【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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181.噂

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 カフェがオープンし、いつも通りの営業が始まった。クリスマスが終わり、客層はいつものように昼休みのサラリーマンやOL、近所の主婦たちで賑わっている。

「こんにちは、大川さん、水井さん」

 美羽はにこやかにグラスをテーブルに2つ置いた。彼らはこの近くの会社で営業として働いている、常連客だ。大川は美羽が大学生の頃から通っているので、長年の付き合いになる。水井は大川の部下で、最近よく連れ立ってランチに来ていた。

 大川はグラスを手に取り、目尻の皺を一層深くした。

「美羽ちゃーん、いつも可愛いねぇ」
「大川さん、そのセリフは奥さんに言ってあげてください」
「いやぁ、うちのかみさんなんて、いつもTV見て寝そべってるトドみたいなもんだから、そんな気にもなんなんいよ!」

 首と手を大袈裟に振った大川に、部下の水井が笑い掛ける。

「課長、そんなこと言っていいんですか? 奥さんに言いつけますよ」
「おいおい、やめろよ水井。お前だっていっつも『美羽ちゃん可愛い』って言ってんじゃないか」
「ちょ、ちょっとやめてくださいよ!!」

 水井は少し顔を赤らめ、一気にグラスの水を飲み干した。

「おふたりは、いつものでいいですか?」

 昔は客に好意を向けられたり、誘われたりする度にドギマギしていたが、今では交わすのが上手くなったし、常連客は美羽が人妻であり、オーナーの妹であることを承知の上で冗談として言っているので気が楽だ。

 注文を取り終え、厨房に向かう途中、大勢の騒めきから若い女の子達の会話が耳に入ってきた。
 
「あ、マミが話してたのってあの店員さんの弟じゃない?」

 やっぱりもう、噂になってるんだ……

 そう思いつつ美羽は素知らぬ顔で歩き、耳だけは会話に集中した。

「絶対そうだよ、めっちゃ綺麗だもん!! ねぇ、弟どこ? 見えないけど」
「厨房で働いてるって。でもオープンキッチンから見えないね。うわーっ、めっちゃ気になる!!」

 美羽は彼女たちが自分の担当卓じゃなかったことにホッとしつつ、速足で厨房のカウンターに向かった。

 店内を見回すと香織の担当卓の客が腰を上げ、レシートを手にレジへと向かっている。香織は新規の客に水を運んでおり、萌はウェイティングリストを確認していたが、客が向かってくるのを確認して、慌ててレジに入った。

「Aランチ2つ、お願いします!」

 美羽はオーダー表をカウンターに通して早口で告げると、空席になったテーブルを片付けるために踵を返した。

 自分の担当卓でなくても、互いに協力しあって客の流れをスムーズにする。長年一緒に働いている美羽と香織は何も言わなくてもそれが自然に出来、分かり合える。この一体感もまた、カフェ店員として働くうえで感じる充実感だった。

 昨日、一昨日と通常営業でなかったせいか、いつもより客が多い。普段なら11時半から客が増えてきて12時を過ぎると満席状態となりウェイティングかかるのだが、今日はオープンの10時からコンスタントに客が入り、11時半には満席となっていた。店の外にはウェイティングの長蛇の列が出来ている。

 厨房では隼斗がサラダを2つカウンターに出したが、美羽はテーブルを片付けていてすぐに取りに来られない。香織は新規の客にランチのことで色々質問を受けていて注文を取るのに時間がかかっており、萌はレジは終えたものの、ウェイティング客から苦情を受けている。

 隼斗はずらっと並んでいるオーダー表をザッと眺めてから短く息を吐き、前を向いたまま浩平に告げた。

「浩平! Aランチのサラダ、5番テーブルに持ってけ」
「えぇっ、無理っすよー! 今、パスタ茹でてんすからっっ!!」

 浩平がトマトソースをかき混ぜながら、声を荒げた。長年働いていてもランチタイムの忙しさは格別だ。特に今日はいつもより忙しいため、次々に入るオーダーをこなすのに精一杯で、厨房と接客を両方こなすなど、到底無理だ。

「じゃ、僕が持ってきますよ」

 隼斗が類に振り向いた。

「類。いや……類くん、卓番わかるのか?」
「えぇ、覚えました。隼斗兄さん、ほんとは呼び捨ての方が呼びやすいんでしょ? 浩平くんみたいに、僕のことも類って呼んでくれればいいから」

 類はにっこり微笑むと、隼斗の返事を待たずして厨房のドアを開けた。
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