あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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31 生涯で1度だけ使える魔法

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騎士達が弾けた様に口を開く。

「殿下!そうだったのですね!」
「何て嫌なサイテー野郎だと思っちゃいましたが演技なら良かったです!」
「マジ良かった…アレがマジならこの国から逃げ出すところでした!」
「弁当食っただけで斬首刑とかそんな恐ろしい国住みたくないっすからね!」
「『王太子特権』で個人的に気に入らない奴裁く王太子とか将来恐怖政治間違いなしっすもんね!」
「殿下が横暴な王太子じゃなくてホッとしました!」

口々に王太子に言い募る騎士達を見て王太子は助かったのは護衛だけではない事に気付く。

「う、うむ。何だか皆を不安にさせたようだが、これは芝居だからな!」

『はい!俺達王太子殿下について行きます!』

涙ぐんで声を揃える騎士達にホッと胸を撫で下ろす王太子。

世界には10の王国があり、
王国を束ねる帝国がある。

圧倒的な強国である帝国が定めた世界共通の法律により
人々は自由に世界中を行き来し自分が住む国を選ぶ権利を与えられている。

なので各王国は民が外国に流出しない様に、逆に流入してくれるようにと民に喜ばれる政治を心掛けている。

もしも王太子の愚行のせいで優秀な騎士や未来ある生徒達が外国へ流出、なんて事態になれば――

(た、助かった…危ないところだった…私は『光り輝く王太子』だから廃される事はないだろうが…メチャメチャ失望されてしまうところだった…あぁ、ピウス姫は護衛ではなくこの私を救うために…)

「私も王太子殿下に倣って3年間お世話になった王立学校の皆様にお礼として瞬間移動魔法をお見せいたしました。『王族は祝福を受け生涯に1度だけ使える魔法を授かる』…と言っても実際ご覧になった方は少ないでしょう?もはや都市伝説化しておりますが本当なのですよ?‥喜んで頂けていたら幸いですわ」

そう。

ピウスは生涯で1度だけ使える魔法を使い旧校舎ダンス室から校庭まで瞬間移動したのだ。

(俺を助ける為に…)
(私を助ける為に…)

騎士達、生徒・教師達の『ブラボー』の声と鳴りやまない拍手の中静かに微笑むピウスに男二人が心を震わせている。

どちらかが勘違いしているのだが、それはまぁ、まぁ――




「‥ハッ‥あ、あれ!?」

旧校舎ダンス室では真っ白になった視界が元に戻ったクピドゥスがキョロキョロとダンス室内を見回す。

「な…王女がいない…消えた!?…それに…真っ白になる直前に黒目黒髪の超ド級のイケメンが現れた気がしたのに…」

夢じゃない…物凄くタイプだった…何か言いながら現れて

『‥ッあなたって人は‥』

そんな呟きと共に消えてしまった…

「‥い、いや今はそれどころじゃない!‥あの王女‥思ったより手強い‥いや‥」

負ける…
このままじゃ――
このアタシが…!

「‥冗談じゃない!手を打たなくちゃ‥!」

クピドゥスは早退して『パパのお店』へと急ぐ。

「パパ!潰してもらいたい女がいる!」
「あぁ?何だよ‥」

ドロースス男爵は珍しく必死な形相のクピドゥスを見て面白そうに笑う。

「フッ‥お前にそんな顔させるなんて相当な女なんだな…」
「ッ‥王太子の婚約者の王女様だよッ‥大人しいから楽勝だと思ってたけど‥あの女、どっかヤバい‥潰しといた方がいい」
「どうする?男数人に犯らせるか?」
「それでいいよ」
「何すか?頭。面白そうな話っすね」

薄暗い店内で話し込むクピドゥスと義父の周りにガラの悪い男達が集まってくる。

「ああ、アンタ達にオイシイ仕事だよ!」
「ってぇとアレっすね?」
「そ。極上の処女をメチャメチャに犯しちゃってよ」
「殺しますか?」
「好きにしな」
「了解っす」

男達が醜く顔を歪めて笑う――
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