あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない！

24 恋人達のランチタイム

「私だってあなたと一緒にランチを楽しみたくてお弁当を作って来たのに…」

そうこぼして俯くのはストゥディウムの婚約者ミーティス伯爵令嬢である。

いつもは文句を言ったりしないミーティスがこんな風に言うのは王太子の命令だからである。

「…もう王太子殿下から離れたらいいのに…他の側近の人達がそうした様に…」
「シッ！滅多なことを言うものじゃないよ！」

周囲を警戒してストゥディウムはミーティスに強めに言う。

誰かに聞かれたらミーティスが不敬罪に問われてしまうかもしれないのだ。

「…ごめんなさい」

シュンとして俯く可愛い婚約者にストゥディウムは提案する。

「そうだ！王女殿下は昨日は中庭でランチをされたらしい。私達も中庭でランチにしよう？私は君のお弁当を楽しみながらさり気なく王女殿下のお弁当をチェックするよ」
「！‥ええ、良かった！…拗ねたりしてごめんなさい、食べてもらえないのかと思って…あなたが（下らない任務で）お昼抜きになるのも許せなくて…」
「いつも私の心配をしてくれてありがとう。君は最高の女性だよ」
「あら、最高の女性は王女殿下じゃないの？憧れてるのを知ってるわよ？」
「あ、憧れと現実は違うよ！あのお方は雲の上の人。私の隣には君だよ」
「私の隣もあなただけよ」

主である王太子とは違い婚約者とラブラブな側近ストゥディウム。

イチャイチャしながら中庭へ行くが――

「…いらっしゃらないわね？」
「う～～ん…となると庭園の方かな…何か今日は中庭が凄く混んでるし…」
「みんな私達と同じなんじゃない？昨日王女殿下が中庭でランチされたって聞いて集まって来ているのよ。ちょっとでもお姿を垣間見れれば嬉しいもの。ホラ、みんなキョロキョロしてるわ」

確かに皆食事を手に座るでもなく人捜し顔でキョロキョロしている。


――実はピウスは王立学校での3年間で友人を作れなかった。

作らせてもらえなかった、が正しい。

入学当初、誰にでも気さくに声を掛け大人気となったカラクテリスティカの魅力的な王女。

これにアッロガーンスの王太子が嫉妬した。

自分はピウス姫とギクシャク状態で上手く話せないのに何で他の奴らが彼女の笑顔をゲットしてるんだ！？

王太子は生徒達に圧力を掛けてピウスと関わるのを禁止した。

結果、ピウスは1人の友人を得る事も出来ずお独り様学校生活を送った。

生徒達はそんな王女を密かに慕い王太子にバレない様にその姿を垣間見ては憧れの溜息をつき崇拝心を昂らせ――

ピウスはいつの間にか学校で天上人の様な存在になっているのだ――


ストゥディウム達は庭園も回ってみたがやはりピウスの姿は発見できない。

「まだ捜すの？お昼休みが終わっちゃうわ」
「そうだね。もうここで食べよう。きっと人込みを避けられて私達の知らない場所で食事されているのだろう…」

ストゥディウム達は諦めてランチを始める。

「美味い！」
「本当？良かった！」
「君は最高の女性だよ」
「あら、最高の女性は（以下同文）」