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第一章 ずっとずっと好きだったけれどもういけない
青四季海と、先輩の折露杏子1
しおりを挟む週末の、年上の女性二人の相手は、つつがなく終えた。
そしてまた月曜日が来る。
朝から、暑い。九月の一週目と二週目くらいでは、太陽の張り切りぶりには、あまり違いが出ないらしい。
海は夏が嫌いではなく、泳ぐのも汗をかいて運動するのも得意ではあったが、朝から気温が異常に高い日が続くとさすがにけだるくもなる。
鮎草と、朝の教室で挨拶を交わし、授業を受けた。普通のクラスメイト。普通の交流。それが海にはありがたく心地いい。
放課後は、華道部には寄らず(もちろん先週言われた例会とやらには出ていない)、旧校舎に向かった。
「さて……今日は、折露先輩か」
旧校舎の階段を、音を立てずに上がりながら――それがすっかり癖になってしまった――、今日の奉仕相手の名前をつぶやく。
折露杏子は、一学年先輩で、バレー部の名セッターとして校内では有名だった。
また、海にとって、彼女は唯一の在校生の奉仕相手だった。杏子のほかに、生徒で、海の行為を知っている者はいない。教師にも当然内緒だが、陽菜が唯一の例外だった。
もともと、学校の中で手広く「仕事」をやるつもりはなかった。ほんの数人、無責任な生徒に知られただけで、あっさりと海の学校生活は詰んでしまうだろう。杏子にしても、最初から同じ学校の生徒だと知って出会ったわけではなかった。
空き教室の中で支度をしていると、戸が開いた。
そこには、待っていた相手が立っている。
身長は、百六十センチを少し超えているくらい。部活の時は固く縛っている黒いロングヘアを、今は自然に下ろしている。
彼女の顔を見て、海は、意識的に名前を呼んだ。
「お疲れ様です、折露先輩」
そうしないと落ち着かなくなるくらい、髪の長さ以外は、杏子はなるみに似ていた。そうでなければ、こんな関係にはなっていなかったかもしれない。
強気そうな目も、短い丈を好むスカートも、引き締まった足も、肌の色まで、よく似ている。義理の弟である海より、よほどきょうだいらしい。
「どーも、お待たせ」
「いえ。おれも、今準備が終わったところなので」
声は全然似ていない。海は胸中で安堵の域を漏らし、わずかに生まれてしまっていた緊張を散らす。
「シャワー浴びてきたから、すぐ始めてもらってもいい?」
「いいですよ。マットに寝てください」
杏子は、手早く制服を脱いで、横の机に無造作に置いた。あっというまに下着も取って、全裸になる。
陽菜の場合は、いくらか着衣を残したほうが興奮するらしいが、杏子は逆で、なるべく肌同士が触れる面積を増やしたがった。心得ているので、海もすぐにパンツ一枚の姿になる。
自分の制服のついでに、杏子の制服も、きれいにたたんで置き直した。本当はハンガーに吊るしたかったが、いたずらにものを増やしたくないので、控えていた。
「女の服のたたみ方が、手慣れてるねー」
「おかげさまで」
海が、仰向けになった杏子の上で四つん這いになる。
愛撫は上半身から始めるが、唇にキスはしないので、首筋を唇と指でなぞるのがスタート位置になる。
杏子が、はあ、と息を漏らした。
海は、杏子の鎖骨や肩先に手で触れる。指先よりも、手のひら全体で、温めるような触れ方を杏子は好んだ。
胸を左右とも下から持ち上げるようにして、硬くなりかけている先端を唇で優しく挟み、上下にさする。
乳首が完全に硬くなった。これ以上続けると痛がらせるので、唇の先で、触れるか触れないかの接触にとどめる。
その間に、海の両手は杏子の脇腹を肋骨に沿って滑り、温めていた。行ったり来たりするのではなく、一方向に手を動かすほうがいい。
杏子の息が荒くなっている。
両手を腰の下に行かせようとすると、杏子が自分から腰を上げた。
