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63 母からの最後の手紙
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『王女に恋は必要無いわ。』から始まった母からの最後の手紙。
『だから恋を避けなさい――』の続きにはこう綴られている。
『だけどもし。
恋を避けてもそれでも恋に落ちてしまったら――
それが誰かから奪う恋でないなら
恋を貫きなさい。
私は間違えた。
恋から逃げてしまった。
後悔しているのよ。
愛するピウス、
あなたには間違えて欲しくない。
だから断言するわ。
人生は
恋をする為にあるの。
あなたは
国の為でも
家族の為でもない
ただ恋をする為に在るのよ』
15才で初めてこの手紙を読んだ時…
正直、ピウスにはピンと来なかった。
恋など知らない、まして婚約者がいるのだから今後するはずもないと信じていた。
どうすることも出来ない感情に戸惑う日が来るなんて知らなかったのだ。
そんなピウスに思いもよらない出会いがあったのは――
『君は何て冷たい女なんだ!
そんな女は要らない!
いくら美しくたって冷たい女になど何の魅力も無い!
君とは終わりだ!
私は他を探す!
優しい女を探す!
金輪際、君の顔など見たくない!』
――と。
丁度王太子に別れを宣言されたばかりの休日。
今後は一切の交流(と言うか呼び出し)が無くなるのねと。
どこかホッとして正式な婚約解消の知らせを待ち始めたピウスはいつもの様に修道院の炊き出しに出掛けた。
食材は大きな商会が届けておいてくれる。
だけどその日は届いていなくて。
手持ち無沙汰で待っていたら慌ただしく荷馬車がやって来て。
『すいやせん、急病の配達員の代わりにお二人にお手伝い頂くなんて…後は俺達が運び込みますからどうぞ休んでて下さい』
『何言ってる。皆でやった方が早いだろ』
『そりゃそうですがお二人に肉体労働なんて‥あぁ、アクーメン様、そんな事俺がや‥あわわ、ウィース様!いけません、それは重いんで‥』
『だったら尚更俺が運ぶべきだろ。ただでさえ遅れて修道女達に迷惑かけてるんだ、急ぐぞ』
5~6人の商会の人達が何とも賑やかに食材をテントに運び入れてくれた。
その中心にウィースさんがいた。
トクンッ
跳ねる心臓に私は慌てて料理に集中した。
駄目、避けなきゃ――
意識しちゃ駄目!
必死に彼から気持ちを逸らすのに彼は視線を逸らせてくれない――
「あの、緊張するので見ないでください」
「‥ハッ‥あ、ごめん…君が」
「私が?」
「君が好きだ!」
「‥ッ!!」
まだ会ったばかり。
お互い名前も知らない。
なのに何てことを言うの?
驚いて視線を向けた先には大きな体を固くして真っ赤になっていた彼。
どこか少年の様なあどけなさが残る表情のなか
オーキッドパープルの瞳だけは揺るぎなく強く
美しく輝いていて――
避けられなかった
恋に落ちてしまった――
『だから恋を避けなさい――』の続きにはこう綴られている。
『だけどもし。
恋を避けてもそれでも恋に落ちてしまったら――
それが誰かから奪う恋でないなら
恋を貫きなさい。
私は間違えた。
恋から逃げてしまった。
後悔しているのよ。
愛するピウス、
あなたには間違えて欲しくない。
だから断言するわ。
人生は
恋をする為にあるの。
あなたは
国の為でも
家族の為でもない
ただ恋をする為に在るのよ』
15才で初めてこの手紙を読んだ時…
正直、ピウスにはピンと来なかった。
恋など知らない、まして婚約者がいるのだから今後するはずもないと信じていた。
どうすることも出来ない感情に戸惑う日が来るなんて知らなかったのだ。
そんなピウスに思いもよらない出会いがあったのは――
『君は何て冷たい女なんだ!
そんな女は要らない!
いくら美しくたって冷たい女になど何の魅力も無い!
君とは終わりだ!
私は他を探す!
優しい女を探す!
金輪際、君の顔など見たくない!』
――と。
丁度王太子に別れを宣言されたばかりの休日。
今後は一切の交流(と言うか呼び出し)が無くなるのねと。
どこかホッとして正式な婚約解消の知らせを待ち始めたピウスはいつもの様に修道院の炊き出しに出掛けた。
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だけどその日は届いていなくて。
手持ち無沙汰で待っていたら慌ただしく荷馬車がやって来て。
『すいやせん、急病の配達員の代わりにお二人にお手伝い頂くなんて…後は俺達が運び込みますからどうぞ休んでて下さい』
『何言ってる。皆でやった方が早いだろ』
『そりゃそうですがお二人に肉体労働なんて‥あぁ、アクーメン様、そんな事俺がや‥あわわ、ウィース様!いけません、それは重いんで‥』
『だったら尚更俺が運ぶべきだろ。ただでさえ遅れて修道女達に迷惑かけてるんだ、急ぐぞ』
5~6人の商会の人達が何とも賑やかに食材をテントに運び入れてくれた。
その中心にウィースさんがいた。
トクンッ
跳ねる心臓に私は慌てて料理に集中した。
駄目、避けなきゃ――
意識しちゃ駄目!
必死に彼から気持ちを逸らすのに彼は視線を逸らせてくれない――
「あの、緊張するので見ないでください」
「‥ハッ‥あ、ごめん…君が」
「私が?」
「君が好きだ!」
「‥ッ!!」
まだ会ったばかり。
お互い名前も知らない。
なのに何てことを言うの?
驚いて視線を向けた先には大きな体を固くして真っ赤になっていた彼。
どこか少年の様なあどけなさが残る表情のなか
オーキッドパープルの瞳だけは揺るぎなく強く
美しく輝いていて――
避けられなかった
恋に落ちてしまった――
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