あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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43 白銀のドレスの春の女神

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シィィィ……ンンン

まるで水を打ったよう。

さっきまで騒めきまくっていた大ホール。
その理由は王太子が男爵令嬢連れで入場した為。

そこへ本来王太子がエスコートすべき人物、
正式な婚約者であるピウスの入場紹介。

そこにいる誰もが入場口に視線をやり
そこに現れたカラクテリスティカ第一王女を目にして。

息を呑み
呼吸を忘れ

釘付けになる――

はぁぁ~~、何て美しい…
はぁぁ~~、まるで天から舞い降りた女神の様…
はぁぁ~~、正に春の女神の降臨…!
はぁぁ~~、尊過ぎて瞬きするのも惜しいほど…

誰もが再開した呼吸に賛辞を乗せて美しい王女を歓迎する。

背筋を伸ばして真っ直ぐ前を見て歩き出すピウス。
独り入場の惨めさは微塵も無い。

――‥ハッ!――

大ホール内がそれに気付き震撼する!

王女殿下は大ホール中央に歩を進めている…

つまり王太子殿下に向かっている!

人々が自然に脇によけ
ピウスと王太子の間に道が出来る。

あまりの気まずさから入場口を見ない様にしていた王太子だが

「‥ッ‥」
堪らず振り返る。

「‥ハッ!!」
息を呑む王太子。

何て――何て美しいんだ!
まるで奇跡だ!
あれほどに美しく尊く輝かしい女性の存在は奇跡で間違いない!

王太子は決してオーバーではない。

今日のピウスのドレス一式は亡き母が遺してくれたもの。

そもそもパーティーで着られるドレスなどピウスは1着も持っていなかった。

14才、母の死と同時に沢山あったピウスのドレスや装飾品等は全て元側妃に奪われた。

『それは』と拒否したカラクテリスティカ王家にまつわる品々も『これだけは』と懇願した母の形見もだ。

そんな未来を予想したのかは分からないがピウスが現在滞在している修道院に母は亡くなる随分前にドレス一式を保管してくれていた。

流行に左右されないシンプルだが美しいドレス。

随所に施された豪華だがさり気ない銀糸の刺繍が美しい純白のドレス。

かつて母が誰かから贈られたというそのドレスは母の若い頃よりピウスがナイスバディに育ってしまった為少しの直しが必要だったが、修道院には優秀なお針子が保護されており、喜んでドレスのサイズ直しを引き受けた。

髪も保護されている髪結師が張り切って腕を揮ってくれた。

実に4年ぶりにドレスアップしたピウスは正に春の女神が舞い降りた様…

「‥あぁ‥」
ほろり…

感動のあまり一粒の涙を零す王太子。

その心は初めてピウスと会った3才の時に飛んでいる。

15年前。

アッロガーンス王宮初夏の庭園。

君との初めてのお茶会――
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