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友人

話し合いをしましょう5

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 薄羽が借りているのはアパートの角部屋だ。大家は近所に住んでいて、入居前に一度挨拶に行った。そこで聞いた話では、このアパートは現在学生しか住んでいないらしい。薄羽と同じ大学の学生もいれば、他の大学に通っている学生もいる。あまり廊下ですれ違うことはない。それでも部屋の窓を開けるとたばこのにおいが入ってきたり、笑い声やテレビの声が聞こえるので、それぞれ生活しているのだとわかる。

 どうぞ、と薄羽が玄関を開けると、おそるおそる小鳥が足を踏み入れる。不安というよりも、高揚しているようだった。友だちの部屋に行くってそんなに一大イベントだろうか。薄羽からすると不思議だが、微笑ましくもある。

「部屋広いね。すっきりしてる」
「だろー」

 薄羽はふふんと胸を張った。部屋はさほど広くはないが、ものがそこまでないからそう見えるのだろう。窓も多いのも理由のひとつかもしれない。もっとも押し入れには、まだ荷解きしていない服などもあるが。

『部屋はちゃんとしてるの。ごはんは。勉強もしっかりしてるんでしょうね。無駄遣いはしていない?』

 実家の母からの電話が週に一回はくるので、片付いているのと鋭く問われれば部屋にあるゴミをまとめようという気になる。自炊しているんでしょうねと言われる日に限ってカップラーメンを食べていたりもする。部屋に盗聴器でもついてんのか。そんなわけはないだろうと思いながら、ちょっと勘が鋭すぎて怖いものがある。
 それよりも頻繁にかけてくるのは弟だ。オンラインゲームするから時間を作れ、画面通話で顔を見せろと、うるさいくらいだ。おまえはめんどくさいカノジョかと思わず薄羽がげんなりしたら、口を挟む間もない勢いで怒られ電話を切られた。あの達者な責めっぷりは母親譲りだろう。薄羽はふたりからの電話の後は、少々ぐったりしてしまう。
 まあおかげですぐに小鳥を部屋に入れられたから、いいか。薄羽は前向きに考えることにした。そういえば、と無意識に口を開く。

「この部屋に呼んだの小鳥が初めてだわ」

 小鳥は勢いよく薄羽へ振り返る。目を見開いているのはなぜだろうか。薄羽は疑問に思いつつ、黒目が大きいなとそんなことに気づく。

「俺が初めて? 部屋に入るの」
「うん? うん。そうかも」

 薄羽はよく分からないまま頷いた。引っ越しのときもそこまで荷物がなかったから、家族が手伝いに来ることもなかった。秋月たちとはラーメンを食べに行ったり遊びに行くことはあるが、部屋に招いたことはない。
 特に理由があって誰も部屋に入れなかったわけではない。薄羽としては、小鳥がなんとなく喜んでいるのはわかるのだが、理由までは思いつかなかった。

「で、呼んだ理由だけど」

 小さなテーブルで角を挟んで座る。薄羽にはそこまで問題のないテーブルなのだが、小鳥には窮屈そうだ。脚を持て余しているのがわかる。身長が高くて脚が長いんだよな。薄羽はむう、と口をへの字に曲げた。こういうときに、それがよくわかる。外でも、座っているときはそこまで身長が気にならないが、並んで歩くとあれこんなに身長が高かったのか、と不思議になる。頭が小さくて脚が長いからだ、と気づいたときには、愕然としたものだ。

「小鳥のカノジョ……あっいや、小鳥ってカノジョいる?」
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