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「ピ、ピウス・カラクテリスティカ第一王女殿下、ご入場~‥」
ピウスは困惑気味の尻すぼみの紹介を受け大ホール入場口に立つ。
客観的に見て今のピウスは『男爵令嬢に婚約者を奪われた惨めな王女』――
(‥そんな風に思わせないわ!)
ピウスは顔面に意地のアルカイックスマイルを張り付ける。
背筋を伸ばして歩き出せば進行方向10時の方角にアクーメンがいる。
(ふふっ…全身黒ずくめの黒目黒髪の神秘的な超美丈夫…『影』なのに目立ち過ぎよ?)
更に1時と3時の方角に『隠れイケメン影』の2名もいる。
(う~~ん、キチンとした格好をしてしまうとイケメンは隠せないわね)
影でありながら女性の視線を集めかなり目立ってしまっている事に無自覚であろう3人にどこかほっこりする。
だがいくら会場内を探しても――
『影』が3人共勢揃いなのに影が守るべき対象が――
(…彼だけがいない)
僅か一瞬だけ陰るオーキッドピンクの瞳‥
「私では駄目ですか?」
不意に降って来た低い声。
視線だけ声の方向へ向ければついさっき見た時は結構離れた場所にいたはずのアクーメンが左横にいてピウスと同じ速度で歩いている。
「え?今何て‥」
「わた‥」
ガシガシッ
「「何でもありません!」」
(…まぁ…)
ピウスが驚いたことに1時と3時の方角にいたはずの『隠れイケメン影』の2名がアクーメンを羽交い締めにしている。
「おい!」
「ピウス姫、近くで護衛しておりますので」
「ちょ」
「ご安心ください。では」
イケメン2人にズルズル引きずられて捌けていく超イケメン。
何だったのかしらと思っているとイケメン達の動きに『ハッ』と気付いた人々が彼らに倣いピウスの進行方向からサササと脇へ寄り――
結果、ピウスと王太子の間に道が出来たのである。
何度かチラチラ振り返りながらとうとうピウスに体を向ける王太子。
会場中が大注目のご対面となる直前に。
「そこまでよぉッ!」
王太子の前にサッと体を滑り込ませ叫んだのはクピドゥスである。
ピウスに跪こうと待ち構えていた王太子は突然目の前を塞いだキャロットオレンジの飾りや花などがぶっ刺さったウルトラマリンブルーの巨大な塊が信じられない。
今日のクピドゥスはウルトラマリンブルーの髪を限界まで膨らませて目的不明の巨大な髪型を作り上げている。
「クピドゥス!?なッ、何の積もり‥」
「王女様にテナ様との婚約破棄を命じるわぁ!」
暫しの静寂の後。
「何を言っているんだ!?あのアバズレは!?」
「男爵令嬢が王女殿下に命じるだなどと不敬の極み!」
「しかも『婚約破棄』だとは!」
「あの巨大な頭の中は腐っているのではないか!?」
一斉に騒めく会場。
だがクピドゥスは余裕の表情である。
「私はただの男爵令嬢じゃありませんわぁ!私には王女様より妃に相応しいと言える切り札がありますの!そう、このお腹にはテナ様の赤ちゃんがいるのですわぁ!」
再びの静寂。
それを破ったのは王太子である。
「何を言っている!?妊娠などするはず‥」
「え~~~?妊娠する事、いっぱいしたじゃないのぉ?」
「‥ッ‥君は不妊薬を飲んでいると言っ‥」
「飲んでないわぁ…アレって苦くて嫌いなのぉ。それに完全じゃないし体に悪いのよぉ?」
「‥なッ‥私を騙したのか!?何故‥」
「何故ですって?決まってるじゃなぁい?」
「まさか‥」
「そうよぉ?王女様の代わりに私が妃になる為よぉ?」
「君は妃になどなりたくないと‥」
「テナ様のせいよぉ?」
「なにッ!?」
「私は愛人でよかった‥妃なんか面クサだもの。…でもテナ様がアタシを愛人にすらする気が無いって分かって…それは王女様のせいだって分かったらさ、排除するしかないじゃん?アタシの優雅な愛人生活を邪魔する女をさ!」
クピドゥスは王太子の質問に答えながらその目は真っ直ぐにピウスに向いている。
敵意まみれの視線をピウスは静かに受け止めている。
(‥ッ、何なのこの女!?落ち着き払った顔をして…今、自分が絶体絶命だって分かってないの!?まだ自分が妃になれると思ってんの!?…そうね、王太子がゾッコンなんだからね…でも…じゃあ、これならどうよ!?)
