愛と死の輪廻

栗菓子

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第12話 アンの夢

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凡庸なアンの意識は、すっかり意気消沈し、代わりに、冷徹な戦士の意識や、他の人格が、アンの肉体を主導した。

夫ジェイムスは気づいていないが、アンの精神が完全に受け入れていないことを冷徹に分析している。

悔しいが、ジェイムスは大貴族の血を引くだけあって、優秀で、人の心理や、状況を把握する能力に長けている。
この魑魅魍魎の魔窟のような王宮で、政敵を滅ぼすだけあって、ジェイムスはどこかでアンを完全に支配するか試している。

媚薬を混ぜた美酒をジェイムスは口に含ませ、アンに口移しする。
そして、アンの硬質な未熟な身体を次第に花開かせようと試している。

ジェイムスは良くアンと舌を絡めながら口でさえも貪ろうとしていた。

男色家ゆえ、アンの膣は舐められないが、己の性器によく似た形の醜悪な張りぼてをアンの膣に挿入しては、反応を確認していた。苦痛と、アンの弱い官能の性感帯の箇所に当たった時の「あ・・」とかすかに震える官能の声でジェイムスはにやりと嗚呼ここがアンの急所だと何度も責めた。

ジェイムスはアンの不浄な穴にも気になっていた。女の尻を見て、男の尻とどう違うのか拡張して検分もした。
肛門だけはほとんど同じだな。

アンの前の処女は散らしたから、今度は後ろの肛門の処女も散らそう。
それには、肛門を柔らかくして、浣腸などで腸を綺麗にしなければ、ジェイムスは男娼との性交で色々と学んでいる。

ゆっくりと初めて挿入しても感じるぐらい、体を作り変えよう。
ジェイムスはどうやって作業するか楽しみにしていた。

アンは、ジェイムスのための性玩具であり、美味しくなるため改造される娼婦でもあった。


アンの冷徹な男性の意識はそれを僅かに腹立たしく見ていたが、他の人格、かつて場末の娼婦であった女の人格が、くすくすと面白そうに笑っていた。

『面白いわね。始めは暴力的であのままではアンの身体は壊れるなとあたしは思っていたけど、だんだんあいつは、アンの身体をいかにして官能的にしようかと考えるようになったわ。
あの男は気づいていないでしょうけど、アンを肉塊ではなく『妻』として認識して愛しているわ。
あの男は男色家だけど、アンだけは特別な女として認識しつつあるわ。なんで身勝手で男の奇妙な心理かしら。ましてやあいつにとって女は侮蔑する対象なのに。
男ってわからないわねえ。ましてやあいつはかなり難しい性格をしているわ。』

『厄介な性格よ。子どもの様に傲慢で、アンの事を疎ましい邪魔な女と思っていた癖に、アンも余計な勇気を出して、かえって怪物の興味と刺激を与える獲物として認識されたのだ。しかしこれはアンの試練かもしれぬな。上手くすれば、生き延び、夫の寵愛を得て、アンももしかしたら夫を愛するようになるかもしれない。
そうしたら我らも忌々しい『神』の呪いから解放されるかもしれぬ。』

不意にくすくす笑っていた場末の娼婦の人格が黙り込んだ。

『どうした?』

『そううまくいくかしらね・・。あたしたちは誰も愛したり愛されなかった孤独な人生を終えたわ。生きるために精一杯で、初めは愛などと侮蔑もしたけど、一度だけ心惹かれた男性が居たわ。その男は気弱だけど優しい人だった。
あたしは威嚇しながらも、何度かあいつに気を許したわ。だってあいつはあたしに完全に惚れていた。あたしはそれに甘えて、何回か試したわ。バカよね。子どもの試し行動だわ。あたしは本当に子どもだった。
気弱な男はあたしに翻弄されて疲れていったわ。だんだん愛が薄れて、他の包容力がある女になびくようになった。
あたしは怒ったけど、どこかで嗚呼と妙に納得しても居た。だってあたしはあいつから奪うばかりだったもの。

だれだって、お互いの心を守りあい、いたわりあう関係は素晴らしいと思うもの。あたしとあいつの関係は破綻したわ。実らなかった愛の死骸。それはどこかで枯れた花びらの残骸が積もっているかもしれない。
ねえ、あんたは誰かを愛したことはあった?アンで何回目の転生をしたのかしら。』

戦士だった男性の意識もしばらく沈思した。
『なかったな・・。唯生きるだけで殺し殺されるだけの人生であった。
それに悔いはないが死んでから『神』の呪いを思い出すとはな・・。忌々しい。時折、水底で眠る意識が浮上するように、覚醒して、今生のアンの中に宿るのは不可解なものだ。
我らはとうに死んだ亡霊であるのに。同じ魂とはいえ、それぞれの人生を生きた別人格をもったものが今はアンに宿っている。
後どの位、転生を繰り返せば解放されるのか?』

『そうね。あたしにも分からないわ。いつ終わりがくるのかしら・・。今はアンの試練を陰ながら助けましょう。
同じ魂でもあるし、アンが呆気なく死ぬのは少し厭だわ。』

『そうだな。女。』

かつての前世の男と女は、今生のアンを励まして助けた。そのおかげでアンの意識は辛うじて保っている。

『あなたたちは・・昔のわたしなの?・・』

アンは男と女の会話を聞いていた。

男と女は共に同じ言葉を吐いた。
「「 そうよ。そうだ。」」

アンはふふとかすかに笑ってこれは夢なのかしらと神様が悪夢の夫から逃れるために、都合の良い人が現われたのかしらと夢だと思った。

『ええ。貴女の夢かも知れない。でも私たちは貴女の味方よ。アン。忘れないで。』

夢だけど夢じゃない。 

アンは悪趣味な夫に翻弄されながらもかすかに味方の意識を感じて唯、従いながらもどこかで抗っていた。

アンは微睡みながらも、この悪夢のような現実や人生と戦っていた。


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