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2巻
2-3
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◆
俺が見守る前で、セツはゴブリンジェネラルを仕留めた。
「いやぁ、立派になって……セツ! よくやったな!」
「ワフッ!」
セツは敵と己の力量を把握して、自分なりに勝つ方法を考え、実行した。
ただ強いだけでは最強などと呼ばれはしないだろう。
この頭の良さこそが、フェンリルが最強種と呼ばれる所以なのかもしれない。
いつの間にか、部屋の中央に宝箱が出現していた。あれが報酬か?
その階層のボスを倒すと、宝箱がランダムで一つか二つ出るそうだ。
中身も倒した時間や人数などで変わるらしい。
「早速見てみよう」
宝箱に触れると……赤い魔法書と、長さ一メートルほどの布だった。
「ウインドカッターの魔法書か。そしてこっちは布……よくわからないが、途轍もなく伸びるな。こっちはうーん、良いのか悪いのか……後でノイス殿に聞いてみるか。セツ、ひとまず戻ろう」
「キャン!」
出入口は一個所しかなかったので、入ってきた扉から出ると、いつの間にかワープゾーンの近くに、下層へ続く階段が現れていた。
どうやら、倒した者が部屋から出ると、出現する仕掛けのようだ。
「さて、どうするか。セツ、疲れてるか?」
「ワフッ!」
「まだまだ行けそうな顔だな。よし、下見だけしておくか」
そうと決まったら、早速階段を下りていく。
そこには、他の階層に似た平地が広がっていたが、周囲には大小様々な岩が転がっており、中には岩山と呼べるようなものもそびえている。
「岩山がある以外は普通っぽいな。とりあえず、行ってみるか」
「キャン!!」
俺とセツは、警戒しながら歩いていく。
さて、俺の予想では、近くに何か潜んでいそうだが……セツは気づくかな?
セツの耳が、ピクッと動く。
その瞬間に、岩陰から何か黒い影が飛び出してきた。
セツはすぐに反応し、何者かの攻撃を避ける。
「こいつは……黒ヒョウか……? 見たことがない奴だな」
そこには、ヒョウを一回り太くしたような生き物がいた。
ダンジョン内では、階層のレベルに合わせて、世界中の魔物がランダムに出現するらしい。
知らない魔物が出てきても不思議ではない。
セツとヒョウが互いに唸り声を上げ、睨み合う。
この十階から二十階は、基本的にはDからD+のステータスの魔物が出るらしい。
そして、ごく稀にCクラスの魔物も出現するそうだ。
ということは、奴のステータスはセツと同等か、それより少し低いくらいだろう。
ヒョウが動き出し、その鋭い爪でセツに迫る。
セツも爪でこれを迎撃し、爪と爪が連続して交差する。
どうやら、成長した今の自分の身体を試しているのかもしれない。
「ゲレレ!!」
助走をつけて、ヒョウが勝負に出た。
その瞬間、セツが氷のブレスを放ち――ヒョウを捉える。
以前なら、ブレスは相手の一部分だけ凍らせる程度の威力だったが、今の一撃でヒョウの身体の半分ほどを凍らせた。前よりも範囲、威力ともに上がっているようだ。
身体を半分氷漬けにされ、動けなくなったヒョウにセツが飛びかかる。
凍った半身をセツの爪の一撃で叩き割られ、ヒョウは絶命した。
「セツ、良い戦いだったぞ。ブレスの威力も上がったしな」
「キャン!」
その後も、何匹かヒョウが出てきたが、セツは難なく倒していく。
すると、今度は上空からハーピーが襲ってきた。
「セツ、どうする? 俺がやるか?」
セツは首を横に振る。どうやら、自分でやるようだ。
セツは駆け出し、近場の岩を軽快な動きで登っていく。
俺も跳躍して岩を登るが、まだ五メートルほどハーピーの方が高い位置にいる。
「さて、ここからどうする?」
すると、セツが助走をつけて走り出し、岩の上から跳んだ。
しかし、どう考えても届かない距離だ。
ハーピーが着地する瞬間を狙うのか、セツは足の爪を立て、着地するような姿勢をとる。
次の瞬間――セツは自分の落下地点に向け、氷の塊を作り出した。そして、その氷塊を足場にしてさらに跳躍する。
突然迫ってきたセツに驚き、ハーピーは体勢を変えようとするが……もう遅い。
セツの爪が、ハーピーの胴体を切り裂いた。
セツは綺麗に着地し、ハーピーは大きな音を立てて地面に墜落した。
「セツ! 凄いな! 氷を足場に使うとは!」
「キャン! キャン!」
セツは俺の足元を走り回り、ご機嫌な様子だ。
まったく、機転といい、威力といい、申し分ない。
嬉しいが、こうも成長が早すぎるというのも、少し寂しいかも。
その後すぐに階段を発見したので次の階層へと下りていくと、真っ暗な場所に出た。
「ん? 暗闇のフィールドのようだな。セツ、見えるか?」
「ワフッ!」
