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なぜか乙ゲーの攻略キャラに転生してしまった俺は、悪役令嬢の可愛さに惚れました

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 その日から、俺はエトワールのことを意識するようになっていた。気がつくと目で追い、彼女の声が聞こえただけで耳を澄ませてしまう。

 アツコはニコラスを攻略するルートを選んだらしく、ふたりが一緒にいる姿をよく見かけるようになった。ニコラスは婚約者であるエトワールのことなど、気にもかけていないようだった。

 その日、教室に入るとエトワールの周囲がざわついていた。アツコがエトワールからされたという嫌がらせを告発したのだ。エトワールが裏で手を引き、ペンケースをゴミ箱に捨てられ、ノートを破られ、寮の部屋が荒らされたと訴えていた。

「っざけんな! お前、そんな証拠あんのかよ!!」

 思わずそれを聞き、俺は声を荒げていた。

「あ、あるわよ! この子たちが、エトワールから指示されたって話してくれたんだから!!」

 それは、いつもエトワールにくっついてた取り巻きの女子たちだった。

 エトワールは血の気を失くし、佇んでいた。そんな彼女に、俺は声をかけることができなかった。

 昼休み、俺がいつものように屋上でクリームパンを食べていると、誰かが入ってきた。

 また、アツコか?

 訝しげに見つめると、入ってきたのはエトワールだった。

「よぉ」
「ご機嫌よう」
「珍しいな、ひとりで屋上にくるなんて」
「……そう、ですわね」

 エトワールは元気がなかった。

「クリームパン、食うか?」

 袋からクリームパンを取り出して渡すと、エトワールの目が点になった。それから、プッと吹き出す。

「なんですの、急に……クスクス」
「いや。クリームパンでも食えば、元気になるかと思って」

 見上げると、エトワールが笑ってる。その笑顔が可愛くて……心臓を掴まれたみたいになった。

 なんだ、これ……

「お、前……笑うと、可愛いんだな」

 ボソッと呟いた声は、エトワールには届かなかったらしい。

「え、何か言いまして?」
「い、いや! なんでもねぇ!!」

 俺は……何言ってんだ!!

 顔が真っ赤になっていた。

「ぁ、あの……今朝はありがとうございました。私のこと、庇ってくださいまして……」
「あぁ、別に。思ったこと、言っただけだから。その……お前、アツコにそんなことしてないんだろ?」
「も、もちろんですわ! そんな卑劣なこといたしません!!」

 だよな。

「じゃあなんで、言い返さなかったんだよ」
「それ、は……まさか、エイミーとベルとロッテがあんなこと言うなんてショックで……」

 そりゃ、そうだよな。ツレに裏切られたんだもんな。

「でも……アレックス様が信じて下さって、とても心強かったですわ」

 エトワールが俺に微笑みかけると、俺の心臓がバクンと跳ねた。

「べ、別に普通だろっ!」

 それから俺は、昼休みにエトワールと過ごすようになった。

 エトワールは美人で頭がいいだけじゃなく、知識が幅広くて、話していて楽しかった。女は恋とファッションの話しかしないと思っていた俺は、自分の思い違いを恥じた。

「今度、私の誕生日パーティーをおこないますの。良かったらアレックス様、いらしてくださらない?
 他に……お呼びする方もおりませんし」

 親からお前もそろそろ社交界デビューしろと急かされていたが、そういうのが苦手な俺はパーティーとかサロンとかに出たことがなかった。

「まぁ、気が向いたらな」

 ぶっきらぼうに言いつつ、エトワールは何をプレゼントすれば喜ぶのかと考えていた。
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