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422.エイプリルフールの悪夢
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類が、こんなに早く帰ってこられるわけない。
まさ、か……義昭さんじゃ、ないよね!?
でも、今は仕事中のはず。
不審に思ったかおりんが、戻ってきた……とか? でも、かおりんは類に送ってもらってるから、そんなこと出来るはずない。
玄関の扉が静かに閉められる。廊下を抜け、階段を上がってくる……足音からでは、誰なのか判断できない。
美羽の心臓の音が共鳴して、バクバクと激しく鳴り響く。
義昭さんが帰ってくるわけない。義昭さんは今、会社にいて、仕事をしているんだから。絶対に、義昭さんじゃない……
そう自分に何度も言い聞かせながらも、もしも義昭が類の企みに加担していたらと考えて、脂汗が滲み出てくる。躰が小刻みに、震えてくる。
類と香織の情交を聞かせられたあの時のように、今度は自分が義昭とさせられたら……いや、類がそんなことさせるはず、絶対にない。
けれど、類は美羽が義昭と結婚した後、性行為があったことも知っていたはずだ。
もう、あの頃のように、義昭と躰を重ねることなんて出来ない。嫌悪を持ちながらも我慢していたあの頃には、絶対に戻りたくない。
階段を上り切った足音は、義昭の部屋へとは向かってくれない。
美羽の部屋の前で足音が止まり、バクンッと心臓が跳ね上がる。現実を拒絶するかのように、美羽は瞳をギュッときつく閉じて祈りを捧げた。
お願い。類でいて……
類で、ありますように。
部屋の扉が静かに開く。
「お待たせ、ミュー」
……類、だった。
強張っていた全身が、弛緩していく。類の声を聞いて安堵している自分に気づき、自嘲するような笑みが零れた。
こんなことされても、それでも類が……いいだなんて。来てほしかった、なんて。類の、思うがままだ。
類がベッドに腰掛け、美羽を柔らかく抱き締める。
「バカなミュー、余計な心配することないのに。
僕が、あいつにこんなミューの姿、見せるわけないのに。あいつに触れさせることも、近づくことも、視界に入れることすら、したくない……」
冷たい空気に触れていた類の体温が、布越しに伝わってくる。彼の躰から、ほんの僅か……香織の残り香が鼻腔を突く。
ナニをイッテルノ……ホカの女を、ダイテオキナガラ。
ふと、思い出す。今日は、4月1日……エイプリルフールだったと。
これは、手の込んだ悪戯なの? 悪い、冗談なの?
それとも、悪夢?
明日になれば、何もなかったかのように、また元通り……なんて。元に戻るってナニ? どこからが、モトドオリなの?
分からない。分からない。
もう考えることも、疲れた……
「ック」
美羽の頬を、涙が伝う。
類が美羽の涙を指で掬い上げ、抱き締める腕に僅かに力を込めた。
「ミューのところに、少しでも早く戻りたくて。心の中で焦れ焦れしながら、あいつを駅まで送ってきたんだ。
あぁ、ここまで来るのに、どれだけ長く感じたか……会いたかったよ」
類の唇は真実を語っていると細胞で分かっているけれど、どこか白々しい演技のようにも感じてしまう。それは、これが類によって仕立てられたドラマだから、なのだろうか。
それで……早かったんだ。
香織は、躰を重ねて想いを実らせたと感じた恋人のつれない態度に心配し、心細くならなかっただろうか。今まで家まで送っていた類が駅までしか送らなかったことに、疑問を抱かなかっただろうか。
美羽の不安を汲み取り、類が頬に口づけた。
「大丈夫。疑われるようなヘマはしてないから」
香織が、類にとって単なる駒でしかないと分からせる言葉。香織のことを思って傷つき、同情しながらも、押し殺そうとしても湧いてくる優越感に、自分がどれだけ汚い女なのかを思い知らされる。
まさ、か……義昭さんじゃ、ないよね!?
でも、今は仕事中のはず。
不審に思ったかおりんが、戻ってきた……とか? でも、かおりんは類に送ってもらってるから、そんなこと出来るはずない。
玄関の扉が静かに閉められる。廊下を抜け、階段を上がってくる……足音からでは、誰なのか判断できない。
美羽の心臓の音が共鳴して、バクバクと激しく鳴り響く。
義昭さんが帰ってくるわけない。義昭さんは今、会社にいて、仕事をしているんだから。絶対に、義昭さんじゃない……
そう自分に何度も言い聞かせながらも、もしも義昭が類の企みに加担していたらと考えて、脂汗が滲み出てくる。躰が小刻みに、震えてくる。
類と香織の情交を聞かせられたあの時のように、今度は自分が義昭とさせられたら……いや、類がそんなことさせるはず、絶対にない。
けれど、類は美羽が義昭と結婚した後、性行為があったことも知っていたはずだ。
もう、あの頃のように、義昭と躰を重ねることなんて出来ない。嫌悪を持ちながらも我慢していたあの頃には、絶対に戻りたくない。
階段を上り切った足音は、義昭の部屋へとは向かってくれない。
美羽の部屋の前で足音が止まり、バクンッと心臓が跳ね上がる。現実を拒絶するかのように、美羽は瞳をギュッときつく閉じて祈りを捧げた。
お願い。類でいて……
類で、ありますように。
部屋の扉が静かに開く。
「お待たせ、ミュー」
……類、だった。
強張っていた全身が、弛緩していく。類の声を聞いて安堵している自分に気づき、自嘲するような笑みが零れた。
こんなことされても、それでも類が……いいだなんて。来てほしかった、なんて。類の、思うがままだ。
類がベッドに腰掛け、美羽を柔らかく抱き締める。
「バカなミュー、余計な心配することないのに。
僕が、あいつにこんなミューの姿、見せるわけないのに。あいつに触れさせることも、近づくことも、視界に入れることすら、したくない……」
冷たい空気に触れていた類の体温が、布越しに伝わってくる。彼の躰から、ほんの僅か……香織の残り香が鼻腔を突く。
ナニをイッテルノ……ホカの女を、ダイテオキナガラ。
ふと、思い出す。今日は、4月1日……エイプリルフールだったと。
これは、手の込んだ悪戯なの? 悪い、冗談なの?
それとも、悪夢?
明日になれば、何もなかったかのように、また元通り……なんて。元に戻るってナニ? どこからが、モトドオリなの?
分からない。分からない。
もう考えることも、疲れた……
「ック」
美羽の頬を、涙が伝う。
類が美羽の涙を指で掬い上げ、抱き締める腕に僅かに力を込めた。
「ミューのところに、少しでも早く戻りたくて。心の中で焦れ焦れしながら、あいつを駅まで送ってきたんだ。
あぁ、ここまで来るのに、どれだけ長く感じたか……会いたかったよ」
類の唇は真実を語っていると細胞で分かっているけれど、どこか白々しい演技のようにも感じてしまう。それは、これが類によって仕立てられたドラマだから、なのだろうか。
それで……早かったんだ。
香織は、躰を重ねて想いを実らせたと感じた恋人のつれない態度に心配し、心細くならなかっただろうか。今まで家まで送っていた類が駅までしか送らなかったことに、疑問を抱かなかっただろうか。
美羽の不安を汲み取り、類が頬に口づけた。
「大丈夫。疑われるようなヘマはしてないから」
香織が、類にとって単なる駒でしかないと分からせる言葉。香織のことを思って傷つき、同情しながらも、押し殺そうとしても湧いてくる優越感に、自分がどれだけ汚い女なのかを思い知らされる。
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