「うん、平気そうだな。どれ、俺も」
俺のステータスなら、見えるはずだ。
意識を集中し、目を凝らすと……徐々に周囲が見えてきた。
そこは、屋外空間だった前の階層から一転して、洞窟の中だった。天井も低く、せいぜい二メートル半くらいしかなさそうだ。これでは大剣なんて振り回せない。
「セツ、ごめんな。今日は、ここまでにしよう。俺の武器を増やす必要がありそうだ」
セツは「なんで行かないの?」と首を傾げていたが、理由を聞いて納得してくれたようだ。
俺達はそのまま引き返し、再びワープゾーンに乗ってダンジョンを出た。
予定より早かったので、セツも疲れていないが……今日は良くやったから、帰りも抱っこしてやることにする。
「さて……新しい武器を調達しないとな。俺が扱える物だと……槍が良いか」
もちろん、俺のステータスなら素手で殴るだけで、魔物は飛び散るだろう。
だが、それは勘弁願いたいところだ。幸い、祖父さんから槍も教わっている。
槍も狭い空間では扱いが難しいが、突き主体の攻撃にすれば、洞窟の中であっても、リーチを活かして有利に立ち回れるだろう。
そんなことを考えているうちに、ナイゼルに到着した。
まずは広場で昼食にする。今日のメニューはサンドイッチだ。
しかし、俺の一番の好物であるタマゴサンドはない。
「そういえば、マヨネーズも見ないな……もしかして、ないのか? 確か、こっちでは卵は貴重な食材と聞いたな。卵を産む魔物も少ないらしいし」
肉系ばかりだから、そろそろ魚系の料理も食べてみたい。タルタルソースなんかにしても合うだろうな。
マヨネーズもそうだが、色々と調べてみなくては。一つずつ地道にやっていくしかないか。
ランチを済ませた俺達は、ノイス殿の店に立ち寄った。
「こんにちは、ノイス殿。実は……」
俺は、洞窟の中で立ち回るための武器を探していることを伝えた。
「確かに、大剣では小回りが利かないか。となると……」
ちなみに、この前の食事会にいた人達には、俺が異世界人であることは伝えてある。
「この世界の槍は、どのような形が多いのですか?」
「そうだな、一通り見せてやる。おい、ちょっと待ってろ」
ノイス殿は奥に行き、いくつか武器を持ってきてくれた。
「まあ、大体こんな感じだな」
「素槍タイプ、鎌槍タイプ、大身槍タイプ、斧としても使えるハルバードタイプですか」
うーん、素槍タイプが一番使いやすいか。だが、俺の力加減が難しいかもな……耐久度も低いだろうし。
お、この大身槍、有名な蜻蛉切みたいでカッコいいけど、高いな。
「ヒュウガ、値段で悩んでいるのか?」
「いや、まあ……これが欲しいのですが、手持ちが足りないから、また今度に……」
俺が出直そうとすると、ノイス殿は顎に手をやって少し考える様子を見せた。
「ふむ。昨日の肉と酒は、実に美味かったな……あんな美味い物は初めてだった。お主は異世界人だと言ったな? まだ、他にも美味い料理が作れるのか?」
「ええ、それはもちろんです。さっきも、そのことを考えていました」
卵が手軽に手に入れば、マヨネーズを作って、タルタルソースとか、酢を入れたフレンチマヨネーズなんかにもできるし、ソースオランデーズなども作れるだろう。
「ならば持っていけ。金はいらん。これは昨日の礼だ。そして新たな料理ができたら、また食わせろ。ワシには鍛冶しかできん。ワシは鍛冶を、お主は料理。等価交換だ」
「いやいや! 手間と素材を考えたら、等価ではないと思うのですが?」
「気になるなら、武具に使う素材を持ってくるがいい。何より、ワシは気に入った奴に、自分の作った武器を使ってほしい」
「ノイス殿、ありがとうございます……」
「ふん、礼などいらん。ワシは、ワシのやりたいようにしている。では、調整をしてくる。それまで、その辺をブラブラしてろ」
「本当にありがとうございます! あっ、すみません、ついでにこれを……」
ダンジョンで手に入れた伸びる布のことを思い出し、ノイス殿に渡す。
「ふむ、この世界のものではないな。女神が作りしダンジョンアイテムの一種か。伸びる……戻る……何に使うんだ?」
「いや、俺もどうしたものかと困っていまして……いや、待ってください」
そこで、俺の脳裏にある考えが浮かぶ。
「では……こういう物にできますか?」
「ほう? 相変わらず変なことを考える奴だ。だが面白い。そちらもやっといてやる」
「よろしくお願いします!」
話を終えた俺達は、一度店を出て商店街へ向かう。
「早急に素材探しをしよう。でないと、俺の気が済まない。エギルが依頼を一緒に受けてくれると言うから、後で相談してみるか」
セツは、早く早く! とでも言いたげに、前を歩く。
「はいはい、行きますよ。相変わらず、お前は商店街が好きだな」
あそこに行けば可愛がられるし、おやつも貰えるからなぁ。
