【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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223.救いの声

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 類からだ!!



 美羽ははやる気持ちをおさえ、「失礼します」と言って立ち上がると、鞄からスマホを出した。

 スマホを持つ手が汗ばむ。心臓が飛び出しそうなぐらい爆音を響かせ、背中を向けていても気づかれてしまうのではないかと危惧してしまう。

 類、私をここから連れ出して……

 祈るような気持ちで画面を見つめた。

 だが……

 違う。

 そこにあったのは、類の名前ではなかった。

 類からでなかったことにがっかりしつつも、指で画面をスライドして電話に出る。

「もしもし」
『今、電話しても大丈夫か?』

 落ち着いた低い男性の声が、電話の向こうから響いてきた。

 隼斗、兄さん……

 その声を聞き、安堵が心の中に広がっていく。先ほどがっかりしてしまったことを後悔するぐらい、今はこの声に救われた気持ちになっていた。

「ごめん。ちょっと、待ってて」

 スマホから耳を外し、美羽は皆に軽くお辞儀をして部屋を出て行った。秘密にするような話など何もないが、あそこにいたら一言一句聞かれていそうで、会話がしづらい。

 急いで台所まで行き、声が届かなさそうな隅に立つと、スマホを再び耳に当てた。

「うん、大丈夫だよ。なんだった?」
『明日の出発の時間についての確認なんだが、飛行機の時間に合わせて7時にそっちに迎えに行けばいいか?』

 明日は隼斗がここまで車で迎えに来てくれて3人で羽田空港に行き、母と継父のいる福岡へ行くことになっていた。

 LINEメッセージを送った方がよほど早いのだが、隼斗はそういったたぐいのことが苦手なため、いつも用事がある時は電話をかけてくる。

 だが、電話がきたことによってあの場を抜け出すことができ、隼斗の性格に救われた。

 羽田空港までは車で1時間ほどなので、たとえ途中渋滞につかまっても7時にここを出れば、10時15分発の福岡行きのJAL便に十分間に合うだろう。

 明日になれば、隼斗兄さんが来てくれる。
 あと1日。あと少しの辛抱だ……

 美羽は、そう自分にいい聞かせようとした。

 だが……

「お願い……隼斗兄さん。
 今すぐ、迎えに来て」
 
 唇を震わせながら、そう告げていた。

 明日の朝まで待てない……
 もう、無理。

 誰でもいいから、ここから逃げさせて。

 追い詰められたギリギリの精神状態が、そんな言葉を美羽に言わせてしまっていた。

 隼斗が電話の向こうで息を呑む。

『何か、あったのか?』

 美羽の声が震えていたのを感じ取ったのか、心配するような口ぶりが伝わってきて、胸がキュッと締め付けられる。

 どうしよう……心配させてしまってる。
 本当は何もかも打ち明けてしまいたいけど、この家でのゴタゴタに隼斗兄さんを巻き込みたくない……巻き込むべきじゃない。

「あ、あの……お母さんからもっと早く来られないかって催促されたから、出来れば今日中に出発したくて……」

 苦しい言い訳であることは、自分でも分かっている。

 母親に催促されたからといって、もう飛行機のチケットは手配済みなのだ。急に母親が『すぐさま来い』というのも、美羽ひとりならまだしも、隼斗だけでなく夫である義昭もいるし、毎年正月には義昭の実家にいることも分かっているというのに不自然だ。

 隼斗は、気づいているかもしれない。
 義昭の家で何か悪いことが起こっていて、美羽がそれに巻き込まれているのだということを。

 隼斗が何と言うのかドキドキしながら待っていると、短く息を吐く音が聞こえてきて緊張が高まった。

『……分かった。これから、荷物を纏めてそっちに2時間後には行けるようにする。
 義昭くんは……このこと、知ってるんだよな?』

 義昭の名前を出され、美羽の心臓がドクンと跳ねた。

「う、うん……もちろん」

 張り付くような喉の渇きを覚えながら、美羽の頭が義昭への言い訳を考えてフル回転する。

 義昭さん、お母さんから急に呼び出しがかかったと言えば、納得してくれるかな。もし、ダメだと言われたらどうしよう……
 
 それは、福岡へ行けないことへの不安や心配ではなかった。

 美羽の心を占めていたのは、昨夜のように義昭に迫られたら……という焦燥だった。昨夜は義昭の自慰行為を聞かされるという目にはあったものの、躰に触れられることは免れた。

 けれど、それが今夜もそうだという保証はどこにもないのだ。

 今までは義両親の寝室の隣にいれば安心だと思っていたが、それが破られた今、信頼のおける隼斗と一緒にいることが美羽にとって唯一の逃げ道であるかのように思えた。

『じゃ、また後でな』
「うん。
 あ、あの……隼斗兄さん」

 おそるおそる呼びかけた美羽の声に、隼斗が答える。

『ん? なんだ?』
「あり、がとう……」
『あぁ』

 短く答えてから電話が切れた。そっけない返事なのに、なぜか隼斗の言葉には温かみを感じる。

 その余韻を感じつつ、いつまでもこの場所にいたい……そう思った。

 だが、これから出発する準備をしなければならないし、何より義昭を説得しなければならない。



 どうか、お願い。
 うまくいきますように……


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