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62 それぞれのそれから
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1週間後。
アッロガーンス川から死体が上がる。
頭部がメチャメチャに殴り潰された若い女性と青い髪に灰色の瞳の赤ちゃん…
何かの力が働いて『旅行中の身元不明の親子の無理心中』とされた――
その数日後、アッロガーンス宮殿内では王太子が王に剣を向けている。
「青い髪に灰色の瞳は旅行中の男だったそうです。誘われたから寝たと。断るのは可哀想だからと。あの女は誰にでも優しい女だったんですよ…それなのにちゃんと調べもせず私の妃にしたのは父上だ…私は拒否したのに…父上の誤った判断のせいです…私はあんなアバズレのせいで私の最愛を永遠に失ってしまった…」
「そ、それならばピウス姫を探し出して連れて来ればいい!そ、そして無理矢理にでも妃にすればいいのだ!」
「ピウス姫は平民の商人とこの国を出て行きました…何と祖父に皇帝を、父に第一皇子を持つ白銀髪の平民ですよ?…ハハ…もう私には手出し出来ない…ハハ…」
「お、落ち着けテナークス!」
「…ハハハ…」
「テナークスッ…」
そんなアッロガーンスから遠く離れたディニタース帝都広場では。
【大丈夫かい?疲れてないかい?少し休もうか?あぁ、段差に気を付けて‥】
【ありがとう、大丈夫よ。帝都って凄いのねぇ、毎日がお祭りみたい】
【そうだね。広場では毎日何かしらの市が立つからね。さ、そこに座ってホットドリンクでも飲もうか…ん?何かおかしいかい?】
【ウィースさんがこんなに過保護だなんて知らなかったわ。生まれる前からこれじゃ、生まれてからはどうなっちゃうのかしら?】
そう言ってクスクス笑うピウスのお腹は大きい。
赤ちゃんがいるのだ。
【――と言われても実は正直まだ父親の感覚は無い。俺の心配はピウス姫、大切な君にだけ向かってるんだ】
照れ臭そうに笑うウィースは赤ちゃんのパパだ。
夫の笑顔が可愛くて頬を染めるピウスも照れ臭さを誤魔化すように注意する。
【もう姫はやめてね?私は平民になったのだしもうママなのよ?】
【男にとって愛する女性は永遠にお姫様だよ。君はママになってもおばあちゃんになってもずっと俺の姫だ】
お道化てくれればまだいいのに、真剣に言って来るからピウスは耳まで赤くなってしまう。
そんな初々しい夫婦に――
【帝都一のカップルのお二人へこちらのドリンクをぜひ。お店のサービスです】
【素敵なご夫婦にこの花束を。勿論サービスです!どうぞお受け取りください】
【ボンボンショコラはお好きでしょうか?ご賞味いただけると幸いですわ!】
二人の周りにはすぐに人が集まり何だかんだと祝福してくれる。
白銀髪にオーキッドパープルの瞳で帝都をうろつけばそれは当然かもしれないし。
情報が早い帝都民は皇帝陛下の孫と妖精に愛されし元王女の結婚を知ってるし。
実は皇帝の孫だの妖精に愛されし者だのそんな事はさほど関係なく。
この若夫婦はキラキラ輝く幸せオーラを放っており、自然と人が惹きつけられてしまうのだ。
(お母様…私今、とても幸せよ)
ピウスは心の中で亡き母に語り掛ける。
(お母様が白銀のドレスに忍ばせてくれた手紙のお蔭よ)
『王女に恋は必要無いわ。』から始まる母からの最後の手紙。
『だから恋を避けなさい――』の後には続きがある。
『だけどもし。
恋を避けてもそれでも恋に落ちてしまったら――
アッロガーンス川から死体が上がる。
頭部がメチャメチャに殴り潰された若い女性と青い髪に灰色の瞳の赤ちゃん…
何かの力が働いて『旅行中の身元不明の親子の無理心中』とされた――
その数日後、アッロガーンス宮殿内では王太子が王に剣を向けている。
「青い髪に灰色の瞳は旅行中の男だったそうです。誘われたから寝たと。断るのは可哀想だからと。あの女は誰にでも優しい女だったんですよ…それなのにちゃんと調べもせず私の妃にしたのは父上だ…私は拒否したのに…父上の誤った判断のせいです…私はあんなアバズレのせいで私の最愛を永遠に失ってしまった…」
「そ、それならばピウス姫を探し出して連れて来ればいい!そ、そして無理矢理にでも妃にすればいいのだ!」
「ピウス姫は平民の商人とこの国を出て行きました…何と祖父に皇帝を、父に第一皇子を持つ白銀髪の平民ですよ?…ハハ…もう私には手出し出来ない…ハハ…」
「お、落ち着けテナークス!」
「…ハハハ…」
「テナークスッ…」
そんなアッロガーンスから遠く離れたディニタース帝都広場では。
【大丈夫かい?疲れてないかい?少し休もうか?あぁ、段差に気を付けて‥】
【ありがとう、大丈夫よ。帝都って凄いのねぇ、毎日がお祭りみたい】
【そうだね。広場では毎日何かしらの市が立つからね。さ、そこに座ってホットドリンクでも飲もうか…ん?何かおかしいかい?】
【ウィースさんがこんなに過保護だなんて知らなかったわ。生まれる前からこれじゃ、生まれてからはどうなっちゃうのかしら?】
そう言ってクスクス笑うピウスのお腹は大きい。
赤ちゃんがいるのだ。
【――と言われても実は正直まだ父親の感覚は無い。俺の心配はピウス姫、大切な君にだけ向かってるんだ】
照れ臭そうに笑うウィースは赤ちゃんのパパだ。
夫の笑顔が可愛くて頬を染めるピウスも照れ臭さを誤魔化すように注意する。
【もう姫はやめてね?私は平民になったのだしもうママなのよ?】
【男にとって愛する女性は永遠にお姫様だよ。君はママになってもおばあちゃんになってもずっと俺の姫だ】
お道化てくれればまだいいのに、真剣に言って来るからピウスは耳まで赤くなってしまう。
そんな初々しい夫婦に――
【帝都一のカップルのお二人へこちらのドリンクをぜひ。お店のサービスです】
【素敵なご夫婦にこの花束を。勿論サービスです!どうぞお受け取りください】
【ボンボンショコラはお好きでしょうか?ご賞味いただけると幸いですわ!】
二人の周りにはすぐに人が集まり何だかんだと祝福してくれる。
白銀髪にオーキッドパープルの瞳で帝都をうろつけばそれは当然かもしれないし。
情報が早い帝都民は皇帝陛下の孫と妖精に愛されし元王女の結婚を知ってるし。
実は皇帝の孫だの妖精に愛されし者だのそんな事はさほど関係なく。
この若夫婦はキラキラ輝く幸せオーラを放っており、自然と人が惹きつけられてしまうのだ。
(お母様…私今、とても幸せよ)
ピウスは心の中で亡き母に語り掛ける。
(お母様が白銀のドレスに忍ばせてくれた手紙のお蔭よ)
『王女に恋は必要無いわ。』から始まる母からの最後の手紙。
『だから恋を避けなさい――』の後には続きがある。
『だけどもし。
恋を避けてもそれでも恋に落ちてしまったら――
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