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455.離れていく心
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「ほな、よばれよか」
龍也が、隼斗が持っていた荷物から風呂敷を出した。風呂敷を解くと、美しい桜の装飾がほどこされた漆塗りの5段の重箱が出てきた。
『うわーっ』
重箱を開くと、皆が歓声を上げた。
桜の花弁の入ったおにぎり、龍也のリクエストした稲荷寿司、筑前煮、だし巻き卵、エビフライ、天ぷら、唐揚げ、スペアリブ、生春巻き、ピンチョス……さまざまな種類の料理が詰められている。
「みんなの希望を聞いていたら、こうなった」
隼斗の説明に、美羽はクスッと笑った。
隼斗兄さんらしいな。
「あ! エビフライと唐揚げはこうたんのリクエストだから、全部食べちゃだめたーん」
「じゃ、浩平の分は別でとっとく?」
「かおたん、いいアイデアたーん♪」
龍也が、重箱の入っていた鞄を探る。
「あんな、酒があらへんのやけど」
「酒は持ってきてない」
隼斗が答えると、香織が手を挙げた。
「あ! お酒持ってきてるよー。類くん、いい?」
「うん」
類が手にしていた保冷バッグを開ける。龍也が浮き足立って中を覗いたが、その途端、がっくりと肩を落とした。
「なんや、ビールと酎ハイだけやん。お花見ゆうたら、日本酒に決まっとるやろ」
「後で買えばいいだろ。まずはみんなで乾杯するぞ」
隼斗に諭され、龍也は仕方なくレモン酎ハイを手にした。
「まぁ、今日は花見のついでに龍也の歓迎会も兼ねてるから、みんな楽しんでくれ」
「こら、待てや。俺の歓迎会のついでのお花見やんな。
皆はん、隼斗に怒られたら俺に言うてな。こいつの弱み、ようさん握ってるさかい」
「お前、弁当なしな」
「ハハッ、冗談きついでぇ、隼斗」
「いや、冗談じゃない。お前にやる飯はない」
隼斗と龍也のやりとりを前に、美羽がデタントに入ってきた頃の思い出が蘇る。
昔も、こんな感じだったな。それで、いつも絵麻さんがふたりの間に入って……
「ほらほら、乾杯しよ! 私、お腹すいちゃったー」
絵麻の代わりに、香織が機転をきかせてくれた。
萌が桃の缶チューハイを手にしようとすると、龍也が手首を掴んだ。
「自分、警察捕まんで。未成年がこんな場所で酒飲んだらあかんやろ」
「ちょっ!! 萌たんはもう20歳になったんたーん! お酒かえすたーん!」
「こーんなおぼこい顔して、何言うてん。ほんまに20歳なら、まだロリ服着とるん、イタすぎやろ」
「も、萌たんはおばあちゃんになっても、自分の好きな服着るたーん! たったんには、関係ないたーん!!」
「たったん……ブホッ。マジでイタい子やで」
『かんぱーい!』
ようやく缶を合わせて乾杯し、隼斗が用意してくれたお弁当をいただく。みんなの箸が伸び、それぞれ好きな物を取って紙皿に載せていく。
萌が唐揚げをパクリと口にし、頬を思いっきり緩ませた。
「やばみー、このからあげ、超絶美味しいたーん♪ 隼たん、神ー!」
「俺を『たん』呼ばわりするのは、やめてくれ……」
隼斗がボソッと呟く。
「あ、そーだ。こうたんの分!」
料理がなくならいうちに、萌はせっせと紙皿に浩平の食べる分を取り分けていった。
龍也が筑前煮を食べ、隼斗に口を尖らせる。
「隼斗、なんなんこれ?」
「あ? 筑前煮だが」
「俺は、炊いたん食べたかったわ」
「わざわざ別に煮てたら、時間が足りん」
「ねぇねぇ、なんの話?」
香織が話に割り込んでくる。
「煮物は素材をひとつの鍋で煮て一気に味付けするのが普通だが、京都では『炊いたん』と言って、素材ごとに煮て一緒に盛り付けるんだ」
「へぇ、そうなんだ。別々の鍋でそれぞれ煮るなんて、面倒くさいね」
「京都人は繊細やから、素材そのものを味わいたいんよ。豪快な東京人には、理解できひんやろけど」
「だからって、全部お前の好みには合わせられん。それに繊細とか言うが、京都人だって味の濃いラーメンとか食べてるだろ」
「アハハ! 隼斗さんがこんなに喋るの、珍しい。ほんと2人っていいコンビだね」
「やろ? 俺のおかげさんで、隼斗がようやくみんなに馴染んでるんやさかい、感謝してほしいわ」
龍也が目を細めると、隼斗がじろりと睨む。
「俺は、前から馴染んでる」
「ぁ、自分気付いてなかったんか。ごめんやで、気づかせてもうて」
「いやそれ、どっかで聞いたようなセリフなんだけどー」
「はやたん、たったんコンビ、サイコー!!」
香織と萌が爆笑する。美羽は微笑みながらも、心が遠く離れているのを感じた。
