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232.隼斗の思いやり
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「隼斗兄さんのところにもLINE送られてきた?」
「あぁ。嫌がらせのようにな。煩いから、通知音切っておいた」
「そう、なんだ……」
隼斗らしいと思いながらも、自分には到底真似できない。
幼い頃からそうだ。類が傍にいてもいなくても関係ない。
美羽は常に類に縛られて生きているのだ。
もう忘れたはずのこの感覚が、類と再会してから再び舞い戻ってきてしまった。いや、戻ってきたのではない。押し込めていたのが反動で増幅してしまった。
急に押し黙った美羽を前に、隼斗が眉を寄せた。
「義昭くんの家のこと、考えてるのか?」
美羽はゆっくりと隼斗へと眼差しを向けた。
義昭の家で嫌な思いを味わい、そこから逃げたくて隼斗に助けを求めたというのに、気がつけばまた類のことを考えてしまっている。どこにいても、どんなことをしていても、どんなことに心を支配されそうになっても、すぐに類に占領されてしまう。
類は、助けてなんてくれないのに……
美羽は唇をキュッと噛み締めた。
類への気持ちを押し隠し、美羽は小さく頷いた。
「何があったんだ」
隼斗の言葉に、今まで耐えてきた堰が崩れていく。
「私、今まで義昭さんのお義母さんはとてもいい人だって思ってたから、今回のことで裏切られたような気がして、ショックで……」
美羽は、琴子が離婚宣言をした経緯やそれに納得しない大作、自分のことしか考えず、子供を母親に任せっぱなしにする圭子や晃についてのことをポツリ、ポツリと打ち明けた。
けれど、まだ義昭からのモラハラや突然態度が変わり、迫るようになってきたことは話せなかった。出会った頃の義昭を知っていて、今でもそうだと信じている隼斗を裏切りたくないという気持ちもあったし、美羽自身、彼の突然の変化に戸惑い、どう説明すればいいのか分からないからという理由もあった。
美羽が話し終えると、今まで無言で耳を傾けていた隼斗がおもむろに口を開いた。
「家族だから難しい問題だと思うが、家族だからこその線引きも必要だ。美羽はお父さんから受け取った遺産を渡す必要はない。
もし何かあれば、すぐに俺に知らせてくれ」
美羽の肩から一気に力が抜けた。と同時に、今までどれだけ自分が気を張り巡らしていたかということに気づかされた。
「ありがとう、隼斗兄さん」
安堵とともに浮かべた笑みに、隼斗は包み込むような表情で頷いた。
隼斗が食後のカプチーノを手に、美羽に尋ねた。
「これから、泊まる場所を考えないとな」
今日、福岡に行くことをやめて明日の出発に変えたということは、ここで一夜を過ごすことになるのだ。
「うん……」
答えながら、美羽は小さく肩を震わせた。
義昭さんの実家にも、家にも帰りたくない……
そう言いかけた美羽の言葉を隼斗が遮った。
「空港近くのホテルを探そう。そしたら、明日の出発の時に楽だろ?」
「そ、そうだね」
美羽は固い笑みを見せた。
隼斗兄さん……私の気持ちを汲み取って、気遣ってくれたんだ。
美羽はスマホの画面を表示させ、ホテルの宿泊サイトに飛んだが、やはりこの時期はどこにも空きがない。
2部屋で設定してるから、空きがないのかな。
そう考えたものの、たとえ義兄とはいえ、隼斗と同じ部屋に宿泊することは躊躇われた。スマホを覗き込んでいる隼斗も同じ気持ちなのか、『1部屋で空きがあるか調べて欲しい』と言うことはなかった。
「……他の、サイトでも探してみるね」
美羽はスマホを手に幾つものサイトを開き、条件を打ち込み続けた。
「……ぁ。あった! ここ、どうかな?」
1件だけ、2部屋空いているホテルが見つかった。空港から車で30分だが、それでもまだ近い方だ。
隼斗が美羽のスマホを覗き込む。
「うん、いいな。じゃあ今夜はここに泊まろう」
宿が決まり、安堵して微笑みあった。
「宿も決まったことだし、デザートでも頼むか」