商店街に着くとみんなが寄ってきて、この前のローストビーフのお礼を言われた。
どうやら、みんな喜んでくれたようだな。
お礼の返事をしながら、俺はロダンさんのもとに向かう。
「おう! ヒュウガ! どうした!?」
「ロダンさん、配ってくれてありがとうございます。今日は、この前皆さんを呼べなかったので、挨拶に来ました」
「そうか! 相変わらず、律儀な奴だな! まあ、それがヒュウガの良いところだな!」
「自分では普通だと思っているのですが……何かをしてもらったら、お礼をすることは」
「いやいや。ヒュウガほどの力を持つ者は、横柄な連中が多い。それこそ、お礼を言ったり、謝ったりすることができない奴がな」
「そういうものですか……」
「ああ、気をつけろよ? ヒュウガは人が好いからな。世の中、善意を仇で返されることもある」
「ご助言、ありがとうございます。心に留めておきますね」
「ああ、ところで……アレは、いいのか?」
俺は、ロダンさんが指さす方を見る。
そこには、住民に囲まれたセツがいた。いや、その表現は正しくないか……
「セツちゃん! こっち向いてー!」
「セツ! うちの肉食っていきな!」
「きゃー! 可愛い! 大きくなってきたけど、それはそれでいいー!」
「ほら、そこ! 割り込みでお触りは禁止だよ! セツちゃんが困ってしまうだろ!」
「キャン!!」
えっと、目に映る光景を説明すると……握手会? いや、この場合はモフモフ会?
とりあえず、セツの前に人々が列を作っていた。
そしてナデナデしたり、モフモフしたりしている。
さらに、それを取り締まる人が何人かいる……ファンクラブか!
いや、称号に「みんなのアイドル」とあるから、間違っていないのか?
どうしようかと困惑していると、向こうから兵士達が走ってきた。
「マズイ、ロダンさん! 俺、行きますね! できたらフォローお願いします!」
「いや! 待て! ヒュウガ! アレは平気だ!」
すぐに撤収しようと駆け出す俺を、ロダンさんが呼び止めた。
「何が平気なんですか!? いくらテイマー登録しているとはいえ、街の治安を守る兵士が来たんですよ!? 捕まらないにしても、心証は悪いでしょ!?」
「いいから落ち着け! よく見ろ!」
言われた通りに兵士達を見ていると、驚くべき光景が目に入った。
「こら! お前達! なっていないぞ! これだから素人は! 行くぞ、皆の者!」
「おう! 本職の力見せてやるぜ!」
兵士達が慣れた感じで人々を誘導していく……!
なんだ!? 一体俺は何を見せられているんだ!?
そして、セツを愛でる人々を、他の人に迷惑にならないように、綺麗に整列させた。
そして、それを兵士達が監視し、セツを守っている。
さながら、その光景は人気アイドルを守るボディガードのようだ。
「……はい?」
「その顔は知らなかったようだな? セツはな、最近一人でここに来るんだよ。それで、いつの間にかこうなっていた。混乱を見かねた兵士達が整理を始めたが、気づいたらあいつらもセツのファンになってしまったようだ」
確かに、最近は自立を促すために、一人にする機会も増やしていたが……まさか、こんなことになっているとは。セツが悪いわけではないから叱るのもおかしいし、住民達の気持ちもわかるから強く言えない。
全てを終えたセツが、俺のもとへ戻ってきた。
「クゥン?」
セツはどうしたの? とでも言うように首を傾げる。
俺は色々言おうとしたけど……もういいや……考えるのをやめよう。
セツは可愛い! みんなのアイドル! それでいいか。
ナデナデ会? を終えたセツを連れて歩いていると……
何やら難しい顔で訓練場の前にいるユリアを発見した。
「ユリア? 平気ですか?」
「キャン!」
何度か声をかけると、ユリアはようやく気づいてくれた。
「ヒュウガ? おっと、セツもいたんだな。すまない……少しイラついていてな」
「なかなか大変なお仕事だとは聞いています」
詳しくは知らないが、彼女は兵士のまとめ役や、上との橋渡し役、他にもこの辺りの村や町の巡回などもしているそうだ。もっとも、彼女の周りの人の態度を見ると、単なる中間管理職程度の身分ではないとは思うが。
「うむ……少し、話を聞いてもらえるか、ヒュウガ?」
「もちろん、俺で良ければ」
しばしの沈黙の後、ユリアは大きく息を吸って、切り出した。
「実はな……私は、この国の王女なんだ――今まで黙っていて、すまなかったな」
「へぇ、そうなんですね。でも、それがどうかしたのですか?」
思っていた以上に大物だった。
しかし、正直言って、王族とか言われてもピンとこない。高貴で偉いというのはわかるが、日本でのそれは象徴的なものだったし。
「何!? 王女だぞ!? 自分で言うのもなんだが、王家の者だぞ!?」
「やはり高貴な家の方でしたか。それは予想していました。俺が聞きたいのは、一つだけです――本当の身分を知った以上、態度を改める必要がありますか?」
