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第1章~あなたを目指して~
第2話※
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「ふ、ふ……ははは……!」
腹の底から活力が沸き起こってきて、アクセルは一気に距離を詰めた。両手の小太刀を振りかぶり、敬愛する兄に斬りかかる。
身体が軽い。痛みも感じない。全身の血が沸騰するように滾り、背筋がぞくぞくするほどの快感がこみ上げてくる。
今なら兄に勝てるかもしれない。尊い身体に傷をつけられるかもしれない……!
「たあぁぁぁあ!」
ガキン、と金属がぶつかり合った。夢中で振り下ろした二刀小太刀は、いとも簡単に受け止められてしまった。
驚愕に目を見開いていると、やや苦笑した兄に窘窘められる。
「興奮してるの? はしたないよ」
「……!?」
「でもその気持ち、とってもよくわかる」
次の瞬間、胸に焼けつくような衝撃を感じた。
「ぐっ……!」
顎を跳ね上げて仰け反ると同時に、唇から鉄の味が迸った。自分の胸部に兄の愛刀が突き刺さっているのが見えた。
斬ったつもりだったのに、防がれた挙句斬られてしまったのか……。
「兄上……」
縋りつくように兄に手を伸ばした。自分の武器がどこに行ったのか、アクセルにはもう見えなかった。
見えるのは傷一つない兄の顔だけ。弟の返り血を浴びて真っ赤に染まっている兄の姿だけ……。
「まだ、あなたには……届かない……か……」
その呟きを最期に、アクセルは力を失った。
狂おしいほどの愛しさとほんの少しの悔しさを抱きながら、白い闇へと堕ちていった。
腹の底から活力が沸き起こってきて、アクセルは一気に距離を詰めた。両手の小太刀を振りかぶり、敬愛する兄に斬りかかる。
身体が軽い。痛みも感じない。全身の血が沸騰するように滾り、背筋がぞくぞくするほどの快感がこみ上げてくる。
今なら兄に勝てるかもしれない。尊い身体に傷をつけられるかもしれない……!
「たあぁぁぁあ!」
ガキン、と金属がぶつかり合った。夢中で振り下ろした二刀小太刀は、いとも簡単に受け止められてしまった。
驚愕に目を見開いていると、やや苦笑した兄に窘窘められる。
「興奮してるの? はしたないよ」
「……!?」
「でもその気持ち、とってもよくわかる」
次の瞬間、胸に焼けつくような衝撃を感じた。
「ぐっ……!」
顎を跳ね上げて仰け反ると同時に、唇から鉄の味が迸った。自分の胸部に兄の愛刀が突き刺さっているのが見えた。
斬ったつもりだったのに、防がれた挙句斬られてしまったのか……。
「兄上……」
縋りつくように兄に手を伸ばした。自分の武器がどこに行ったのか、アクセルにはもう見えなかった。
見えるのは傷一つない兄の顔だけ。弟の返り血を浴びて真っ赤に染まっている兄の姿だけ……。
「まだ、あなたには……届かない……か……」
その呟きを最期に、アクセルは力を失った。
狂おしいほどの愛しさとほんの少しの悔しさを抱きながら、白い闇へと堕ちていった。
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