あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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51 アッロガーンス王裁き

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うな垂れていたアッロガーンス王妃はグッと顔を上げる。

もう自分の方を見ようともしない息子を見つめ小さく頷く。

テナークスの存在こそが自分の価値、権力、安全…全てを保障してくれるはず!

「だ…だけど私は特別な妃ですわ!『光り輝く王太子』を産んだんですもの!私を蔑ろになど出来ないはずよ!」
「そう…だから王妃として取り立てふんぞり返らせて来た。それほどに『光り輝く王太子』を産んだ功績は大きい。だが、それももう終わりだ」
「な!?」
「そこの娘の胎にテナークスの子がいる。世代が変わるのだ。これからはその娘の時代となる。――お前の時代は終わったんだよ」
「そんなッ‥そんなッ!嫌よ…あぁぁ…」

アッロガーンス王妃はヘナヘナとその場に頽れる。
今までだったら駆け寄ってくれたはずの息子は必死な形相でアッロガーンス王を見ており、母の姿は目に入らない。

「父上ッ私はピウス姫しか‥」
「では何故男爵令嬢を妊娠させた?」
「‥ッ‥」
「お前の気持ちなど関係無い。お前の子を宿した男爵令嬢は我が王家にとって大切な存在だ。いくら『光り輝く王太子』でも相性の悪い相手を孕ませる事は出来ない。お前の子を孕めるかどうか分からぬ王女殿下より男爵令嬢の方が価値があるのだ」
「!…コホン、さっきも言ったけど!」

これからは自分の時代、ピウスよりも価値があると言われ(何だ…アタシが思ってたよりこの妊娠凄い事なんだ)と気付き鼻息を荒くしたクピドゥスが声を張る。

「王女様にはこの国から出てってもらう!王女様がいたらテナ様は他の女が目に入らないもの。それじゃ『光り輝く王太子』の意味がないでしょ?王女様は国外追放!それがアタシが王太子の子供を産む条件よ!」
「なッ‥クピドゥスッ!何の罪も無いピウス姫にそんな理不尽な事、出来る訳‥」

ギョッとする王太子。
国外追放になどされたら側妃にも愛妾にも出来ないではないか!?

たとえピウスを妃に出来なくても何とかして手許に置こうとアレコレ考えを巡らせ始めていた王太子はその全てを潰そうとするクピドゥスに憎しみを感じ始める。

「罪だったらあるわ!テナ様に優しくしなかった!優しくないから婚約破棄で国外追放なのよ!どう?筋、通ってるでしょ?」
「‥君はどれだけ馬鹿なんだ!」
「何よ、テナ様だって『ピウス姫が閨を断る、優しくない』って言ってたじゃない!それに比べてアタシは最高に優しい女だって言ったよね?」
「私も馬鹿だったんだ!君が言う『優しい女』は『貞操観念の無い女』だ!大体、何が『優しい女』だ!…今思えば君など女ですらなかった!道具だった!ただの性欲処理の道具だったくせに‥」
「テナークス、いい加減にしろ!」

王太子のあまりにも酷い言いようにピウスを始め会場中が眉を寄せている事に気付いた王が息子を止める。

何故か言われているクピドゥス本人だけは平気な顔をしているが――

「ゴホッ、王太子よ、王家の子を身ごもった女性にキツく当たるな!――よし、アッロガーンス王国は次代の国母の意見を尊重するとしよう」
「父上!?何をッ‥」

王はピウスをチラリと見やり。

(――美しい。欲しい。惜しい。だが、1番立場の弱い君に泣いてもらおう。以前、私が閨に誘った時も断って来たしな…助けてやったってテナークスがアレでは私が手を出せる余地は無さそうだし…どうせ私のものにならぬのだから…)

「アッロガーンス王国はカラクテリスティカ第一王女ピウス・カラクテリスティカ殿下を婚約破棄の上国外追放とする!今この宣言を持ってこの処置は正式に決定したものとする!」

何という理不尽な!
何一つ悪くない王女殿下に対してあんまりだ!
アッロガーンス王家は全員狂っている!

会場中の非難の中、ピウスに向かって行く者達がいる。
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