「ふふ……ふふふ……そうか、そう言ってくれるか。いや、そのままで頼む。まさか、普通扱いがこんなに嬉しいとは」
よくはわからないが、ユリアは喜んでいるみたいだ。
「そうだ! 今、時間はあるか!?」
「え? ……はい、大丈夫ですよ。今、ノイス殿に武器の調整をしてもらっているので」
「では頼みがある! 今から稽古をつけてくれないか!?」
ぐいぐい来る! ちっ、近い‼
「わ! わかりましたから!」
「そうか! では、行くぞ!」
ユリアは目をキラキラさせて、俺の手を引っ張っていく。こういう子供っぽいところが、意外性があって可愛いと思う。
訓練場の中に入り、模擬剣を持って向かい合う。
「どうしますかね? とりあえず、打ち合いでもしますか?」
相当ストレスが溜まっているようだし、こういう時は思いっきり動いた方がいい。
「そうだな。では、お願いする」
「クゥン?」
「セツは、向こうで遊んでなさい。皆さん、待っているからな」
先程から女性達からの視線を感じるし。
見ているのは俺ではなく、アイドルと言われるうちの息子です。
セツを自由にさせると、早速女性達の黄色い声が響いてくる。相変わらず、大人気なこと。
「では、どこからでもかかってきてください」
俺は訓練に意識を切り替える。惚れた女性が相手でも、訓練には私情を挟んではいけない。何より、本気で強くなりたいユリアに失礼だ。
「では……行くぞ!!」
ユリアは上段に構えた剣を、そのまま振り下ろしてくる。
バシィ!! と心地いい音が響く。
「良い打ち込みです! ただ、腕を振り上げるのと当時に、踏み込む足も意識してください」
「む……こうか!」
「そうです! 腕と足を連動させて、身体全体で剣を振るってください。そうすれば威力は上がります」
「身体全体を使う。そうか、わかってきた気がする……こうか!」
その動作を、何度か繰り返す。
「そうです! その感覚を忘れないように!」
「はい! ……おっと、つい教官に返事をする時みたいになってしまった。ヒュウガは教えるのが上手いが、そういう経験があるのか?」
「ええ、多少は」
互いに照れくさくなって、少し笑い合う。
「なるほど、道理で慣れているわけだな。よし……気を取り直して続きをする」
「では、少し趣向を変えてみましょう。俺が攻撃を仕掛けます。それを受け止める、または受け流してください」
「わかった、やってみよう。全力を出してくれとは言わないが……」
「ええ、わかっています。女性だからといって、手心は加えません」
「ふふ、ヒュウガは良い男だな」
これは俺にとっても良い訓練になる。最近、力加減を調整できるように練習していたからだ。まずは、三割ほどを意識して、剣を振るう。
「くうぅ!」
「それでは駄目です! 剣筋を見てください! 腰が引けてます!」
「む……こうか!」
「衝撃を全身に散らして、受け流してください! 身体の下に受け流すイメージです!」
「身体の下……衝撃を受け流す……」
「そうです! できたら剣を受ける瞬間に、腕を僅かに下げてください! そうすることで衝撃が逃げます!」
打ち込みと受け流し、共に剣道の基本だ。この二つを極めることが、強くなる近道だ。
「受ける瞬間……下げる……確かに! さっきより軽く感じる!」
「ほら! 気を抜かない! 集中!」
「は、はい!」
十五分ほどが経過したところで、一度やめる。
「とりあえずは、こんなところでしょう」
「ハァ……ハァ……は、はい! ありがとうございました!」
「はは、なんだが本当に教官になった気分です」
「いや……実際にヒュウガは向いていると思うぞ? 教えるのも上手いし、こっちをやる気にさせてくれる」
「そうですか……祖父さんが若い頃に道場をやっていたんです。若い世代の人がいなくなって、やめたそうですが。でも、そういうのも良いかもしれないですね」
「確か、ハンターギルドの依頼にもその手の訓練系のものがあったな」
「あっ、なるほど。新人教育みたいなものですか」
「そういうことだ。では、私も仕事に戻るとしよう。ありがとうございました、教官」
ユリアはそう言って、にっこり微笑んだ。
「はい、お疲れ様でした。サボらずに、研鑽を積むように!」
こうして、ユリアとの訓練は終わった。
これで、少しは気が晴れたならいいのだが……
俺が見守る前で、セツはゴブリンジェネラルを仕留めた。
「いやぁ、立派になって……セツ! よくやったな!」
「ワフッ!」
セツは敵と己の力量を把握して、自分なりに勝つ方法を考え、実行した。
ただ強いだけでは最強などと呼ばれはしないだろう。
この頭の良さこそが、フェンリルが最強種と呼ばれる所以なのかもしれない。
いつの間にか、部屋の中央に宝箱が出現していた。あれが報酬か?
