて、て言っても…小春と小菜ちゃんがいるなら、難しいかもね…」
陽姉はるねえ!?」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん!絶対、お兄ちゃんは私と、小菜ちゃんが守るから!」
 小春の、そんな根拠も無い自身に、晴は遠い目をしていた。
「何でそうなるんだ…」
「ふふっ、まぁいいじゃない、賑やかそうで」
 そう言って陽菜は、晴に優しく微笑んで、晴の側でにこにこしてる小春達を見た。
「ま、なるようになると思うけど」
 そう言って、ため息を吐きながら、晴も小春達を見る。
「もうそろそろ、行かないと遅れちゃうんじゃない?」
「やば!?あと七分だ…!?はるくん、小春ちゃん、早くしないと!」
 ふと、時計を見た小菜が、慌てて叫んだ。
「それじゃあ、また後でね、お姉ちゃん!」
「行ってくる!」
「うん、行ってらっしゃい、また後でね~」

 その後、陽菜は保護者として来たので、晴達を見送った後、体育館の方へ向かった。
 晴達は無事入学式を終え、陽菜と合流して、帰路についた。
 帰り道の間、担任教師のことや、各教科の先生のこと、学校に何があるのかなど、陽菜が知っていることを、晴達に説明していた。そのおかげか、帰り道がとても短く感じ、マンションの近くまで来ていた。
「そういえば、小菜はこっちでいいのか?家は実家の方だろ?」
「うん、ちょっとね」
 そう言って、小菜はにこにこしながら、歩いている。
 晴は何だろうと、陽菜の方を見やると、陽菜はあからさまに、冷や汗を浮かばせながらおどおどとしていた。
「まさか、ね…」
 晴と小春が住んでるマンションに着き、部屋番号405を入力して自動ドアを抜ける。陽菜は着いてきて当然だが、何故か小菜も着いてくる。
 そして、エレベーターで四階に上がり、405号室に着いた。
 すると小菜は、隣の406号室の前に行き、
「うん、そんな気はしてたけど、一応聞くよ?小菜、これって…」
 すると小菜は満面の笑みで、晴の言葉を遮って言った。
「私、ここで一人暮らしすることになったの!」
 すると、陽菜が申し訳なさそうな顔をして、冷や汗を流しながら恐る恐る口を開いた。
「お、お姉ちゃんじゃないのよ…?こ、これも…お母さんの…」
 陽菜はそう言った後、晴の反応を恐る恐る確認し、一層冷や汗を流した。
「姉さん!!!」
 思わず叫んでしまって、陽菜がビクッと体を揺らし、
「ひゃっ!?」
と、可愛らしい悲鳴をあげた。
 そして、晴は陽菜と小菜を部屋にあげ、緊急会議を開くことにした。
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