【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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222.責任の押し付け合い

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 圭子が伸びをして、冷蔵庫に向かう晃に話しかける。

「ねぇ、どうするぅ?」

 早速缶ビールを取り出してプルトップを開けた晃が冷蔵庫の扉から顔を覗かせ、ぼりぼりと髭の剃り後を掻きながら思案した。

「とりあえずパチンコ屋でも行くか」

 ぇ。ありえない……

 美羽が呆然とする中、圭子が目を輝かせた。

「さんせー、今年最初の運試しね! そういえば今朝の新聞に、パチンコ屋のグランドオープニングのチラシが入ってたわ!」

 晃の提案に飛びついた圭子に、義昭は顔を顰めた。

「母さんがこれから荷物纏めて出ていくって言ってんだぞ! 親が離婚するかもしれないって時に、お前は何考えてんだ!」
「だーって、お父さんが頑固過ぎて話し合いにならないんだもん、仕方ないでしょ。
 それにお母さん、荷物纏めるってお父さんに言ってたけど、ただそうやって脅しかけてるだけでしょ。私たちだって、いきなりお母さんに来られても泊められないしぃ!

 年末年始のパチンコ屋なんて回収作業で負けるのが基本だけど、グランドオープニングなら勝てる確率高いんだから行っとかなきゃ! しかもお姉さんいるから、ほのか見ててもらえるし!!」

 圭子は今すぐにでもパチンコ屋に向かいそうな勢いだった。

「駄目だ。
 僕もお前と話なんてしたくないが、こんな事態になってるんだ。子供同士で今後について話し合いするべきだろう。僕たちの客間に来い」
「えーっ」

 不満そうに口を尖らせた圭子に、美羽は気が重くなりながらも口を開いた。

「もしお義母さんが本当に圭子さんたちのお宅で同居されるのであれば、今後のお義母さんの生活のサポートのこともありますし……」
 
 お金の話が絡むと分かった途端、圭子は態度をガラリと変えて二マッと笑った。

「そうよねぇ、ちゃんと相談して決めないとよねぇ! ほぉら、パパもビール飲んでないでついてきて!!」
「あ。あぁ……」

 晃は今度は頭をボリボリと掻きながら頷き、一同は義昭と美羽の客間へと向かった。

 テーブルがないため、皆座って顔を突き合わせる形になる。美羽は、皆より少し後ろに下がって座った。

「私たちがお母さんの面倒見るのに家賃や生活費なんかが一気にかかるんだから、そうね、毎月10万は兄さんたちに払ってもらわないとね!」

 いきなり金額をふっかけてきた圭子に、義昭が声を荒げる。

「生活にかかる具体的な金額をあげていないくせに、いきなり10万くれって言われてあげられるわけないだろう!
 それに、母さんが年金を受給するなら、その金だって入ってくるんだから、僕たちが全額を負担する必要だってない」
「でもお母さんはまだ年金もらえる年齢に達してないなら、今から受給するのはもったいないんじゃなぁい?」

 圭子の言うことも一理あった。どれぐらい離婚までに期間がかかるか分からないが、まだ満額受け取れる年齢に達していないのに受給を申請するのは勿体無いかもしれない。

 だがそうなると、琴子が別居の婚姻費用を受け取るまでの間、一文無しとなり、全ての生活費をサポートしなければならないことになってしまう。

 義昭は美羽の表情をチラッと媚びを売るように盗み見てから、眼鏡のつるをクイと持ち上げた。そんな仕草に、美羽の全身が総毛立った。

「今は母さんが金銭的に僕たちの助けが必要だってことは分かるから、出来るだけのことはするつもりだ。でも、父さんからの婚姻費用や離婚の慰謝料を受け取ったら、もう僕たちに頼ることはしないでくれ」

 圭子が眉間に皺を寄せた。

「さっきのお父さんの態度見たでしょ? 全然お金払う気ないじゃん!」
「その為に弁護士を雇うんだろ。
 僕は親の離婚を望んでないけど、こうなったら母さんをサポートするためにも婚姻費用と離婚に伴う慰謝料を弁護士を通じて父さんに請求するしかない。お前もこれから弁護士と会うこともあるだろうから、それなりの知識は頭に入れておけよ」

