デコボコな僕ら

天渡清華

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その2

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 そして月曜日。営業部は基本みんな、月曜日はなるべく外回りは入れないようにして、会社での作業日にする。午前中には定例ミーティングもあるからだ。
 俺もいつもより賑わってる営業部のシマで、少しそわそわしつつも明日取引先に出す提案書を作っていた。
 俺の席から見える大沼は、黒のストライプのスーツに薄いブルーのワイシャツ、紺のネクタイ。バッチリ決まってる。その上その横顔は、引き締まって緊張感がある。さすがに今日は少しピリピリしてるみてえだ。
 そんな時になんだけど、見惚れちまうわ。取材は二時からって言ってたから、そろそろ先方が来る時間かな。うまくいくといいけど。
 大沼が電話を取るのが見えた。いよいよ取材が来たか。資料を抱え、広報部の人達に送り出されてこっちの方に歩いてくる。表情が硬い。
「大沼、笑顔笑顔。おばあちゃんに親切にするつもりでやれ」
 営業部の横を通っていく大沼に声をかける。電話でも言ったことだけど、俺の言葉に大沼が唇だけで笑い、力強くうなずいて、受付のある一階に下りていく。応接室は四階に二部屋あって、取材はそこでやると聞いてる。
「お前、なんだそのアドバイス」
 右隣の柴崎主任からツッコミが入った。主任は三十過ぎ、真面目を絵に描いたようなメガネキャラだ。
「なんかで読んだんスよ、人に説明する時は老人に親切にするつもりでやれって。大沼みたいなイケメンが、懇切丁寧に笑顔で説明してくれたら好感度爆上がりでしょ?」
「ま、そういう意味じゃあいつは確かに広報向きだな」
 主任はははっ、と笑ってコーヒーを飲んだ。
 そう、あの穏やかさ、優しさ、それにイケメンなのは広報向きなんだよ。いろんな人と携わる仕事だし。ああでも、大沼のことだからうまくやるだろうけど、取材とか自分のことのようにドキドキするわ。仕事が手につかねえ。
 大沼がいつ戻ってくるかと気にして、全然進まない仕事。左右にいる柴崎主任や寺田とたわいない会話をしながら、仕事してるふりで二時間近く過ぎた頃、大沼が戻ってきた。
「樹、たぶんうまく行ったよ」
 まっすぐに俺んとこに来て、ほっとしたように笑う大沼。まばゆい笑顔。
「アドバイス、役に立ったわ。ありがと」
 ぽん、と俺の肩をたたいて、奥の自席に戻る大沼。小脇に抱えていた資料をデスクに置き、すぐに三谷部長のところに報告に行く。
 ああ、よかった。いつもの穏やかさを取り戻した横顔を少し遠くから見守りながら、俺も本当にほっとした。さて、真面目に仕事しないと。
「なんかいいなあ、お前ら。青春だな」
 柴崎主任がしみじみ言う。いやいや、青春っていくつまで青春なんスか?
「青春、いいっスよねえ」
 寺田が主任のマネをするかのように腕組みして、うんうんうなずく。
「お前まで言うか、年下のくせに」
 寺田にツッコミを入れると、周りが笑いに包まれた。でもその青春っぽさは、大沼のさわやかなイケメンっぷりが主成分だろ。俺なんか、大沼に比べたら刺身のツマみたいなもんだ。
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