尽くされ男と尽姉妹

霞ヶ丘霞

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   第六話 隣人

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 幼馴染である小菜が、隣に引っ越して来た理由を、姉と本人に聞くべく、二人を部屋にあげていた。姉が言うにはこれも、母晴子の企てらしい。いずれ、この部屋にも来るとは思うが、できるだけ来ないで欲しいと願うばかりだった。
「はぁ、どういうことなんだよ…陽姉はるねえ
 先程まで、色々なことで目を回していた陽菜は、いつもの陽菜に戻っていた。
 小菜はというと、お茶をすすりながら、銀色の髪を揺らし、晴の作ったクッキーを嬉しそうに食べている。
「ふぅ、ほんとお母さんも困りものよね…」
「ちょっと待って姉さん、母さんは俺達が心配だから小菜を送り込んだんじゃないのか?」
 すると小菜が、不機嫌そうに頬を膨らませながら、口を開いた。
「送り込んだって、そんな言い方ないじゃない…」
「す、すまん、小菜…で、どうして小菜を、隣に引っ越させたんだ?」
 陽菜は、苦笑しながら晴の問に答えた。
「ここからは、お母さんのせいだからね…?小菜ちゃんや、叔母さんは全く悪くないからね…?」
 陽菜の目の泳ぎ様に、晴はだいたいの察しがついた。



晴子「小菜ちゃんは、晴と一緒の高校に通うのよね?」
小菜「は、はい」
晴子「小菜ちゃんももうちょっと頑張ったほうがいいと思うの」
小菜「は、はぁ、頑張るというのはどういう…?」
晴子「晴のこと」
小菜「っ………!?///」
晴子「ふふっ、小菜ちゃんってほんと可愛いわね」
小菜「か、からかわないでください…!///」
晴子「小学校、中学校の時は、敵なんていなかったと思うけど、高校に入れば、多分敵も出てくると思うの、高校には何故か美少女が集まりやすい、晴は優しいし、ちゃんとすれば外見も良いから、もたもたしてるとすぐに取られちゃうわよ?それに身近にも敵はいるかもしれないし、幼馴染っていうのはほとんどの確率で、新ヒロインに負けてしまうことが多いの、まぁ、私は勝ったけどね?」
小菜「うっ……お、叔母さん、私はどうすれば…」
晴子「ふふふ、小菜ちゃん?そこでね、いい話があるの、最近晴は小春と一緒に、二人暮しを始めたの、それで、隣の部屋が空いてるんだけど…どお?」


「い、いや、これ、どういうこと…?」
「つまり、お母さんの仕業ってこと」
「いや、それは分かってんだけど」
 陽菜は、小菜に聞こえないように晴の耳元で話した。
「お母さんは、小菜ちゃんを焚きつけて、面白半分でやってるみたいなの」
「何やってんだよ、母さんは…だいたい、幼馴染がどうたらこうたらとか言ってたけど、それ禁句だろ…」
 晴は、晴子と小菜の会話に色々とツッコミを入れたいところだったが、今は抑えておく。その代わり、呆れ紛れにため息を吐き、小菜を見やる。小菜は、ん?と何も分かっていないように首を傾げた。
(小菜は結構天然なところあるよな…)
 晴は、心でそうつぶやきながら苦笑した。
「さ、そろそろお昼ご飯にしよ!」
 そう言って、陽菜が立ち上がり、スタスタと台所に向かっていく。
「ちょ、陽姉はるねえ、朝も作ってたんだから、昼は俺が…」
 晴が、陽菜を止めようとすると、足が躓き陽菜に倒れかかった。
「もお、晴、気をつけて?」
 何とか晴を受け止めきった陽菜は、晴に優しく微笑み、注意してくれた。
「ご、ごめん、でも、昼飯は…」
 と、次の言葉を言おうとすると、陽菜に口を止められた。
「今日は、晴達の入学祝いでしょ?夜はお母さん達が、どこか外食に連れて行くと思うけど、お姉ちゃんだって、何かしたいんだから。それに昨日の内に、材料を買ってしまってるから、何を作るか決まってるの。だから、ね?」
 そこまで言われたら、引き下がるしかない。
「わかった」
「ありがと」
 そう言って陽菜は、ニコッと笑顔を浮かべて、晴に待ってるように促した。


