あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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23 側近ストゥディウムの苦難

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危ない顔で訳の分からない主張をする王太子。

どうかしている主に『何言ってんだこのスットコドッコイ』と思うストゥディウムだがグッと拳を握り込んで堪え、ピウスの伝言を伝える。

「…王女殿下はランチをご一緒したいと仰せです…お弁当を手作りされたそうで…どうされますか?…王女殿下はお返事をお待ちです」
「ッ!‥今日も私の為に弁当を手作りしてくれたと言うのか…!?」

弁当を連続で作る事がいかに大変かを王太子は知っている。

母である王妃は1度の料理で疲れ果て次に料理するまで最低でも1ヶ月の休養を要するからだ。

(何ていじらしいッ!)

そこまでして私と食事を共にしたいのか――私を愛しているのだな――だが…それなら何故この3年間私を拒絶し続けて来たのだ!?

『冷たい婚約者』であったはずのピウス姫が昨日から突然歩み寄って来た。

くすぐったいような嬉しさと同時に、過去冷たく拒絶された事への恨みも頭をもたげて来る…

王太子は馬車の窓からチラリとピウスを盗み見る。

(――ん?…何だ?…また護衛と揉めてないか?)

ピウスは護衛と揉めていた。

実は王太子のデカい声は馬車の外、ピウスの耳にしっかり聞こえていて。

「実情はどうあれ他国の王女を『にべもなく冷たい態度で追い払う』なんて真面目なストゥディウム様には無理よ…無茶な要求なさるのね」

そう呟くピウスに

「王女という身分が無くても美しいあなたに冷たく出来る男などいませんよ」

なんて護衛が言うものだからピウスは真っ赤になってしまって…

「‥も、もうお世辞は結構よ?そんなにお世辞ばかり口にしていたら口が曲がってしまうわよ?」
「口が曲がったらあなたに治してもらいます」
「‥私曲がった口の直し方なんて知らないことよ?どうやって治すのかしら?」
「あなたの口で」
「まぁ…口を道具にするの?でも…私、口を取り外すなんて出来な‥ハッ!?」

護衛が笑っている!

「‥揶揄った?揶揄ったのね!?‥酷いわ、私が世間知らずだからって‥」
「い、いや、すみません‥『そう来るのか』と‥可愛すぎて‥」
「かわ‥も、もう…ウィースさんはもしかして『女たらし』なのかしら?」
「あなただけだ」
「‥ッ!」
「可愛いと想うのも
それを伝えずにいられないのも――
あなただけだ…」



(何かピウス姫の顔が赤いような――何なんだ、あの護衛は!?他国の王女を赤面させるとは何事だ!?)

「殿下?あまり王女殿下をお待たせするのは――」
「‥ハッ!‥ゴホッ…て、手作り弁当だろうが私はピウス姫とランチを共にするつもりは無い!」
「…!(怒怒怒)…ではその旨殿下がご自分でお伝えください」
「はぁ!?何で私が!?」
「(ご自分の事でしょうが!)私は王女殿下と話してはならないと言われました。他に方法が?」
「‥ぬぅッ」
「じゃあ私が言ってあげるわぁ!迷惑だから今すぐストーカー行為をやめろって‥」
「いや!いい!ストゥディウム、行け!ピウス姫との会話を許す!」

焦って叫ぶ王太子。

クピドゥスに下品かつ意地悪く断られたら私がピウス姫に嫌われてしまうかもしれない…そんなの嫌だ!

私はピウス姫の心証を悪くしたいわけではないのだ!

王太子はそう心の中で絶叫しながらストゥディウムに早く行けと目配せする。

自分で断る気まずさに側近を使って断るのもかなり心証が悪いことには目を背け、自分自身の気まずさ回避に極降りする王太子である。

こんなに苦労してランチを断ったのに――



「…は?」

ランチ時、王太子に呼び出されたストゥディウムは耳を疑う。

「だから!ピウス姫の手作り弁当の内容をこっそり陰から観察して知らせてほしいのだ!」


まさかの『覗き』任務だ…
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