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(ティアラside)  同日 教室

今日は、サクラさんに初めて、お昼ご飯を誘われた。

絶対何かある…彼女の親切心?なんて信じられない。
身構えながら、サクラさんの表情をよく見る。

前から仲が良いみたいに、笑みを崩さず、
「ねぇねぇ、ティアラ様もご一緒しましょうよ。今日は沢山クッキーを作って来たの。みんなで食べましょう。ティアラ様のことも知りたいわ。ミンネとも仲がいいのでしょう?なら、私達も仲良しね!」
と言う。

どの口が…呆れてしまった。クラスメイトの驚く顔を見もしないで、私に仲良しなんて言いきる無神経で自己中心的な発言…
モブだのカミューラ様の仲間だの…

確かに最近は、挨拶をすれば返ってくる関係に戻ってきたが、一人ぼっちの除け者感の状態にも関わらず、私達、仲良しなんてありえない!

「せっかくのお誘いなのですが、キアヌス先生に呼ばれてまして、話を聞きにいかないといけないです」
と言えば、
「では、みんなで行けばキアヌス先生もびっくりして早く解放してくれるかもしれないわよ。だってランチを取らなきゃいけないもの」
とさも、いい案でしょうと言うように一度手を叩いてから、私を見る。

…本当にこの人は!
これは、間違いなく今日、いじめられる現場をみんなに見せる気だ。
そして私にも。セレナとサクラは共に悪役令嬢カミューラに立ち向かうから!

本当に自分勝手!!

「そうですね、私も早く聞き終わりたいのですけど、以前、私が上級生を紹介しないという注意の件なんですよね。私には、身に覚えがないのですがね、キアヌス先生は、とても生徒思いなので心配されていて…
もう一度話してこようと思います」
と言えば、
「えっ、まだそんな些細な事言っているの?」

は!あなたの言いがかりですけど!

「はい、なんでもいじめと言って泣かれたと…」

さすがにサクラさんも自分の言った事を覚えていたようだ。小さく舌打ちが聞こえた。

「…それなら、仕方ないわね」
と後ろを向き歩いていった。

キアヌス先生に度々行くことを伝える為の理由も考えなければいけない。一人では限界があるかもと不安にもなる。

お昼ご飯を食べ教室に戻れば、教室内がいつもとは違う雰囲気だった。
真っ直ぐにミンネが私のところに来た。

それだけでサクラさんがいないとわかる。

「ティア、階段で、サクラがカミューラ様から押されて怪我をしたの」

「階段って?イリーネ様と揉めたわけじゃなくて?カミューラ様?」
と聞くと、
「ええ、最初イリーネ様と口論になって、カミューラ様がサクラの肩を押したように見えたわ。でもカミューラ様がサクラが不敬でと言うの」

「カミューラ様が…
階段って怪我はどの程度なの?」

シルベルト様がもうカミューラ様の解呪を成功させたから、意地悪な悪意ある行為を全部飛ばして最終段階にしたとか…

「段数は、二段よ。私が見た所、お尻から落ちたと思うのだけど。医務室には、足を引き摺るように他の子に支えてもらいながら移動していたわ。でも目撃者は多数だから、カミューラ様は不敬だの防衛だと言うけれど、それは通らないと思う」
と言うミンネ。

「ミンネ、理由は後で話すけど、あの方、私をセレナさんの代わりにして聖女になろうとしているの」
と小声で話す。

「えっ?聖女になる?ティアがどうしてあのセレナさんに代われるって言うの?」

「それはわからない。あの方の考えてることなんて知りたくもないわ。ただ利用されるなんて絶対嫌」

「言うわねぇ~」

授業が始まってもサクラさんは帰ってこなかった。再び見たサクラさんは、二日後、杖をついて片足を引き摺るように歩いていた。
何故か頭にも包帯を巻いて…



(シルベルトside)    生徒会室

「もう、午後の授業はサボりになったわけだし、お昼ご飯を食べようよ、お茶を入れるよ」
とログワットが立ち上がった。
フランも立ち上がり、まだ震えているカミューラ嬢に自分の上着をスカートの上に掛けた。

「気遣い」、と姉上の声が頭にこだました。

「カミューラ嬢、そのハンカチを返して頂けないですか?それは預かり物でして」
と言えば、
ハンカチをジッと見た後、また何かを思っているように視線が定まっておらず、しばらくしてからぼぅっとしている様子。

ログワットも、お茶を前に置いた後も何も言わない。
彼女に思い返す時間は必要だ。操られていたなら尚更。ハンカチを渡してきたので預かるが、表情は青褪めていた。
「大丈夫ですか?」
と聞くと頷くカミューラ嬢。

我々は黙々と昼飯を食べる。

そして、本を読んだり、時間を潰した。
ノックされ、扉が開く。

クラード様と学園長が二人で来た。

学園長が、
「カミューラさん、私がわかりますか?」
と聞くと、
「誰ですか?」
と言った。
「一度図書室で挨拶した者です」
と言えば、クラード様が、
「学園長、意地悪ですよ」
と言った。
「何か覚えていますか?」
と学園長が問えば、顔色の悪いまま頭を下げた。

「私は、セレナさんに酷い事をしました。そして今回は、留学生の子に」
と小さな声で言った。
「そうですね。自宅で謹慎してもらいましょう。病ということで、外に出ては駄目ですよ。また強制的に悪役令嬢にされるかもしれません」
と学園長は言った。穏やかな笑顔付きで。この人は自分の笑顔の使い道をよくわかっている。
本当にいやらしい人だ。
これは、不敬だが、あなたは、ティアラ嬢に待て、何もするなと言った人ですよねとツッコミたくなった。

「はい、申し訳ございませんでした。私、わかっていたんです。手を出してはいけないとイリーネに言おうとして、でも気持ち悪さと頭を支配されるように、何も考えられなくて。扇子を叩こうとしたんです。でも私がやったことは、彼女を押した…こんな言い訳信じてもらえないと思うのですけど…」

「大丈夫ですよ。安心してください。あなたが寄贈してくれた本に書いてありますから。なので悪役令嬢として退場して下さい。また悪評が強くなると思いますが」

「それは、私がやった事です、言われて当然です。…あの本を読んだ時、胸が痛かったんです。自分では何も出来なくて、誰かが見て、知ってくれたら、何か痛みがなくなる気がして」
とカミューラ嬢が言った。

「今は体調は大丈夫ですか?ロフト公爵家に知らせますか?」
と聞けば、手をグッと力を入れて組んでいる。
「私が何もしないと父様が勝手に動いてしまうんです。多分私を心配して…大丈夫でしょうか?」
とあんなプライドが高いと思っていたカミューラ嬢が、弱々しく発言するとは思わなかったが、クラード様は、
「ロフト公爵には、今までの事をゆっくりでいいから説明した方がいい。そしてその後の対応は城で相談するべきだ。カミューラ嬢は今から病により話せないとし、面会も断って欲しい。そしてこれからのこと我々に任せて欲しい」
と言った。

「承知いたしました」
と一礼して出ていく姿は先程見た私は一切悪くないという姿勢とは全く違う弱った令嬢だった。

「悪役令嬢という仮面が剥がれると別人じゃないか」
と言えば、
「操るって恐ろしいな…」

そして、生徒会室でこれからを話し合った。
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