「じゃあ、お姉ちゃん帰るから、また後でね晴、小春、それと、またね小菜ちゃん」
 食事を終え、少しゆっくりした後、陽菜はそう言って、帰り、小菜も、陽菜にお礼を言い、また来ると言って隣に引っ越しの片付けをしに帰った。
 晴と小春はリビングに戻り、ソファに座った。
「さて、夜までまだ時間はあるんだけど…」
 すると小春が、はっと思いついた様に手を合わせて、口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃん、相談があるの」
「ん?どうした?」
 そう聞き返すと、小春は真剣な顔と口調で相談してきた。
「これは深刻な問題なんだけど」
 晴は思わず固唾を飲む。
「私って、見た目の割にキャラが薄いと思うの」
「それは深刻だな…」
「でしょでしょ」
「………………………え?」
 小春のあまりにも真剣な顔に、思わず乗ってしまったが、正直、そんなに真剣な顔で話す様な内容ではないことに、遅れながらも気付いた。
「こ、小春?どこでどういう場面から、そう思った…?」
「だって、なんかお兄ちゃんとの会話シーン少なくない?」
「え…?」
「私、ポジション的にはメインヒロインだと思うの」
「いや、まぁ、そうだけど、この作品にメインヒロインは作っちゃいけないと思うんだけど…」
「なんで?」
「だって、タイトルからして、メインヒロインは姉妹全員じゃん…」
 そう言った途端、小春が固まった。ようやく変なやり取りが終わったと、晴は胸をなでおろす。
「・・・」
 小春はまだ、ポカーンと口を半開きにした状態で固まっていて、動く気配がない。まずいと感じた晴は、
「こ、小春?そもそも、小春はの妹キャラという時点で、キャラは十分薄くないと思うよ?」
 そう言って、フォローしようと頑張るが、ショックを受けている小春には届かない。
「小春、俺は小春が一番可愛いと思うし、小春がメインヒロインだと思ってる」
 こうは言ったが、どうしたものかと頭を抱えて考えた末の一言がこれだった。
「…………………………っ!?」
 すると、予想通り。小春は不意を突かれた様に顔を真っ赤にして、近くにあったクッションに顔をうずめた。
 そして、顔をうずめたまま、もごもごとしかしはっきりとこう言った。
「私、お兄ちゃんと結婚する」
「……………………………は…?」
 あまりの衝撃発言に、今度は晴が硬直した。空いた口が塞がらないとはこのことだ。
「お兄ちゃんじゃないとやだ!」
 晴は首を思いっきり振って我に返り、自分を立て直す。
「いや、ちょっと待って、小春?それはだめだって」
「やだ!」
 すると小春は、駄々をこねる子供みたいに反発し始めた。
「お兄ちゃんは私のだから!」
 小春は、クッションから顔を離し、晴の目を見て今度は大きい声で叫んだ。
 他の姉妹よりかは…とか言っていたが、この子はこの子で大変だったことを、今思い出した。
 小春が大きい声で叫んだからか、隣からバタバタと慌てた様子の足音が聞こえた。
「やばい…そういえばそうだった…」
 そして、案の定小菜が来た。
「はぁ、はぁ、小春ちゃん、どういうこと…?」
 すると小春は、俺の腕にしがみついて、小菜に威嚇するように視線を向けた。
「それよりちょっと待って小菜、どうやって鍵…」
 そう言いかけて、小春に冴え切られる。
「小菜ちゃんに話すことなんてなにもないもん」
「なっ!?じゃあ、晴くん、どういうこと!?」
「それよりも、鍵!」
「そ、それは、どうでもいいから!」
 また、家族の誰かの仕業かと察した俺は、プライバシーも何もあったもんじゃないと悪態をつきながら、
とりあえず、小菜を落ち着かせることから始めようと考えた晴は、小菜に座るように仕向けた。
「落ち着いた?」
「う、うん、落ち着いた…」
 落ち着いた小菜に、理由わけを話した。
「はぁ、なるほど、ね…」
 すると、まだむくれている小春が、小菜を軽くにらみながら口を開いた。
「いいよね小菜ちゃんは、お兄ちゃんの幼なじみで、その気になれば結婚もできるし」
 小春のその言葉を聞いて、小菜はわかりやすく顔を真っ赤にして慌てていた。
「なっ!?けっ、結婚…!?私と、はるくんが………」
「あのー、この話やめない…?」
 そう晴が口を挟むと、二人は同時に、
「はるくんは」
「お兄ちゃんは」
「黙ってて!」
 そう言った。
「仲がいいんだか悪いんだか…」
 晴は、二人を見て苦笑せざるを得なかった。