クピドゥスは鼻息を荒くして2枚目の切り札を切る――
ピウスは困惑気味の尻すぼみの紹介を受け大ホール入場口に立つ。
客観的に見て今のピウスは『男爵令嬢に婚約者を奪われた惨めな王女』――
(‥そんな風に思わせないわ!)
ピウスは顔面に意地のアルカイックスマイルを張り付ける。
背筋を伸ばして歩き出せば進行方向10時の方角にアクーメンがいる。
(ふふっ…全身黒ずくめの黒目黒髪の神秘的な超美丈夫…『影』なのに目立ち過ぎよ?)
更に1時と3時の方角に『隠れイケメン影』の2名もいる。
(う~~ん、キチンとした格好をしてしまうとイケメンは隠せないわね)
影でありながら女性の視線を集めかなり目立ってしまっている事に無自覚であろう3人にどこかほっこりする。
だがいくら会場内を探しても――
『影』が3人共勢揃いなのに影が守るべき対象が――
(…彼だけがいない)
僅か一瞬だけ陰るオーキッドピンクの瞳‥
「私では駄目ですか?」
不意に降って来た低い声。
視線だけ声の方向へ向ければついさっき見た時は結構離れた場所にいたはずのアクーメンが左横にいてピウスと同じ速度で歩いている。
「え?今何て‥」
「わた‥」
ガシガシッ
「「何でもありません!」」
(…まぁ…)
ピウスが驚いたことに1時と3時の方角にいたはずの『隠れイケメン影』の2名がアクーメンを羽交い締めにしている。
「おい!」
「ピウス姫、近くで護衛しておりますので」
「ちょ」
「ご安心ください。では」
イケメン2人にズルズル引きずられて捌けていく超イケメン。
何だったのかしらと思っているとイケメン達の動きに『ハッ』と気付いた人々が彼らに倣いピウスの進行方向からサササと脇へ寄り――
結果、ピウスと王太子の間に道が出来たのである。
何度かチラチラ振り返りながらとうとうピウスに体を向ける王太子。
会場中が大注目のご対面となる直前に。
「そこまでよぉッ!」
王太子の前にサッと体を滑り込ませ叫んだのはクピドゥスである。
ピウスに跪こうと待ち構えていた王太子は突然目の前を塞いだキャロットオレンジの飾りや花などがぶっ刺さったウルトラマリンブルーの巨大な塊が信じられない。
今日のクピドゥスはウルトラマリンブルーの髪を限界まで膨らませて目的不明の巨大な髪型を作り上げている。
「クピドゥス!?なッ、何の積もり‥」
「王女様にテナ様との婚約破棄を命じるわぁ!」
暫しの静寂の後。
「何を言っているんだ!?あのアバズレは!?」
「男爵令嬢が王女殿下に命じるだなどと不敬の極み!」
「しかも『婚約破棄』だとは!」
「あの巨大な頭の中は腐っているのではないか!?」
一斉に騒めく会場。
だがクピドゥスは余裕の表情である。
「私はただの男爵令嬢じゃありませんわぁ!私には王女様より妃に相応しいと言える切り札がありますの!そう、このお腹にはテナ様の赤ちゃんがいるのですわぁ!」
再びの静寂。
それを破ったのは王太子である。
「何を言っている!?妊娠などするはず‥」
「え~~~?妊娠する事、いっぱいしたじゃないのぉ?」
「‥ッ‥君は不妊薬を飲んでいると言っ‥」
「飲んでないわぁ…アレって苦くて嫌いなのぉ。それに完全じゃないし体に悪いのよぉ?」
「‥なッ‥私を騙したのか!?何故‥」
「何故ですって?決まってるじゃなぁい?」
「まさか‥」
「そうよぉ?王女様の代わりに私が妃になる為よぉ?」
「君は妃になどなりたくないと‥」
「テナ様のせいよぉ?」
「なにッ!?」
「私は愛人でよかった‥妃なんか面クサだもの。…でもテナ様がアタシを愛人にすらする気が無いって分かって…それは王女様のせいだって分かったらさ、排除するしかないじゃん?アタシの優雅な愛人生活を邪魔する女をさ!」
クピドゥスは王太子の質問に答えながらその目は真っ直ぐにピウスに向いている。
敵意まみれの視線をピウスは静かに受け止めている。
(‥ッ、何なのこの女!?落ち着き払った顔をして…今、自分が絶体絶命だって分かってないの!?まだ自分が妃になれると思ってんの!?…そうね、王太子がゾッコンなんだからね…でも…じゃあ、これならどうよ!?)
クピドゥスは鼻息を荒くして2枚目の切り札を切る――
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