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59 本人も知らなかったウィースの秘密
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「‥まぁそう怒るな。お前が遅いからギリギリだったんだぞ?」
人々の予想に反して。
皇帝が苦笑して茶髪の不敬男を宥めようとする。
【…ギリギリって何が?】
更に驚いた事に茶髪の不敬男が帝国語(多分さっき皇帝とピウスのやり取りで聞いた響きと似ているから帝国語に違いない)で何か言い出した!?
帝国に茶髪は居ないはずなのに…ハッ!
瞳は茶色じゃない!
何とも美しい赤紫――まるで…
【この犯罪級に魅力的な女性に落ちてしまうギリギリ、だ】
皇帝は小声でウィースに耳打ちする。
ウィースも耳打ちで返す。
【‥なッ!ギリギリ惚れずに済んだと!?】
【違う、自分を抑えられるギリギリだ】
【ちょ‥】
ウィースはピウスを背に隠し、皇帝に言い放つ。
【ピウス姫は俺のものだ!誰にも渡さない!初めて会った時からそう決めている!
俺の唯一、俺の最愛、俺の永遠、俺の全てだ!
たとえじーさんだろうと手を出すつもりなら俺は命懸けで戦い必ず勝利する!】
皇帝を見据えての大宣言。
目を丸くした皇帝はクク、と笑い――
【驚いたな。我の可愛い孫は全てに於いて優秀なのにこと恋愛に関してだけはからきし駄目だったはずではなかったか?今までどこにその情熱を隠していた?――あぁ、いや、その美しい人に引き出されたのだな…私がアマータ嬢と出会った時と同じ…
…ところで思いっきり思いの丈を叫んでくれたがピウス姫は帝国語が堪能だぞ?】
【エ!?】
遅く来た為、自分達しか帝国語は分からないはずと思い込んでいたウィース。
ギギギと背に隠したピウスを振り返れば。
【‥ッ!‥】
耳まで真っ赤にして俯くピウスの姿に心臓を撃ち抜かれる。
【‥ピウ‥】
【ありがとうございます…】
【‥ゥッ‥】
震える声でお礼を言われ胸を抑えるウィース。
可愛いの限界を超えている!
【あ、あの…驚きました。皇帝陛下のお孫さんだったのですね?…でも、それにしては髪色が…】
そう。
実は『何か似てる』とは思っていたピウス。
だが、もし皇帝の子孫なら白銀髪でなければならない。
瞳はそっくりのオーキッドパープルではあるが…
【え!?皇帝陛下って…じーさんが!?】
【ああ、髪色か。ハハハ、そうだったな】
【じーさん!?じーさんが皇帝!?嘘だろ!?俺聞いてない‥】
【戻そうか】
皇帝がそう言ってウィースに手をかざすと――
【――まぁ!】
「茶髪男の髪が!」
「――え!?そうすると…」
――皇帝陛下と全く同じ色だッ!――
その意味に気付いた者達が震える。
『総毛立つ』、というヤツ。
【え?なに?どうなってる?】
口に両手をあてて驚くピウスに不安になるウィース。
じーさんに手をかざされた瞬間、頭が光に包まれ熱くなった…
ま、まさかつるっ禿げ…いや大丈夫だ。髪はある…
恐る恐る手を頭に持って行き髪があるのを確認してホッとするウィース。
【今、ウィースさんの髪はとても美しい白銀髪に変わっています――そうすると益々皇帝陛下に似ているわ…親子の様…でも祖父孫ですのね…】
【え!?俺の『突然変異の茶髪』が!?ちょ、じーさん?】
【ウィースさんはお祖父様が皇帝陛下だと知らなかったのね?】
【知らなかった…じーさんの事は『やんごとない立場』としか聞いてない…第一、皇帝なんて忙しい立場の人間だろ?じーさんはちょいちょいウチに食事に来ては父上と喧嘩してたから――考えも及ばなかった…本当なのか…】
自分の髪を1本引き抜き白銀色を確認したウィースが胡乱な眼を祖父に向ける。
