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265.失われた希望
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華江は今すぐにでも美羽を結婚させたがったが、授かり婚だと疑われるのではと世間体を気にした義昭側がなんとか説得してくれ、美羽の大学卒業を待ってからの結婚という運びとなった。
大学卒業までのカウントダウンは、同時に結婚へのカウントダウンともなった。
それに伴い、華江は福岡へ引っ越すのを延期し、美羽が大学卒業して結婚するまで一緒に住むと宣言したため、既に仕事先を見つけた拓斗だけが先に福岡に住むこととなった。
式は全て華江の指示通りに動くため、美羽と義昭は式の後に行う結婚報告を兼ねたパーティーの準備を進めることとなった。
美羽も義昭もさほど友人が多いわけではないので、ホテルの披露宴会場のような大きいスペースではなく、小さなレストランを貸し切ってパーティーを開くことにした。
会場が決まると、料理やウェディングケーキ、装飾、ドレスやブーケ、招待状に席次、引き出物、司会者、ヘアスタイリスト、メイク、カメラマン、ピアノ伴奏者等、決めなければならないことが後から後から出てくる。
就職活動せず、単位を全て取り終えて大学に行く必要のない美羽は、隼斗の店でバイトをしながら結婚パーティーの準備に追われた。
こうしてどんどん準備が進むにつれて、恐ろしくなる。
本当に、私はこれでいいの?
類が、もし迎えに来てくれなかったら……私はこの運命を受け入れることができるのかな。
義昭とは、相変わらずプラトニックな関係が続いている。
義昭を恋しいと思う日が来るのか、分からない。恋人とも思えず、友人のように親しくもなれず、相手からの愛情をただ受け取る日々が、重みを増していく。焦燥だけが、募っていく。
とうとうこの日、美羽は絶望的な気持ちで大学の卒業式を迎えた。類からは、何の音沙汰もない。
結婚式は3日後に迫っており、明後日には式のために福岡へと発つことになっている。
卒業式のあとはゼミ仲間が中心となって開催する卒業パーティーに参加する予定だった。だが、袴姿からドレスに着替えて準備をしたものの、部屋から出られない。ゼミ旅行に行けず、卒業旅行も断り、今日の卒業パーティーまで欠席することを心苦しく思うが、とてもじゃないが平穏でなどいられなかった。
香織から何度も電話がかかってきていたが、電話に出る気にもなれず、着拒していた。
卒業式に類が現れて、自分を連れ去ってくれる……そんなロマンティックな場面を幾度想像したことか。あるいは大学の門をくぐった先に、家に帰る途中で、家に帰ってから……
その考えつくした、何パターンもの美羽の希望に満ちた未来予想図はことごとく打ち砕かれてしまった。
類! 類! どこにいるの!!
お願い、返事をして!! 私を感じられないの!?
ねぇ、約束したじゃない。迎えに来るって。
卒業したら類に会える……それだけが、私の唯一の希望だったんだよ。
お、願い、類……何か、応えて!!
必死に心の中で訴えても、何も返ってこない。
る、いぃぃぃ……
ドレスのまま美羽はベッドに身を投げ出し、ショールを投げ捨てた。
類がいない未来なんて、考えられない。
ねぇ、類……類……!!
私のことなんて、もう忘れちゃったの!?
こんなに、心も躰も類だけを求めているのに……
ふと、もし自分が知らない間に類が死んでいたら……という思いが掠め、背筋が凍りついた。
まさか、類。死んでるはずないよね!? それなら、絶対にお父さんが知らせてくれるはず。私だって、何か感じるはず。
でも、もし本当に類が死んでたとしたら。
一生、会えなかったとしたら……
私はこれから、なにを生きる糧にしたらいいの?