その階層のボスを倒すと、宝箱がランダムで一つか二つ出るそうだ。
中身も倒した時間や人数などで変わるらしい。
「早速見てみよう」
宝箱に触れると……赤い魔法書と、長さ一メートルほどの布だった。
「ウインドカッターの魔法書か。そしてこっちは布……よくわからないが、途轍もなく伸びるな。こっちはうーん、良いのか悪いのか……後でノイス殿に聞いてみるか。セツ、ひとまず戻ろう」
「キャン!」
出入口は一個所しかなかったので、入ってきた扉から出ると、いつの間にかワープゾーンの近くに、下層へ続く階段が現れていた。
どうやら、倒した者が部屋から出ると、出現する仕掛けのようだ。
「さて、どうするか。セツ、疲れてるか?」
「ワフッ!」
「まだまだ行けそうな顔だな。よし、下見だけしておくか」
そうと決まったら、早速階段を下りていく。
そこには、他の階層に似た平地が広がっていたが、周囲には大小様々な岩が転がっており、中には岩山と呼べるようなものもそびえている。
「岩山がある以外は普通っぽいな。とりあえず、行ってみるか」
「キャン!!」
俺とセツは、警戒しながら歩いていく。
さて、俺の予想では、近くに何か潜んでいそうだが……セツは気づくかな?
セツの耳が、ピクッと動く。
その瞬間に、岩陰から何か黒い影が飛び出してきた。
セツはすぐに反応し、何者かの攻撃を避ける。
「こいつは……黒ヒョウか……? 見たことがない奴だな」
そこには、ヒョウを一回り太くしたような生き物がいた。
ダンジョン内では、階層のレベルに合わせて、世界中の魔物がランダムに出現するらしい。
知らない魔物が出てきても不思議ではない。
セツとヒョウが互いに唸り声を上げ、睨み合う。
この十階から二十階は、基本的にはDからD+のステータスの魔物が出るらしい。
そして、ごく稀にCクラスの魔物も出現するそうだ。
ということは、奴のステータスはセツと同等か、それより少し低いくらいだろう。
ヒョウが動き出し、その鋭い爪でセツに迫る。
セツも爪でこれを迎撃し、爪と爪が連続して交差する。
どうやら、成長した今の自分の身体を試しているのかもしれない。
「ゲレレ!!」
助走をつけて、ヒョウが勝負に出た。
その瞬間、セツが氷のブレスを放ち――ヒョウを捉える。
以前なら、ブレスは相手の一部分だけ凍らせる程度の威力だったが、今の一撃でヒョウの身体の半分ほどを凍らせた。前よりも範囲、威力ともに上がっているようだ。
身体を半分氷漬けにされ、動けなくなったヒョウにセツが飛びかかる。
凍った半身をセツの爪の一撃で叩き割られ、ヒョウは絶命した。
「セツ、良い戦いだったぞ。ブレスの威力も上がったしな」
「キャン!」
その後も、何匹かヒョウが出てきたが、セツは難なく倒していく。
すると、今度は上空からハーピーが襲ってきた。
「セツ、どうする? 俺がやるか?」
セツは首を横に振る。どうやら、自分でやるようだ。
セツは駆け出し、近場の岩を軽快な動きで登っていく。
俺も跳躍して岩を登るが、まだ五メートルほどハーピーの方が高い位置にいる。
「さて、ここからどうする?」
すると、セツが助走をつけて走り出し、岩の上から跳んだ。
しかし、どう考えても届かない距離だ。
ハーピーが着地する瞬間を狙うのか、セツは足の爪を立て、着地するような姿勢をとる。
次の瞬間――セツは自分の落下地点に向け、氷の塊を作り出した。そして、その氷塊を足場にしてさらに跳躍する。
突然迫ってきたセツに驚き、ハーピーは体勢を変えようとするが……もう遅い。
セツの爪が、ハーピーの胴体を切り裂いた。
セツは綺麗に着地し、ハーピーは大きな音を立てて地面に墜落した。
「セツ! 凄いな! 氷を足場に使うとは!」
「キャン! キャン!」
セツは俺の足元を走り回り、ご機嫌な様子だ。
まったく、機転といい、威力といい、申し分ない。
嬉しいが、こうも成長が早すぎるというのも、少し寂しいかも。
その後すぐに階段を発見したので次の階層へと下りていくと、真っ暗な場所に出た。
「ん? 暗闇のフィールドのようだな。セツ、見えるか?」
「ワフッ!」
「うん、平気そうだな。どれ、俺も」
俺のステータスなら、見えるはずだ。
意識を集中し、目を凝らすと……徐々に周囲が見えてきた。
そこは、屋外空間だった前の階層から一転して、洞窟の中だった。天井も低く、せいぜい二メートル半くらいしかなさそうだ。これでは大剣なんて振り回せない。
「セツ、ごめんな。今日は、ここまでにしよう。俺の武器を増やす必要がありそうだ」