【幸か不幸か本当だ。お前の髪は私が魔法で変えていた。私の血筋と知れれば生命の危険があるし…平民として生きるのには邪魔でしかないからな。瞳の色も変える事は出来たが…戻す時に失明する恐れがあったから瞳はそのままにした】
【サラッと言ったけど…魔法が使えるのか!?】
【私の血筋はそうだ。お前の父親も使える】
【父上が…知らなかった…ハッ!俺が隠れたり何か誤魔化そうとした時必ず見破って来たのはまさか魔法で‥】
【お前も妖精殿で祝福を受ければ使えるぞ。我が血筋は各国の王族とは違い何度でも魔法を使える。今まではお前の父親に断られていたが…お前ももう成人しているし、何より守りたい人が出来たのなら考えてみると良い。すぐにでも手配するぞ】
そう言われてピウスに視線を移すウィース。
ピウスは柔らかく微笑む。
『私は口出ししません。決めるのはあなたです』
の意だ。
と、突然。
「‥こっ、皇帝陛下、万歳!」
「皇子殿下、万歳!」
「20年前から行方不明となっておられた第一皇子殿下が見つかったのですね!」
「何と目出度い!」
「素晴らしい!」
会場中が割れんばかりに叫び膝をついて胸に手を当て頭を垂れて臣下の礼を取る。
「え!?いや俺は‥」
息子じゃなくて孫だと言いかけてハッと気付くウィース。
今ここで孫である事を明かしたら今までのような生活は出来なくなる!?
ピウス姫にまで危険が及ぶ!?
【覚悟を持って生きねばならない…それがお前の宿命だ、ウィース】
皇帝がそう言った後、公用語で。
「この者は私の孫だ‥」
「だが俺は平民だ!商会で働く1商人だ!だから俺には頭を垂れる必要はない!」
皇帝の声に被せてウィースが声を張る。
「な…何と!」
「親子ではなく祖父孫…」
「どう見ても親子にしか見えない…」
「皇帝陛下、若すぎ…」
(ソッチかい!?)と眉を寄せるウィースにピウスがころころと笑う。
春の女神が笑うので。
卒業パーティー会場はほっこりと温かな空気に包まれる――
*ちなみに2人の王妃は揃って気絶しており、会場外に運び出されている。
人々の予想に反して。
皇帝が苦笑して茶髪の不敬男を宥めようとする。
【…ギリギリって何が?】
更に驚いた事に茶髪の不敬男が帝国語(多分さっき皇帝とピウスのやり取りで聞いた響きと似ているから帝国語に違いない)で何か言い出した!?
帝国に茶髪は居ないはずなのに…ハッ!
瞳は茶色じゃない!
何とも美しい赤紫――まるで…
【この犯罪級に魅力的な女性に落ちてしまうギリギリ、だ】
皇帝は小声でウィースに耳打ちする。
ウィースも耳打ちで返す。
【‥なッ!ギリギリ惚れずに済んだと!?】
【違う、自分を抑えられるギリギリだ】
【ちょ‥】
ウィースはピウスを背に隠し、皇帝に言い放つ。
【ピウス姫は俺のものだ!誰にも渡さない!初めて会った時からそう決めている!
俺の唯一、俺の最愛、俺の永遠、俺の全てだ!
たとえじーさんだろうと手を出すつもりなら俺は命懸けで戦い必ず勝利する!】
皇帝を見据えての大宣言。
目を丸くした皇帝はクク、と笑い――
【驚いたな。我の可愛い孫は全てに於いて優秀なのにこと恋愛に関してだけはからきし駄目だったはずではなかったか?今までどこにその情熱を隠していた?――あぁ、いや、その美しい人に引き出されたのだな…私がアマータ嬢と出会った時と同じ…
…ところで思いっきり思いの丈を叫んでくれたがピウス姫は帝国語が堪能だぞ?】
【エ!?】
遅く来た為、自分達しか帝国語は分からないはずと思い込んでいたウィース。
ギギギと背に隠したピウスを振り返れば。
【‥ッ!‥】
耳まで真っ赤にして俯くピウスの姿に心臓を撃ち抜かれる。
【‥ピウ‥】
【ありがとうございます…】
【‥ゥッ‥】
震える声でお礼を言われ胸を抑えるウィース。
可愛いの限界を超えている!