みんな、楽しそうなのに……私と類だけ、浮いてる。私たちだけ、別の空間にいるみたい。
龍也が、隼斗が持っていた荷物から風呂敷を出した。風呂敷を解くと、美しい桜の装飾がほどこされた漆塗りの5段の重箱が出てきた。
『うわーっ』
重箱を開くと、皆が歓声を上げた。
桜の花弁の入ったおにぎり、龍也のリクエストした稲荷寿司、筑前煮、だし巻き卵、エビフライ、天ぷら、唐揚げ、スペアリブ、生春巻き、ピンチョス……さまざまな種類の料理が詰められている。
「みんなの希望を聞いていたら、こうなった」
隼斗の説明に、美羽はクスッと笑った。
隼斗兄さんらしいな。
「あ! エビフライと唐揚げはこうたんのリクエストだから、全部食べちゃだめたーん」
「じゃ、浩平の分は別でとっとく?」
「かおたん、いいアイデアたーん♪」
龍也が、重箱の入っていた鞄を探る。
「あんな、酒があらへんのやけど」
「酒は持ってきてない」
隼斗が答えると、香織が手を挙げた。
「あ! お酒持ってきてるよー。類くん、いい?」
「うん」
類が手にしていた保冷バッグを開ける。龍也が浮き足立って中を覗いたが、その途端、がっくりと肩を落とした。
「なんや、ビールと酎ハイだけやん。お花見ゆうたら、日本酒に決まっとるやろ」
「後で買えばいいだろ。まずはみんなで乾杯するぞ」
隼斗に諭され、龍也は仕方なくレモン酎ハイを手にした。
「まぁ、今日は花見のついでに龍也の歓迎会も兼ねてるから、みんな楽しんでくれ」
「こら、待てや。俺の歓迎会のついでのお花見やんな。
皆はん、隼斗に怒られたら俺に言うてな。こいつの弱み、ようさん握ってるさかい」
「お前、弁当なしな」
「ハハッ、冗談きついでぇ、隼斗」
「いや、冗談じゃない。お前にやる飯はない」
隼斗と龍也のやりとりを前に、美羽がデタントに入ってきた頃の思い出が蘇る。
昔も、こんな感じだったな。それで、いつも絵麻さんがふたりの間に入って……
「ほらほら、乾杯しよ! 私、お腹すいちゃったー」
絵麻の代わりに、香織が機転をきかせてくれた。
萌が桃の缶チューハイを手にしようとすると、龍也が手首を掴んだ。
「自分、警察捕まんで。未成年がこんな場所で酒飲んだらあかんやろ」
「ちょっ!! 萌たんはもう20歳になったんたーん! お酒かえすたーん!」
「こーんなおぼこい顔して、何言うてん。ほんまに20歳なら、まだロリ服着とるん、イタすぎやろ」
「も、萌たんはおばあちゃんになっても、自分の好きな服着るたーん! たったんには、関係ないたーん!!」
「たったん……ブホッ。マジでイタい子やで」
『かんぱーい!』
ようやく缶を合わせて乾杯し、隼斗が用意してくれたお弁当をいただく。みんなの箸が伸び、それぞれ好きな物を取って紙皿に載せていく。
萌が唐揚げをパクリと口にし、頬を思いっきり緩ませた。
「やばみー、このからあげ、超絶美味しいたーん♪ 隼たん、神ー!」
「俺を『たん』呼ばわりするのは、やめてくれ……」
隼斗がボソッと呟く。
「あ、そーだ。こうたんの分!」
料理がなくならいうちに、萌はせっせと紙皿に浩平の食べる分を取り分けていった。
龍也が筑前煮を食べ、隼斗に口を尖らせる。
「隼斗、なんなんこれ?」
「あ? 筑前煮だが」
「俺は、炊いたん食べたかったわ」
「わざわざ別に煮てたら、時間が足りん」
「ねぇねぇ、なんの話?」
香織が話に割り込んでくる。
「煮物は素材をひとつの鍋で煮て一気に味付けするのが普通だが、京都では『炊いたん』と言って、素材ごとに煮て一緒に盛り付けるんだ」
「へぇ、そうなんだ。別々の鍋でそれぞれ煮るなんて、面倒くさいね」
「京都人は繊細やから、素材そのものを味わいたいんよ。豪快な東京人には、理解できひんやろけど」
「だからって、全部お前の好みには合わせられん。それに繊細とか言うが、京都人だって味の濃いラーメンとか食べてるだろ」
「アハハ! 隼斗さんがこんなに喋るの、珍しい。ほんと2人っていいコンビだね」
「やろ? 俺のおかげさんで、隼斗がようやくみんなに馴染んでるんやさかい、感謝してほしいわ」
龍也が目を細めると、隼斗がじろりと睨む。
「俺は、前から馴染んでる」
「ぁ、自分気付いてなかったんか。ごめんやで、気づかせてもうて」
「いやそれ、どっかで聞いたようなセリフなんだけどー」
「はやたん、たったんコンビ、サイコー!!」
香織と萌が爆笑する。美羽は微笑みながらも、心が遠く離れているのを感じた。
みんな、楽しそうなのに……私と類だけ、浮いてる。私たちだけ、別の空間にいるみたい。
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