セツは「なんで行かないの?」と首を傾げていたが、理由を聞いて納得してくれたようだ。
俺達はそのまま引き返し、再びワープゾーンに乗ってダンジョンを出た。
予定より早かったので、セツも疲れていないが……今日は良くやったから、帰りも抱っこしてやることにする。
「さて……新しい武器を調達しないとな。俺が扱える物だと……槍が良いか」
もちろん、俺のステータスなら素手で殴るだけで、魔物は飛び散るだろう。
だが、それは勘弁願いたいところだ。幸い、祖父さんから槍も教わっている。
槍も狭い空間では扱いが難しいが、突き主体の攻撃にすれば、洞窟の中であっても、リーチを活かして有利に立ち回れるだろう。
そんなことを考えているうちに、ナイゼルに到着した。
まずは広場で昼食にする。今日のメニューはサンドイッチだ。
しかし、俺の一番の好物であるタマゴサンドはない。
「そういえば、マヨネーズも見ないな……もしかして、ないのか? 確か、こっちでは卵は貴重な食材と聞いたな。卵を産む魔物も少ないらしいし」
肉系ばかりだから、そろそろ魚系の料理も食べてみたい。タルタルソースなんかにしても合うだろうな。
マヨネーズもそうだが、色々と調べてみなくては。一つずつ地道にやっていくしかないか。
ランチを済ませた俺達は、ノイス殿の店に立ち寄った。
「こんにちは、ノイス殿。実は……」
俺は、洞窟の中で立ち回るための武器を探していることを伝えた。
「確かに、大剣では小回りが利かないか。となると……」
ちなみに、この前の食事会にいた人達には、俺が異世界人であることは伝えてある。
「この世界の槍は、どのような形が多いのですか?」
「そうだな、一通り見せてやる。おい、ちょっと待ってろ」
ノイス殿は奥に行き、いくつか武器を持ってきてくれた。
「まあ、大体こんな感じだな」
「素槍タイプ、鎌槍タイプ、大身槍タイプ、斧としても使えるハルバードタイプですか」
うーん、素槍タイプが一番使いやすいか。だが、俺の力加減が難しいかもな……耐久度も低いだろうし。
お、この大身槍、有名な蜻蛉切みたいでカッコいいけど、高いな。
「ヒュウガ、値段で悩んでいるのか?」
「いや、まあ……これが欲しいのですが、手持ちが足りないから、また今度に……」
俺が出直そうとすると、ノイス殿は顎に手をやって少し考える様子を見せた。
「ふむ。昨日の肉と酒は、実に美味かったな……あんな美味い物は初めてだった。お主は異世界人だと言ったな? まだ、他にも美味い料理が作れるのか?」
「ええ、それはもちろんです。さっきも、そのことを考えていました」
卵が手軽に手に入れば、マヨネーズを作って、タルタルソースとか、酢を入れたフレンチマヨネーズなんかにもできるし、ソースオランデーズなども作れるだろう。
「ならば持っていけ。金はいらん。これは昨日の礼だ。そして新たな料理ができたら、また食わせろ。ワシには鍛冶しかできん。ワシは鍛冶を、お主は料理。等価交換だ」
「いやいや! 手間と素材を考えたら、等価ではないと思うのですが?」
「気になるなら、武具に使う素材を持ってくるがいい。何より、ワシは気に入った奴に、自分の作った武器を使ってほしい」
「ノイス殿、ありがとうございます……」
「ふん、礼などいらん。ワシは、ワシのやりたいようにしている。では、調整をしてくる。それまで、その辺をブラブラしてろ」
「本当にありがとうございます! あっ、すみません、ついでにこれを……」
ダンジョンで手に入れた伸びる布のことを思い出し、ノイス殿に渡す。
「ふむ、この世界のものではないな。女神が作りしダンジョンアイテムの一種か。伸びる……戻る……何に使うんだ?」
「いや、俺もどうしたものかと困っていまして……いや、待ってください」
そこで、俺の脳裏にある考えが浮かぶ。
「では……こういう物にできますか?」
「ほう? 相変わらず変なことを考える奴だ。だが面白い。そちらもやっといてやる」
「よろしくお願いします!」
話を終えた俺達は、一度店を出て商店街へ向かう。
「早急に素材探しをしよう。でないと、俺の気が済まない。エギルが依頼を一緒に受けてくれると言うから、後で相談してみるか」
セツは、早く早く! とでも言いたげに、前を歩く。
「はいはい、行きますよ。相変わらず、お前は商店街が好きだな」
あそこに行けば可愛がられるし、おやつも貰えるからなぁ。
商店街に着くとみんなが寄ってきて、この前のローストビーフのお礼を言われた。
どうやら、みんな喜んでくれたようだな。
お礼の返事をしながら、俺はロダンさんのもとに向かう。
「おう! ヒュウガ! どうした!?」