尻をつかむのと同時に、舌で乳首を舌から左右に舐め上げる。勢いがいいのは見せかけだけで、力は最小限にしか込めない。
オイルなども使えれば、もっと強気に攻めることもできるのかもしれないが、この教室では、液体はウェットティッシュやタオルできれいに拭き取れる程度にしか使えない。
これはもどかしかったが、海は、今の自分がしているのはできる限りの奉仕であり仕事ではないので、限界を設けることも必要だと思っていた。
それでも、杏子の声は大きくなってきている。
海が体を下へずらした。顔がへその下へ来る。来るべき快感に備えて、杏子の体が緊張した。
しかし、海は、今すぐにでも口でよがらせてしまいたい衝動に耐えて、杏子の内腿を愛撫した。
もどかしさで、杏子の腰がさらに浮く。中心部が、海の目の前に突き出された。
それでも海は、それを少しだけ避けて、左右を舐め上げた。皮膚の薄い箇所に、くすぐったくなるような刺激を受けて、杏子が鋭い声を上げて背中をしならせる。
その顔を持ち上げて、杏子が、股間に埋まっている海を見つめてきた。
海は少しだけぎょっとする。杏子の顔が、なるみに似過ぎている。
なるみが、こうさせてくれたら。彼氏なんかじゃ満足できなくなるくらい、よがらせてやるのに。おれに任せてくれたら。
思考が、目の前の相手から、特別な存在へと流れそうになり、慌てて修正した。こういう気配に、女はさとい。杏子を醒めさせてはいけない。
杏子が、さっきまでの強気そうな視線から、懇願するようなまなざしに代わっていた。
なるみが、こんなふうになったら……、――いや、だから、やめろ。
杏子が、小さな声で「お願い」と言うのが聞こえた。「今、今」とも。
指を一本入れた。うう、とくぐもった声が聞こえる。
きついのに、さしたる抵抗もなく、海の指が進んでいく。そして、すでに知っている、杏子の弱点に到達した。
声が高くなるのと同時に、とうとう、海の口が杏子の中心に吸いついた。
「ううッ!」
びしょびしょに濡れていた。
指の腹を、中の少し硬いところに当ててさらさらと動かすと、さらに濡れる。
このままいけるな、と海は確信した。
舌と指先の動きを同調させて、同じように動かした。杏子は、こするよりも叩くようにするのが好きなので、力加減に気をつけながらスピードを上げていく。
杏子が、海の頭を両手でつかんで、引きつけた。
声はけだものじみてきている。
確か、杏子にも彼氏がいるはずだ。一度だけ見たことがある。夏休み中につき合い始めたという、眼鏡をかけている、まじめそうな同級生の男子。
彼氏は、杏子をこんなふうに喜ばせているんだろうか。
まだ、そこまで関係が進んでいないだろうか。
彼はあまり女慣れしている様子ではなかった。もし、杏子が、彼氏の技術に不満を覚えたらどうしよう。
彼氏が望むなら、杏子の好きな――今まさに杏子に堪能させているやり方を、教えてあげてもいい。いや、むしろ教えてあげたい。もちろん、まずそうならないだろうけれど。
好きな人を一番気持ちよくできるのは、自分でありたい。
老若男女問わず、誰もがそう思っているはずだ。――おれだって。
なるみの顔が、脳裏で明滅する。
(彼氏には、……)
杏子の体がしなり、鍛えられた体が、部活中ではまず起こさない全霊の硬直を迎えようとしている。
海の舌が、凶悪に優しく荒れ狂った。
(……彼氏には、どうされてるんだ!)
「うううあああああッ!」
杏子が叫んだ時、同時に、海のペニスが、下着越しにつかまれた。
「えっ!? お、折露先輩っ!?」
「続けてッ!」
「で、でも」
杏子の手が、海をしごき始めた。
「やらないから! あたし、いってる時に、これつかんでるのが好きなの――やめないで、お願い! 海くん、お願いだから!」
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