「うん、賛成♪」
隼斗は硬派な顔立ちに似合わず、甘いものも好きだ。そんな意外な素顔を知ったのも、隼斗に親しみを持ったきっかけのひとつだった。
「あぁ。嫌がらせのようにな。煩いから、通知音切っておいた」
「そう、なんだ……」
隼斗らしいと思いながらも、自分には到底真似できない。
幼い頃からそうだ。類が傍にいてもいなくても関係ない。
美羽は常に類に縛られて生きているのだ。
もう忘れたはずのこの感覚が、類と再会してから再び舞い戻ってきてしまった。いや、戻ってきたのではない。押し込めていたのが反動で増幅してしまった。
急に押し黙った美羽を前に、隼斗が眉を寄せた。
「義昭くんの家のこと、考えてるのか?」
美羽はゆっくりと隼斗へと眼差しを向けた。
義昭の家で嫌な思いを味わい、そこから逃げたくて隼斗に助けを求めたというのに、気がつけばまた類のことを考えてしまっている。どこにいても、どんなことをしていても、どんなことに心を支配されそうになっても、すぐに類に占領されてしまう。
類は、助けてなんてくれないのに……
美羽は唇をキュッと噛み締めた。
類への気持ちを押し隠し、美羽は小さく頷いた。
「何があったんだ」
隼斗の言葉に、今まで耐えてきた堰が崩れていく。
「私、今まで義昭さんのお義母さんはとてもいい人だって思ってたから、今回のことで裏切られたような気がして、ショックで……」
美羽は、琴子が離婚宣言をした経緯やそれに納得しない大作、自分のことしか考えず、子供を母親に任せっぱなしにする圭子や晃についてのことをポツリ、ポツリと打ち明けた。
けれど、まだ義昭からのモラハラや突然態度が変わり、迫るようになってきたことは話せなかった。出会った頃の義昭を知っていて、今でもそうだと信じている隼斗を裏切りたくないという気持ちもあったし、美羽自身、彼の突然の変化に戸惑い、どう説明すればいいのか分からないからという理由もあった。
美羽が話し終えると、今まで無言で耳を傾けていた隼斗がおもむろに口を開いた。
「家族だから難しい問題だと思うが、家族だからこその線引きも必要だ。美羽はお父さんから受け取った遺産を渡す必要はない。
もし何かあれば、すぐに俺に知らせてくれ」
美羽の肩から一気に力が抜けた。と同時に、今までどれだけ自分が気を張り巡らしていたかということに気づかされた。
「ありがとう、隼斗兄さん」
安堵とともに浮かべた笑みに、隼斗は包み込むような表情で頷いた。
隼斗が食後のカプチーノを手に、美羽に尋ねた。
「これから、泊まる場所を考えないとな」
今日、福岡に行くことをやめて明日の出発に変えたということは、ここで一夜を過ごすことになるのだ。
「うん……」
答えながら、美羽は小さく肩を震わせた。
義昭さんの実家にも、家にも帰りたくない……
そう言いかけた美羽の言葉を隼斗が遮った。
「空港近くのホテルを探そう。そしたら、明日の出発の時に楽だろ?」
「そ、そうだね」
美羽は固い笑みを見せた。
隼斗兄さん……私の気持ちを汲み取って、気遣ってくれたんだ。
美羽はスマホの画面を表示させ、ホテルの宿泊サイトに飛んだが、やはりこの時期はどこにも空きがない。
2部屋で設定してるから、空きがないのかな。
そう考えたものの、たとえ義兄とはいえ、隼斗と同じ部屋に宿泊することは躊躇われた。スマホを覗き込んでいる隼斗も同じ気持ちなのか、『1部屋で空きがあるか調べて欲しい』と言うことはなかった。
「……他の、サイトでも探してみるね」
美羽はスマホを手に幾つものサイトを開き、条件を打ち込み続けた。
「……ぁ。あった! ここ、どうかな?」
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「うん、いいな。じゃあ今夜はここに泊まろう」
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「宿も決まったことだし、デザートでも頼むか」
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