【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
238 / 498

232.隼斗の思いやり

しおりを挟む
「隼斗兄さんのところにもLINE送られてきた?」
「あぁ。嫌がらせのようにな。煩いから、通知音切っておいた」
「そう、なんだ……」

 隼斗らしいと思いながらも、自分には到底真似できない。

 幼い頃からそうだ。類が傍にいてもいなくても関係ない。
 美羽は常に類に縛られて生きているのだ。
 
 もう忘れたはずのこの感覚が、類と再会してから再び舞い戻ってきてしまった。いや、戻ってきたのではない。押し込めていたのが反動で増幅してしまった。

 急に押し黙った美羽を前に、隼斗が眉を寄せた。

「義昭くんの家のこと、考えてるのか?」

 美羽はゆっくりと隼斗へと眼差しを向けた。

 義昭の家で嫌な思いを味わい、そこから逃げたくて隼斗に助けを求めたというのに、気がつけばまた類のことを考えてしまっている。どこにいても、どんなことをしていても、どんなことに心を支配されそうになっても、すぐに類に占領されてしまう。

 類は、助けてなんてくれないのに……

 美羽は唇をキュッと噛み締めた。

 類への気持ちを押し隠し、美羽は小さく頷いた。

「何があったんだ」

 隼斗の言葉に、今まで耐えてきた堰が崩れていく。

「私、今まで義昭さんのお義母さんはとてもいい人だって思ってたから、今回のことで裏切られたような気がして、ショックで……」

 美羽は、琴子が離婚宣言をした経緯やそれに納得しない大作、自分のことしか考えず、子供を母親に任せっぱなしにする圭子や晃についてのことをポツリ、ポツリと打ち明けた。

 けれど、まだ義昭からのモラハラや突然態度が変わり、迫るようになってきたことは話せなかった。出会った頃の義昭を知っていて、今でもそうだと信じている隼斗を裏切りたくないという気持ちもあったし、美羽自身、彼の突然の変化に戸惑い、どう説明すればいいのか分からないからという理由もあった。

 美羽が話し終えると、今まで無言で耳を傾けていた隼斗がおもむろに口を開いた。

「家族だから難しい問題だと思うが、家族だからこその線引きも必要だ。美羽はお父さんから受け取った遺産を渡す必要はない。
 もし何かあれば、すぐに俺に知らせてくれ」

 美羽の肩から一気に力が抜けた。と同時に、今までどれだけ自分が気を張り巡らしていたかということに気づかされた。

「ありがとう、隼斗兄さん」

 安堵とともに浮かべた笑みに、隼斗は包み込むような表情で頷いた。

 隼斗が食後のカプチーノを手に、美羽に尋ねた。

「これから、泊まる場所を考えないとな」

 今日、福岡に行くことをやめて明日の出発に変えたということは、ここで一夜を過ごすことになるのだ。

「うん……」

 答えながら、美羽は小さく肩を震わせた。



 義昭さんの実家にも、家にも帰りたくない……



 そう言いかけた美羽の言葉を隼斗が遮った。

「空港近くのホテルを探そう。そしたら、明日の出発の時に楽だろ?」
「そ、そうだね」

 美羽は固い笑みを見せた。

 隼斗兄さん……私の気持ちを汲み取って、気遣ってくれたんだ。
 美羽はスマホの画面を表示させ、ホテルの宿泊サイトに飛んだが、やはりこの時期はどこにも空きがない。

 2部屋で設定してるから、空きがないのかな。

 そう考えたものの、たとえ義兄とはいえ、隼斗と同じ部屋に宿泊することは躊躇われた。スマホを覗き込んでいる隼斗も同じ気持ちなのか、『1部屋で空きがあるか調べて欲しい』と言うことはなかった。

「……他の、サイトでも探してみるね」

 美羽はスマホを手に幾つものサイトを開き、条件を打ち込み続けた。

「……ぁ。あった! ここ、どうかな?」

 1件だけ、2部屋空いているホテルが見つかった。空港から車で30分だが、それでもまだ近い方だ。

 隼斗が美羽のスマホを覗き込む。

「うん、いいな。じゃあ今夜はここに泊まろう」

 宿が決まり、安堵して微笑みあった。

「宿も決まったことだし、デザートでも頼むか」
「うん、賛成♪」

 隼斗は硬派な顔立ちに似合わず、甘いものも好きだ。そんな意外な素顔を知ったのも、隼斗に親しみを持ったきっかけのひとつだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...