 圭子は「あー、もうっ!!」と言いながら髪の毛をクシャクシャッとした。

「私、難しい話苦手なのよねぇ! なんか弁護士とか超めんどくさそうなんだけどっ。
 美羽さん、お金持ってるんでしょ? ケチケチしないでお母さんの生活費ぐらい払ってよ!!」

 圭子のあまりにも図々しい態度に、美羽は言葉を失くした。

 圭子は知っているのだろうか。美羽が義昭から毎月僅か5万しか受け取っておらず、その中には生活費はおろか化粧品や美容院代まで含まれていることを。それでは足らないので仕事をするようになり、その中でなんとかやりくりしていることを。

 遺産に一切手をつけていないのは、父とずっと一緒に過ごすことが出来ず、最期を看取ることも出来なかったにも関わらずお金を受け取ってしまったという罪悪感もあるし、未だ父の死を完全に受け止めきれていないという心情もあるからだ。遺産に手をつけてしまうことで、父の死を認めてしまう気がして、美羽には出来なかった。

 それに、類の散財を心配していたこともあった。もし類が仕事に就かず、将来的に問題が起こった時には、そのお金を役立ててほしいという気持ちがあった。

 今は美羽と同じ職場で働いて一応職には就いているものの、単なるアルバイトだし、類が一生そこで働くとは考えられない。本当に類がシェフになりたいなら反対する理由はないが、美羽と一緒にいたいがためにカフェで働いているのは明らかだ。類は、自分の能力を活かせる仕事に就くべきだ。たとえ一時的に無職となっても、やりがいのある職場を見つけて働いて欲しい。

 父の遺産は、決して夫の妹夫妻の散財などに手を貸すためのものではない。

 もし、実は父の遺言書には『遺産は全て美羽に譲る』と書かれていたことを圭子が知ったら、その権利を主張した上で類が受け取った遺産を奪い、更に美羽から金をたかろうとするに違いない……

 そう思うと、余計に遺産には手をつけさせたくなかった。

 義昭が圭子に向かって激昂する。

「おい、圭子! なんだその言い方は!!」
「だって、美羽さん、お父さんからたくさん遺産もらったんでしょ。こっちに少しでも分けてくれたっていいじゃない。
 うちはパパの店の経営も大変だしぃ、お母さんの面倒だって見るんだからさぁ。それに、これからほのかも大きくなって色々とお金がかかるじゃない?
 兄さんとこは共働きで子供もいないんだから、そんなにお金かかんないでしょ?」

 圭子はタブレットに夢中のほのかを抱き寄せ、「ねぇー、ほのか♪」と同意を求めた。晃は下手に自分から関わることはせず、妻に全てを任せて気楽にビールを飲んでいる。

 共働きで子供がいないからって、どうしてそれがお金を払わなくちゃいけない理由になるの?

 こんな時にだけ母親面する圭子や、無関心を装いながらもしっかり金を狙っている晃に苛立ちを感じ、美羽は拳をギュッと握り締めた。

 義昭は圭子をゴミでも見るかのような目つきで言い放った。

「僕たちが子供がいない共働き夫婦だからって、お前たちに金を貸す義務なんてないし、絶対に金なんてやらないからな!」
「えぇっ、じゃあマンションの頭金は?」

 すっかりマンションを購入する気でいる圭子が、非難めいた口調で声を上げた。

「晃さんの店を担保にして、銀行からお金借りればいいだろ?」
「それだと利子がかかるじゃない! さっきお母さんも言ってたでしょ、助け合いが必要だって!!
 親子や兄弟間のお金の貸し借りなんて、どこでもやってるし、困ってる妹を見て自分からお金の工面しようかって言うのが普通でしょ」

 助け合いが必要だと主張する圭子だが、美羽は義昭と一緒になってから一度も圭子に助けられた覚えなどないし、これからもないだろうと思った。

 義両親の離婚話も平行線のまま長い話し合いになったというのに、また圭子とのお金の話で長くなりそうだ。きっと、圭子は少しでも多く金をむしり取ろうと、あの手この手を使って主張してくることだろう。



 もう嫌……ここからすぐにでも出ていきたい。
 類は今頃、どうしてるんだろう。あのメールの後、また何か連絡してきたかな……


 
 美羽が唇を噛み締めた時、スマホの着信音が鞄の中からくぐもって聞こえてきた。
 
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