39 / 61
第三章
33話 すべて奪ってあげる
しおりを挟む
今日は決戦の日だ。私は黒いドレスに身を包み、覚悟を決めた。髪に挿したブローディアの髪飾りは私に勇気を与えてくれた。
「私も招待してもらえるとは驚きました」
「……ビアンカがどうしてもと言うからだ」
お父様はため息をつく。完全に私のことを厄介者として扱っているのだ。
姉様が私を招待したのは、私に幸せな姿を見せつけるためだろう。
「レイラ! そのドレスよく似合ってるわ!」
姉様が天使のような笑顔で手を合わせた。
「そうですか。私も姉様のドレス姿が楽しみで仕方がありません」
これから、姉様はドレスの準備に入る。その前に私たちは挨拶を交わしにきたのだ。
「ええ。楽しみにしていて」
「ビアンカ」
お父様が姉様を呼ぶ。少し涙目なのに気づく。私はその嘘くささに口角が上がるのを手で隠した。
「お前は、私にとって女神だ。血は繋がっていなくとも、君が娘で誇らしいよ」
「私もですわ、お父様」
「それに比べて実の娘のレイラといえば……」
「あら、そんなこと言ってはレイラが可哀想ですわ~」
「うむ……。とにかく、幸せになるだぞ、ビアンカ」
「はい!」
こんな会話は慣れっこなので、半分聞き流していられる。しょうもない寸劇が始まったなぁ~くらいに思っている。
「ではそろそろ出るか」
「はい」
私たちは、ブライズルームから出る。
今日で、姉様からすべて奪ってやる。
私が今までされてきたように。
■■■
「新婦が入場いたします」
その声が響くと、会場が少しざわつきはじめる。
私は入場扉の方に目を向けるが、おもしろくて吹き出しそうになったので、慌てて目を逸らした。
姉様のドレス! あれは流石に派手すぎる!
色はアイボリー色で控えめだが、異常なほどフリルやレースが多い。そして、ゴテゴテの装飾品。あれでは、クリスマスツリーではないか。
一番お金がかかっているドレスかもしれないが、かえって不恰好だ。
せっかく側だけは美しいのに、もったいない!
欲張りすぎたんだろうなぁ、姉様。
一緒に選んだはずのアンジェロ様も、驚愕の表情で目をひん剥いている。元々大きな目がさらに大きくなっている。
装飾品は姉様の独断なのかも。
姉様は得意満面でお父様と入場する。そしてお父様の手からアンジェロ様へと託される。
お父様は涙を流していたが、多分嘘泣きだろう。
内心ではほくそ笑んでいるに違いない。この結婚は、下級貴族であるお父様にはメリットが多い。
調子を取り戻したアンジェロ王子は、にっこりと微笑み、姉様をみつめる。そして、二人は永遠の愛を誓い合う。
まぁ、私が永遠になんてさせないけど。
その後、来客たちは料理を楽しみ始め、会場では賑やかな雰囲気になる。
「それでは、ビアンカ様のご友人が欠席ということで、妹君のレイラ・ローズブレイド嬢にお祝いのご挨拶をしていただきます」
隣に座っていたお父様が驚いたようにこちらを見る。私は微笑をたたえ、前に出る。
挨拶をするはずだった友人は、姉様の手下令息の内の一人の婚約者だった。彼女は姉様の裏切りに気づいていなかったので、私が教えた。もちろん、証拠と一緒に。
だから、結婚式になんて来るはずがない。
すべて計画通りだ。
姉様も目を見開いてこちらを見ている。「余計なことを言うとどうなるかわかっているわよね?」という視線がひしひしと伝わってくる。
隣のアンジェロ王子は、私を歓迎する笑みなのだろうが、私には阿保面にしか見えなかった。
来客は、私の髪や瞳を見て気味が悪そうに眉を顰めた。
でも私の髪は変じゃない。
今日もドレスの色と合わせてオセロみたいでいい感じだ。私は今の自分に自信が持てる。
私は深呼吸をする。
「お姉様、ご結婚おめでとうございます。みなさんも私が魔女と呼ばれているのはご存知ですよね? しかし、ビアンカ姉様はいつも私を庇ってくれました」
ビアンカ姉様がほっとしたように胸を撫で下ろした。
でもね、姉様。本番はこれからなんですよ?