 その後、晴が必死に止めた結果、口論は終わった。そもそも、この口論の原因は晴だ。小春は、晴のことを大好きだというが、それは恋愛的にというわけではない。小春はあくまで、晴のことを兄として好きなのだ。それは、小春自身や小菜、晴もわかっていることで、その上で言い合っているのだから、本当に仲がいいのか何なのか、分からなくなってくる。
「と、とりあえず、小菜は帰ってくれ…」
「うん、わかった…」
 小菜はそう言ってとぼとぼと帰っていった。隣に…
「小春、どうしてあんなこと言ったんだ?結婚したいだなんて」
 すると小春は口をすぼめながら、むくれた頬で口を開いた。
「私はお兄ちゃんとずっと一緒にいたいのに、お兄ちゃんに彼女や奥さんができたら、私邪魔になるじゃん…」
「なるほど、そういうことか…」
 そうは言ったが、晴はそれに気づいていた。だが、気づいてないふりをすることにした。
「お兄ちゃん気づいていたくせに…」
 晴はその言葉を聞いて、恥ずかしくなった。そして、小春はさらにむくれてそっぽを向いてしまう。
「ご、ごめん…」
「はぁ、いいよお兄ちゃんだから許してあげる」
 そう言って小春は微笑んだ。
「ありがとう、おっともうこんな時間か」
 ふと時計を見ると、陽菜が言っていた約束の時間に近くなっていた。
「あ、お姉ちゃんがそろそろ来ていいだって」
「それじゃあ、出るか」
「そうだね」
 そう言って二人は立ち上がり、玄関を出て実家へと向かった。


「にぃにっ!」
 実家の前に着くと、庭から咲希が出てきて晴に飛びついた。
「咲希、昨日も会っただろ?」
「ううん、にぃにがいないと寂しいの…」
 そう言って、ぐすっと鼻をすすり始めた。
「お姉ちゃん達じゃだめなの?」
「うん」
 すると、玄関から陽菜が出てきて、困った顔をしながら咲希を抱っこした。
「こうも寂しがりやだと、心配だね…」
「もう少し、俺がいない生活にも慣れてほしいんだけどね…」
「そうだよね…」
 二人してため息をついているのを見て、小春や凪沙達が、咲希の頭を撫でた。
「咲希、お姉ちゃん達の言うこと聞かないと、晴お兄ちゃんに会えなくなるよ?」
 凪沙の咲希に対する厳しい言い方に、晴と陽菜は驚いていた。
「うう…はぁい…」
 咲希は結構わがままな所はあるが、基本は素直な良い子なのを凪沙は利用したのだ。だから、咲希は素直に凪沙の言ったことを了承した。
「晴お兄ちゃんと陽お姉ちゃんが困ってるのを見たらね、私もしっかりしなくちゃって思って、へへっ」
「ありがとな凪沙」
「お安い御用だよ!」
 そして家族全員が揃い、車でとも思ったが9人が乗るはずもなくでお店に行くことになる。
「本当はこんな大人数でぞろぞろと歩きたくはないんだけどなぁ…」
 そんな愚痴をこぼしながら晴はとぼとぼと歩き出した。それに続いて家族みんなも歩き出す。
 するとそれを聞いていた晴子が、困り顔で晴に問いかけた。
「じゃあ、咲希を抱っこして車に乗って行く?近場なのに?顔見知りの店員さんに車で来たんですか?って言われたい?」
 容赦のない晴子の問いかけに晴は顔が引きつりかけていた。
 そもそも、晴子はここ最近いろんなことをしでかしている。小菜を隣に引っ越させたり、小春を送り込んだり、姉妹を送り込んだりと。晴のほうが晴子に問いただしたい気分だった。だが、せっかく晴と小春の入学を祝ってくれるというのに気分を害させるのもどうかと思う。
「うっ…まぁ確かに…」
「そうでしょ?ふふっ、お母さんそういう晴の素直なとこ好きよ~!」
 そう言って晴子は、つんつんと人差し指で晴の横腹をつついてきた。
「か、母さん!そんなじゃれるような歳じゃないでしょ!」
 そう晴が言うと、晴子は疑問の顔を浮かべた。それに対し晴も、あ…と思い出したような顔をする。
「え?私まだ36よ?いいじゃんじゃれたって、そ、それともお母さんがじゃれてくると恥ずかしい!?は、晴に、反抗期が来たの!?」
「そうだ、母さん結構若いんだった…それと、反抗期じゃない!」
 完全に忘れてたと晴は頭を抱えた。36というとおばさんだと言う人がいるだろうが晴子は違う。晴子は一緒に歩いていて姉弟と間違われるほど若く見える。だから、じゃれていても別に恥ずかしくはない、恐らく姉弟のじゃれ合いと見られているからだ。
「そ、ならよかった」
 そして、晴子は以外とあっさりしている。
「に、兄さん、さっきから周りの視線が…」
 そう言って春花が晴の後ろにべったり付いてきた。それに晴は、春花の人見知りを宥めるように頭を撫でながら、優しく微笑む。
「そりゃあ、家族揃ってぞろぞろ歩いてたら誰だってこっち見るよ」
 するとそれを見ていた光が、左腕に腕を絡ませた。
「ね、晴兄はるにい?光はそれだけじゃないと思うなぁ」
 光のその言葉を聞いて、晴はもう一度辺りを見回す。そして、光の言葉の意味を理解した。
「ああ、なるほど」
「まぁ俺の娘達と息子は揃いも揃って美男美女だからなぁ」
 父正晴が今日初めて口を開いた。すると晴子が正晴を睨んで、何か察したように正晴が黙り込む。
「いや、美男って…俺オタクっぽいし、メガネだし、ファッションにこれでもかというほど興味ないし、とても美男とは思えないけどね!」
 実際に晴は、わりとオタクで、でもオタクだとは認めたくないらしく、ライトなオタクで、ライクと呼んでいる。
「いや…それを言ったら私も…眼鏡はかけてないけど…オタクだし…人見知りだし…雰囲気暗いし…とても美女とは言えないよ…?」
 そう言って自分を自虐する春花に晴は、首を振って否定した。
「いや春花、それは違うぞ?春花は正直に言ってすごく可愛いよ?具体的に言うと…」
「に、兄さん…っ!もういいからぁ…っ!」
 春花は顔を真っ赤にしながら、晴の背中を軽くポコポコ叩いた。でも、確かに春花は可愛いのだ。肩ぐらいまでのちょうどいい髪の長さ、プラスして白髪、瞳は赤色、性格は弱々しく守ってあげたくなるような存在だ。
 そのやり取りを見ていた咲希と凪沙を除く姉妹全員が、割り込みたいけど春花の為にも割り込めないというもどかしい気持ちで眺めていた。
 その視線に気づいた晴は、冷や汗をかいていたが、春花は気づいてないらしく、何かに怯えている晴を見て首を傾げている。
「ふふっ、ほんとに仲がいいわねぇ」
 そう言って晴子は微笑ましいものを見る視線で、晴を見ていたが、晴は気づいていた、晴子は面白がっていると。
「だって、口がニヤけているからバレバレだぞ!?母さん!」
「ま、まぁまぁ、もう着いたんだし静かにね?」
 そんなやり取りをしているうちに着いていたらしい目的のお店に入り、顔見知りの店員に家族で来たときに使ういつもの個室へと案内され、入るとそこには、二人の先客がいた。それもよく知っている二人だった。
「な、なんで、小菜とおばさんが…」

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