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どうやら黒いゴミ箱の中で何かが起きているらしい。

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文字通り、ゴミとしてぽいっと呆気なく捨てられた哀れな凡庸な人たちの無数の魂は、真っ黒な空間に吸い込まれた。

神々は、それきり忘れて、善人と悪人の戦いに見入っていたが、その間、密やかに黒い空間で抗う無数の魂たちが、人知れず戦っていた。

「「「もう駄目。このまま永遠に幽閉・・。」」」

「「「諦めるな!このままでは唯ではおくものか!凡庸な者にも何かできることをしなければ!あの傲慢な神々に逆襲できないぞ!」」」

弱音を吐く者。怒れる者。嘆く者。儚く微笑む者。叱咤する者。無数の魂は、根底に悔しさがあった。

当然だ。いきなり価値のないものとしてゴミのように捨てられたのだ。そりゃあ凡庸な者であまり価値がないと自分でも気づいていたが、こうもあからさまに捨てることはないだろう。

人間の心理だ。 舐めやがって。あのクソ神々め。

特に、気が強い男や女はかつてない怒りを持って、悲しみを秘めてなんとかしてこの漆黒の亜空間を脱出しようとしていた。しかし虚しく何をやっても出られなかった。
凡庸な者達は何をやってもだめなのか? 

だんだん彼らは憔悴しきって、諦めかかっていた。


その中で、凡庸な者が或る時、天才のような閃きを得た。これが最後の神の贈り物だろうか?

「みんな、聞いてくれ。魂を集合したらどうだろう。より強い自我にまかせよう。凡庸な魂でも束になったら強くなれるし、塵も積もれば山となるというし・・。
自我を委ねて、魂の力を束ねるしかないと思うのだ・・。それしかここを脱出する手段はないぞ。」


彼らは騒然となったが、だんだんそれしかないと思うようになった。

どうせ、ずっとここに幽閉されるのだ。誰からも見捨てられたまま・・。ならばいっそその方法に賭けて見るしかないではないか・・。


凡庸な自我が弱い者達は早速魂の力を受け渡した。 もう無理だからだ。でも悔しいし、せめて一回だけはあの神々に報復をしたい。だから弱い者ほど、その手段に賭けた。

弱い者ほど復讐する。
復讐は我にあり。


時間がたつにつれて、漆黒の亜空間で何かが蠢き始めた。

ゴミ箱の側を通った飼い天猫はん?と首を傾げてゴミ箱を覗こうとした。

天界で生まれて、天使に買われている愛猫だ。とても美しい猫は、無垢な目でなんだ、あれはとゴミ箱の中で起きている異変に素早く気づいた。


天猫は好奇心をもってゴミ箱を覗こうと箱の蓋を開けようとしたが、飼い主から「嗚呼駄目だよ。危ないから・・
よしよし・・こんなところを覗いたらいけないよ。」と声をかけられ、小さな体をひょいと抱えられた。

飼い主に撫でられて嬉しい天猫であったが、天猫は気づいていた。

どうやら黒いゴミ箱の中で何かが起きているらしい。

天猫はにゃあと飼い主にそれを告げたが、鈍感な飼い主はハハハと笑った。

『何を言っているんだい。あんな価値のない魂が何ができるというんだい。大丈夫だよ。』

天使は無邪気に笑って、天猫の警戒と忠告を無視した。

天猫は、飼い主に抱えられながらも、ゴミ箱を半眼で注視していた。 天猫だけが分かっていた。


ゴミ箱で、なにかが起きている。でも飼い主は信じてくれない。 天猫はいいのか?と思いながらも飼い主に従った。

のちにとんでもない大事態が起きるまで天使は気づかなかった。




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