「私も招待してもらえるとは驚きました」
「……ビアンカがどうしてもと言うからだ」
お父様はため息をつく。完全に私のことを厄介者として扱っているのだ。
姉様が私を招待したのは、私に幸せな姿を見せつけるためだろう。
「レイラ! そのドレスよく似合ってるわ!」
姉様が天使のような笑顔で手を合わせた。
「そうですか。私も姉様のドレス姿が楽しみで仕方がありません」
これから、姉様はドレスの準備に入る。その前に私たちは挨拶を交わしにきたのだ。
「ええ。楽しみにしていて」
「ビアンカ」
お父様が姉様を呼ぶ。少し涙目なのに気づく。私はその嘘くささに口角が上がるのを手で隠した。
「お前は、私にとって女神だ。血は繋がっていなくとも、君が娘で誇らしいよ」
「私もですわ、お父様」
「それに比べて実の娘のレイラといえば……」
「あら、そんなこと言ってはレイラが可哀想ですわ~」
「うむ……。とにかく、幸せになるだぞ、ビアンカ」
「はい!」
こんな会話は慣れっこなので、半分聞き流していられる。しょうもない寸劇が始まったなぁ~くらいに思っている。
「ではそろそろ出るか」
「はい」
私たちは、ブライズルームから出る。
今日で、姉様からすべて奪ってやる。
私が今までされてきたように。
■■■
「新婦が入場いたします」
その声が響くと、会場が少しざわつきはじめる。
私は入場扉の方に目を向けるが、おもしろくて吹き出しそうになったので、慌てて目を逸らした。
姉様のドレス! あれは流石に派手すぎる!
色はアイボリー色で控えめだが、異常なほどフリルやレースが多い。そして、ゴテゴテの装飾品。あれでは、クリスマスツリーではないか。
一番お金がかかっているドレスかもしれないが、かえって不恰好だ。
せっかく側だけは美しいのに、もったいない!
欲張りすぎたんだろうなぁ、姉様。
一緒に選んだはずのアンジェロ様も、驚愕の表情で目をひん剥いている。元々大きな目がさらに大きくなっている。
装飾品は姉様の独断なのかも。
姉様は得意満面でお父様と入場する。そしてお父様の手からアンジェロ様へと託される。
お父様は涙を流していたが、多分嘘泣きだろう。
内心ではほくそ笑んでいるに違いない。この結婚は、下級貴族であるお父様にはメリットが多い。
調子を取り戻したアンジェロ王子は、にっこりと微笑み、姉様をみつめる。そして、二人は永遠の愛を誓い合う。
まぁ、私が永遠になんてさせないけど。
その後、来客たちは料理を楽しみ始め、会場では賑やかな雰囲気になる。
「それでは、ビアンカ様のご友人が欠席ということで、妹君のレイラ・ローズブレイド嬢にお祝いのご挨拶をしていただきます」
隣に座っていたお父様が驚いたようにこちらを見る。私は微笑をたたえ、前に出る。
挨拶をするはずだった友人は、姉様の手下令息の内の一人の婚約者だった。彼女は姉様の裏切りに気づいていなかったので、私が教えた。もちろん、証拠と一緒に。
だから、結婚式になんて来るはずがない。
すべて計画通りだ。
姉様も目を見開いてこちらを見ている。「余計なことを言うとどうなるかわかっているわよね?」という視線がひしひしと伝わってくる。
隣のアンジェロ王子は、私を歓迎する笑みなのだろうが、私には阿保面にしか見えなかった。
来客は、私の髪や瞳を見て気味が悪そうに眉を顰めた。
でも私の髪は変じゃない。
今日もドレスの色と合わせてオセロみたいでいい感じだ。私は今の自分に自信が持てる。
私は深呼吸をする。
「お姉様、ご結婚おめでとうございます。みなさんも私が魔女と呼ばれているのはご存知ですよね? しかし、ビアンカ姉様はいつも私を庇ってくれました」
ビアンカ姉様がほっとしたように胸を撫で下ろした。
でもね、姉様。本番はこれからなんですよ?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,727
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる