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「は、母上、本当にそんな事を!?…そう言えばあの日、おかしな事を言ってましたね…『ピウス姫はプチタルトを食べたから部屋で待っていればピウス姫の方から求めてくる』と。‥それは母上が危険な媚薬入りプチタルトをピウス姫に食べさせたという事だったんですか!?」
王太子が丸くしていた目を険しくして母親を睨みつける。
アッロガーンス王妃は愛する息子に初めてそんな眼をされてブワッと涙が溢れる。
「だって、宮殿に挨拶に来た王女を見て殿下はもう今すぐ欲しいって顔してたじゃない!だから私が一肌脱ごうと…違法薬物だなんて知らなかったわ!致死量なんて言われたって適量なんて知らないもの!侍女に調達させた小瓶を全部入れただけよ!第一、王女は死んでないじゃない!」
「直ぐに吐き出しましたから…それでも修道院に駆け込んで随分長い時間を一人で苦しみました」
「何よ恨みがましい!テナークスに抱いてもらえばそれで済んだのよ!そうしなかった自分の責任でしょうよ!」
逆ギレ状態で反論するアッロガーンス王妃に会場中が冷たい視線を向ける。
「何て恐ろしい…」
「他国の大切な王女殿下を預かる身でありながら毒物を仕込むとは…」
「殺人未遂を犯しておきながら全く反省の色もない」
「自分がどんなに卑劣で汚い恐ろしい事をしたのかも分からないとは…」
『狂っている』と――
「…テナークス殿下もグルなのかと思っていましたが違ったのですね…」
「えぇ!?もちろん違うよ!私は薬物で君をどうこうしようなんて…何故そんな…」
「後日お会いした時に『何故私の部屋を訪ねなかった?母上の菓子を食べなかったのか?』と訊かれたので」
「‥ッ!」
テナークスは確かに訊いた。
母が何故そんな事を言ったのかを深く考えずに(母上の菓子を食べたから私の所へ来るらしい)とだけ思い訊いたのだった。
「あの瞬間から私はテナークス殿下が恐ろしくなりました。私を騙し、薬物を盛るような人だったのかと…」
「ピウス姫!私は君にそんな事絶対にしない!」
「そうだったんですね…でも、今こうなってはもうどうでもいい事です」
「よくない!――あぁ、だからか…だから君の態度が変わってしまったのか…いつも緊張に満ちたものに…そして私はそんな態度に苛々を募らせて…君を『冷たい女だ』と責めるように――何てことだ…」
あまりにも考え無しであまりにも愚かだった事にやっと気付いたテナークス。
だが…
「もう終わったことです。テナークス殿下はそちらのご令嬢を選ばれました。後戻りは出来ません。時間は戻らないのです」
「‥ッ!‥い、嫌だ!私の婚約者は君だ!何故君を失わなければならない!?」
「側妃にしてやればいいわ」
アッロガーンス王妃が性懲りもなく口を挟むが。
「ダメよ!王女様はこの国から出てってもらう!それがアタシが王太子の子供を産む条件よ!」
クピドゥスが言い放つ。
王太子が丸くしていた目を険しくして母親を睨みつける。
アッロガーンス王妃は愛する息子に初めてそんな眼をされてブワッと涙が溢れる。
「だって、宮殿に挨拶に来た王女を見て殿下はもう今すぐ欲しいって顔してたじゃない!だから私が一肌脱ごうと…違法薬物だなんて知らなかったわ!致死量なんて言われたって適量なんて知らないもの!侍女に調達させた小瓶を全部入れただけよ!第一、王女は死んでないじゃない!」
「直ぐに吐き出しましたから…それでも修道院に駆け込んで随分長い時間を一人で苦しみました」
「何よ恨みがましい!テナークスに抱いてもらえばそれで済んだのよ!そうしなかった自分の責任でしょうよ!」
逆ギレ状態で反論するアッロガーンス王妃に会場中が冷たい視線を向ける。
「何て恐ろしい…」
「他国の大切な王女殿下を預かる身でありながら毒物を仕込むとは…」
「殺人未遂を犯しておきながら全く反省の色もない」
「自分がどんなに卑劣で汚い恐ろしい事をしたのかも分からないとは…」
『狂っている』と――
「…テナークス殿下もグルなのかと思っていましたが違ったのですね…」
「えぇ!?もちろん違うよ!私は薬物で君をどうこうしようなんて…何故そんな…」
「後日お会いした時に『何故私の部屋を訪ねなかった?母上の菓子を食べなかったのか?』と訊かれたので」
「‥ッ!」
テナークスは確かに訊いた。
母が何故そんな事を言ったのかを深く考えずに(母上の菓子を食べたから私の所へ来るらしい)とだけ思い訊いたのだった。
「あの瞬間から私はテナークス殿下が恐ろしくなりました。私を騙し、薬物を盛るような人だったのかと…」
「ピウス姫!私は君にそんな事絶対にしない!」
「そうだったんですね…でも、今こうなってはもうどうでもいい事です」
「よくない!――あぁ、だからか…だから君の態度が変わってしまったのか…いつも緊張に満ちたものに…そして私はそんな態度に苛々を募らせて…君を『冷たい女だ』と責めるように――何てことだ…」
あまりにも考え無しであまりにも愚かだった事にやっと気付いたテナークス。
だが…
「もう終わったことです。テナークス殿下はそちらのご令嬢を選ばれました。後戻りは出来ません。時間は戻らないのです」
「‥ッ!‥い、嫌だ!私の婚約者は君だ!何故君を失わなければならない!?」
「側妃にしてやればいいわ」
アッロガーンス王妃が性懲りもなく口を挟むが。
「ダメよ!王女様はこの国から出てってもらう!それがアタシが王太子の子供を産む条件よ!」
クピドゥスが言い放つ。
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