「ロダンさん、配ってくれてありがとうございます。今日は、この前皆さんを呼べなかったので、挨拶に来ました」
「そうか! 相変わらず、律儀な奴だな! まあ、それがヒュウガの良いところだな!」
「自分では普通だと思っているのですが……何かをしてもらったら、お礼をすることは」
「いやいや。ヒュウガほどの力を持つ者は、横柄な連中が多い。それこそ、お礼を言ったり、謝ったりすることができない奴がな」
「そういうものですか……」
「ああ、気をつけろよ? ヒュウガは人が好いからな。世の中、善意を仇で返されることもある」
「ご助言、ありがとうございます。心に留めておきますね」
「ああ、ところで……アレは、いいのか?」
俺は、ロダンさんが指さす方を見る。
そこには、住民に囲まれたセツがいた。いや、その表現は正しくないか……
「セツちゃん! こっち向いてー!」
「セツ! うちの肉食っていきな!」
「きゃー! 可愛い! 大きくなってきたけど、それはそれでいいー!」
「ほら、そこ! 割り込みでお触りは禁止だよ! セツちゃんが困ってしまうだろ!」
「キャン!!」
えっと、目に映る光景を説明すると……握手会? いや、この場合はモフモフ会?
とりあえず、セツの前に人々が列を作っていた。
そしてナデナデしたり、モフモフしたりしている。
さらに、それを取り締まる人が何人かいる……ファンクラブか!
いや、称号に「みんなのアイドル」とあるから、間違っていないのか?
どうしようかと困惑していると、向こうから兵士達が走ってきた。
「マズイ、ロダンさん! 俺、行きますね! できたらフォローお願いします!」
「いや! 待て! ヒュウガ! アレは平気だ!」
すぐに撤収しようと駆け出す俺を、ロダンさんが呼び止めた。
「何が平気なんですか!? いくらテイマー登録しているとはいえ、街の治安を守る兵士が来たんですよ!? 捕まらないにしても、心証は悪いでしょ!?」
「いいから落ち着け! よく見ろ!」
言われた通りに兵士達を見ていると、驚くべき光景が目に入った。
「こら! お前達! なっていないぞ! これだから素人は! 行くぞ、皆の者!」
「おう! 本職の力見せてやるぜ!」
兵士達が慣れた感じで人々を誘導していく……!
なんだ!? 一体俺は何を見せられているんだ!?
そして、セツを愛でる人々を、他の人に迷惑にならないように、綺麗に整列させた。
そして、それを兵士達が監視し、セツを守っている。
さながら、その光景は人気アイドルを守るボディガードのようだ。
「……はい?」
「その顔は知らなかったようだな? セツはな、最近一人でここに来るんだよ。それで、いつの間にかこうなっていた。混乱を見かねた兵士達が整理を始めたが、気づいたらあいつらもセツのファンになってしまったようだ」
確かに、最近は自立を促すために、一人にする機会も増やしていたが……まさか、こんなことになっているとは。セツが悪いわけではないから叱るのもおかしいし、住民達の気持ちもわかるから強く言えない。
全てを終えたセツが、俺のもとへ戻ってきた。
「クゥン?」
セツはどうしたの? とでも言うように首を傾げる。
俺は色々言おうとしたけど……もういいや……考えるのをやめよう。
セツは可愛い! みんなのアイドル! それでいいか。
ナデナデ会? を終えたセツを連れて歩いていると……
何やら難しい顔で訓練場の前にいるユリアを発見した。
「ユリア? 平気ですか?」
「キャン!」
何度か声をかけると、ユリアはようやく気づいてくれた。
「ヒュウガ? おっと、セツもいたんだな。すまない……少しイラついていてな」
「なかなか大変なお仕事だとは聞いています」
詳しくは知らないが、彼女は兵士のまとめ役や、上との橋渡し役、他にもこの辺りの村や町の巡回などもしているそうだ。もっとも、彼女の周りの人の態度を見ると、単なる中間管理職程度の身分ではないとは思うが。
「うむ……少し、話を聞いてもらえるか、ヒュウガ?」
「もちろん、俺で良ければ」
しばしの沈黙の後、ユリアは大きく息を吸って、切り出した。
「実はな……私は、この国の王女なんだ――今まで黙っていて、すまなかったな」
「へぇ、そうなんですね。でも、それがどうかしたのですか?」
思っていた以上に大物だった。
しかし、正直言って、王族とか言われてもピンとこない。高貴で偉いというのはわかるが、日本でのそれは象徴的なものだったし。
「何!? 王女だぞ!? 自分で言うのもなんだが、王家の者だぞ!?」