【あ、あの…驚きました。皇帝陛下のお孫さんだったのですね?…でも、それにしては髪色が…】
そう。
実は『何か似てる』とは思っていたピウス。
だが、もし皇帝の子孫なら白銀髪でなければならない。
瞳はそっくりのオーキッドパープルではあるが…
【え!?皇帝陛下って…じーさんが!?】
【ああ、髪色か。ハハハ、そうだったな】
【じーさん!?じーさんが皇帝!?嘘だろ!?俺聞いてない‥】
【戻そうか】
皇帝がそう言ってウィースに手をかざすと――
【――まぁ!】
「茶髪男の髪が!」
「――え!?そうすると…」
――皇帝陛下と全く同じ色だッ!――
その意味に気付いた者達が震える。
『総毛立つ』、というヤツ。
【え?なに?どうなってる?】
口に両手をあてて驚くピウスに不安になるウィース。
じーさんに手をかざされた瞬間、頭が光に包まれ熱くなった…
ま、まさかつるっ禿げ…いや大丈夫だ。髪はある…
恐る恐る手を頭に持って行き髪があるのを確認してホッとするウィース。
【今、ウィースさんの髪はとても美しい白銀髪に変わっています――そうすると益々皇帝陛下に似ているわ…親子の様…でも祖父孫ですのね…】
【え!?俺の『突然変異の茶髪』が!?ちょ、じーさん?】
【ウィースさんはお祖父様が皇帝陛下だと知らなかったのね?】
【知らなかった…じーさんの事は『やんごとない立場』としか聞いてない…第一、皇帝なんて忙しい立場の人間だろ?じーさんはちょいちょいウチに食事に来ては父上と喧嘩してたから――考えも及ばなかった…本当なのか…】
自分の髪を1本引き抜き白銀色を確認したウィースが胡乱な眼を祖父に向ける。
【幸か不幸か本当だ。お前の髪は私が魔法で変えていた。私の血筋と知れれば生命の危険があるし…平民として生きるのには邪魔でしかないからな。瞳の色も変える事は出来たが…戻す時に失明する恐れがあったから瞳はそのままにした】
【サラッと言ったけど…魔法が使えるのか!?】
【私の血筋はそうだ。お前の父親も使える】
【父上が…知らなかった…ハッ!俺が隠れたり何か誤魔化そうとした時必ず見破って来たのはまさか魔法で‥】
【お前も妖精殿で祝福を受ければ使えるぞ。我が血筋は各国の王族とは違い何度でも魔法を使える。今まではお前の父親に断られていたが…お前ももう成人しているし、何より守りたい人が出来たのなら考えてみると良い。すぐにでも手配するぞ】
そう言われてピウスに視線を移すウィース。
ピウスは柔らかく微笑む。
『私は口出ししません。決めるのはあなたです』
の意だ。
と、突然。
「‥こっ、皇帝陛下、万歳!」
「皇子殿下、万歳!」
「20年前から行方不明となっておられた第一皇子殿下が見つかったのですね!」
「何と目出度い!」
「素晴らしい!」
会場中が割れんばかりに叫び膝をついて胸に手を当て頭を垂れて臣下の礼を取る。
「え!?いや俺は‥」
息子じゃなくて孫だと言いかけてハッと気付くウィース。
今ここで孫である事を明かしたら今までのような生活は出来なくなる!?
ピウス姫にまで危険が及ぶ!?
【覚悟を持って生きねばならない…それがお前の宿命だ、ウィース】
皇帝がそう言った後、公用語で。
「この者は私の孫だ‥」
「だが俺は平民だ!商会で働く1商人だ!だから俺には頭を垂れる必要はない!」
皇帝の声に被せてウィースが声を張る。
「な…何と!」
「親子ではなく祖父孫…」
「どう見ても親子にしか見えない…」
「皇帝陛下、若すぎ…」
(ソッチかい!?)と眉を寄せるウィースにピウスがころころと笑う。
春の女神が笑うので。
卒業パーティー会場はほっこりと温かな空気に包まれる――
*ちなみに2人の王妃は揃って気絶しており、会場外に運び出されている。
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