これだけ必死に美羽が呼び掛けても返事がないなど、類が生きているのであれば考えられない。いつかきっと手に届くはず……と信じていた類が、急速に遠ざかっていく。
美羽の視界が、一瞬で漆黒の闇に閉ざされた。
ーー類がいない世界なんて、私にとってなんの意味もない。
ふらふらと力なく立ち上がると、デスクに置かれたペンたてからカッターナイフを取り出した。
スライダーを上に押し上げるとともに、鋭い刃が伸びてくる。それを、細く華奢な白い手首に当てた。刃の無機質な冷たさが、神経に直接滲みる。
類とあの世で再会出来るなら、それはもっと幸福なことかもしれない……
大学卒業までのカウントダウンは、同時に結婚へのカウントダウンともなった。
それに伴い、華江は福岡へ引っ越すのを延期し、美羽が大学卒業して結婚するまで一緒に住むと宣言したため、既に仕事先を見つけた拓斗だけが先に福岡に住むこととなった。
式は全て華江の指示通りに動くため、美羽と義昭は式の後に行う結婚報告を兼ねたパーティーの準備を進めることとなった。
美羽も義昭もさほど友人が多いわけではないので、ホテルの披露宴会場のような大きいスペースではなく、小さなレストランを貸し切ってパーティーを開くことにした。
会場が決まると、料理やウェディングケーキ、装飾、ドレスやブーケ、招待状に席次、引き出物、司会者、ヘアスタイリスト、メイク、カメラマン、ピアノ伴奏者等、決めなければならないことが後から後から出てくる。
就職活動せず、単位を全て取り終えて大学に行く必要のない美羽は、隼斗の店でバイトをしながら結婚パーティーの準備に追われた。
こうしてどんどん準備が進むにつれて、恐ろしくなる。
本当に、私はこれでいいの?
類が、もし迎えに来てくれなかったら……私はこの運命を受け入れることができるのかな。
義昭とは、相変わらずプラトニックな関係が続いている。
義昭を恋しいと思う日が来るのか、分からない。恋人とも思えず、友人のように親しくもなれず、相手からの愛情をただ受け取る日々が、重みを増していく。焦燥だけが、募っていく。
とうとうこの日、美羽は絶望的な気持ちで大学の卒業式を迎えた。類からは、何の音沙汰もない。
結婚式は3日後に迫っており、明後日には式のために福岡へと発つことになっている。
卒業式のあとはゼミ仲間が中心となって開催する卒業パーティーに参加する予定だった。だが、袴姿からドレスに着替えて準備をしたものの、部屋から出られない。ゼミ旅行に行けず、卒業旅行も断り、今日の卒業パーティーまで欠席することを心苦しく思うが、とてもじゃないが平穏でなどいられなかった。
香織から何度も電話がかかってきていたが、電話に出る気にもなれず、着拒していた。
卒業式に類が現れて、自分を連れ去ってくれる……そんなロマンティックな場面を幾度想像したことか。あるいは大学の門をくぐった先に、家に帰る途中で、家に帰ってから……
その考えつくした、何パターンもの美羽の希望に満ちた未来予想図はことごとく打ち砕かれてしまった。
類! 類! どこにいるの!!
お願い、返事をして!! 私を感じられないの!?
ねぇ、約束したじゃない。迎えに来るって。
卒業したら類に会える……それだけが、私の唯一の希望だったんだよ。
お、願い、類……何か、応えて!!
必死に心の中で訴えても、何も返ってこない。
る、いぃぃぃ……
ドレスのまま美羽はベッドに身を投げ出し、ショールを投げ捨てた。
類がいない未来なんて、考えられない。
ねぇ、類……類……!!
私のことなんて、もう忘れちゃったの!?
こんなに、心も躰も類だけを求めているのに……
ふと、もし自分が知らない間に類が死んでいたら……という思いが掠め、背筋が凍りついた。
まさか、類。死んでるはずないよね!? それなら、絶対にお父さんが知らせてくれるはず。私だって、何か感じるはず。
でも、もし本当に類が死んでたとしたら。
一生、会えなかったとしたら……
私はこれから、なにを生きる糧にしたらいいの?
これだけ必死に美羽が呼び掛けても返事がないなど、類が生きているのであれば考えられない。いつかきっと手に届くはず……と信じていた類が、急速に遠ざかっていく。
美羽の視界が、一瞬で漆黒の闇に閉ざされた。
ーー類がいない世界なんて、私にとってなんの意味もない。
ふらふらと力なく立ち上がると、デスクに置かれたペンたてからカッターナイフを取り出した。
スライダーを上に押し上げるとともに、鋭い刃が伸びてくる。それを、細く華奢な白い手首に当てた。刃の無機質な冷たさが、神経に直接滲みる。
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