「やはり高貴な家の方でしたか。それは予想していました。俺が聞きたいのは、一つだけです――本当の身分を知った以上、態度を改める必要がありますか?」
「ふふ……ふふふ……そうか、そう言ってくれるか。いや、そのままで頼む。まさか、普通扱いがこんなに嬉しいとは」
よくはわからないが、ユリアは喜んでいるみたいだ。
「そうだ! 今、時間はあるか!?」
「え? ……はい、大丈夫ですよ。今、ノイス殿に武器の調整をしてもらっているので」
「では頼みがある! 今から稽古をつけてくれないか!?」
ぐいぐい来る! ちっ、近い‼
「わ! わかりましたから!」
「そうか! では、行くぞ!」
ユリアは目をキラキラさせて、俺の手を引っ張っていく。こういう子供っぽいところが、意外性があって可愛いと思う。
訓練場の中に入り、模擬剣を持って向かい合う。
「どうしますかね? とりあえず、打ち合いでもしますか?」
相当ストレスが溜まっているようだし、こういう時は思いっきり動いた方がいい。
「そうだな。では、お願いする」
「クゥン?」
「セツは、向こうで遊んでなさい。皆さん、待っているからな」
先程から女性達からの視線を感じるし。
見ているのは俺ではなく、アイドルと言われるうちの息子です。
セツを自由にさせると、早速女性達の黄色い声が響いてくる。相変わらず、大人気なこと。
「では、どこからでもかかってきてください」
俺は訓練に意識を切り替える。惚れた女性が相手でも、訓練には私情を挟んではいけない。何より、本気で強くなりたいユリアに失礼だ。
「では……行くぞ!!」
ユリアは上段に構えた剣を、そのまま振り下ろしてくる。
バシィ!! と心地いい音が響く。
「良い打ち込みです! ただ、腕を振り上げるのと当時に、踏み込む足も意識してください」
「む……こうか!」
「そうです! 腕と足を連動させて、身体全体で剣を振るってください。そうすれば威力は上がります」
「身体全体を使う。そうか、わかってきた気がする……こうか!」
その動作を、何度か繰り返す。
「そうです! その感覚を忘れないように!」
「はい! ……おっと、つい教官に返事をする時みたいになってしまった。ヒュウガは教えるのが上手いが、そういう経験があるのか?」
「ええ、多少は」
互いに照れくさくなって、少し笑い合う。
「なるほど、道理で慣れているわけだな。よし……気を取り直して続きをする」
「では、少し趣向を変えてみましょう。俺が攻撃を仕掛けます。それを受け止める、または受け流してください」
「わかった、やってみよう。全力を出してくれとは言わないが……」
「ええ、わかっています。女性だからといって、手心は加えません」
「ふふ、ヒュウガは良い男だな」
これは俺にとっても良い訓練になる。最近、力加減を調整できるように練習していたからだ。まずは、三割ほどを意識して、剣を振るう。
「くうぅ!」
「それでは駄目です! 剣筋を見てください! 腰が引けてます!」
「む……こうか!」
「衝撃を全身に散らして、受け流してください! 身体の下に受け流すイメージです!」
「身体の下……衝撃を受け流す……」
「そうです! できたら剣を受ける瞬間に、腕を僅かに下げてください! そうすることで衝撃が逃げます!」
打ち込みと受け流し、共に剣道の基本だ。この二つを極めることが、強くなる近道だ。
「受ける瞬間……下げる……確かに! さっきより軽く感じる!」
「ほら! 気を抜かない! 集中!」
「は、はい!」
十五分ほどが経過したところで、一度やめる。
「とりあえずは、こんなところでしょう」
「ハァ……ハァ……は、はい! ありがとうございました!」
「はは、なんだが本当に教官になった気分です」
「いや……実際にヒュウガは向いていると思うぞ? 教えるのも上手いし、こっちをやる気にさせてくれる」
「そうですか……祖父さんが若い頃に道場をやっていたんです。若い世代の人がいなくなって、やめたそうですが。でも、そういうのも良いかもしれないですね」
「確か、ハンターギルドの依頼にもその手の訓練系のものがあったな」
「あっ、なるほど。新人教育みたいなものですか」
「そういうことだ。では、私も仕事に戻るとしよう。ありがとうございました、教官」
ユリアはそう言って、にっこり微笑んだ。
「はい、お疲れ様でした。サボらずに、研鑽を積むように!」
こうして、ユリアとの訓練は終わった。
これで、少しは気が晴れたならいいのだが……
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