溺れるカラダに愛を刻んで【完結】

山葵トロ

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 「だって……、私、変なのよ! 」

 叫んでいる自分に、ひどく美花は驚く。 でも、止まらない。


 「変って? 」

 「いっ、今までこんなこと無かったのに、貴方には触れられると身体が震えるの、ふわふわとして訳が分からなくなるの 」

 「うん 」

 「こんなのおかしい。 あんな行為、男の欲望を処理するだけの何の意味もないことなのに 」


 怖いのは、自分も同じところまで落ちてしまうこと。
 そうなってしまったら、身体だけでなく心まで汚れてしまう。


 「貴方だって、さっき『やばいな』って言ったじゃない! 私のこと、おかしいと思ってるんじゃない!! 」

 けれど、潤む瞳でキッ……と睨み上げると、何故か浩峨が「えー、あー……」っと歯切れ悪く美花から視線を逸らした。

それを肯定と捉えた美花は、目付きを更にきつくする。


 「ほらっ、やっぱりそうなんじゃないのっ! 口ではいいことを言っていても、無意識に本音は出るものね! 」

 「いやまぁ、本音は本音なんだけれども…… 」

 つきん……と胸に刺さる針。

 分かっていても、実際に目の前で聞かされるのは辛かった。

 「……本音って、認めたわね 」

 「でもね、認めるけど、きっと美花ちゃんの思ってることと全然違うと思う。それよりも……、さっきのことって、本当? 」

 「え……」

 「僕が触れると身体が震えるとか、ふわふわして訳が分からなくなるとか 」


 間近で煌めく艶やかな黒い瞳に、美花はドキッとした。

 「そ、それは…… 」

 「あっ、やっぱ聞かなくてもいい 」


 浩峨の口唇が、ちゅっと零れる涙を掬うように、美花の眦に口付ける。

 「……っ!? 」

 「だって美花ちゃん、今こんなに震えてる 」


 そのまま、確かめるように、ふわりと美花を包むしなやかな長い腕。

 「何、する……! 」

 「あのね、美花ちゃん 」


 耳元に降りてきた口唇が、あまやかな低い声を鼓膜の奥に落とす。
 それだけで、ビクッ……といちいち反応してしまう自分が信じられない。


 「僕に感じてくれるのは、ちっとも変なことじゃないよ? だって僕は、美花ちゃんのことを可愛いって思ってるんだから 」

 「か、可愛いって…… 」

 「美花ちゃんは、心と身体の伴わないセックスしかしたことが ないから、判断が出来なくなってるんでしょう? 本当はちゃんとした貞操観念持ってるくせして、似合わないことしてるから罪悪感で凝り固まってる 」


 後頭部をまるく撫でた指が、首筋をスルリと伝う。
 擽ったくて、自然に上向きになってしまったおとがいを、もう片方の曲げた人指し指に捉えられた。


 「待っ、あの…… 」

 きゅっ……とあまく痛む胸が、これ以上は駄目だと警鐘を鳴らす。

 「私……っ、好きな人がいるのよっ? 」

 「知ってるし、さっきも聞いた。 でも、 美花ちゃん、僕のことも好きでしょう? 」


 自分でも気付いていなかったことを当然の如く言われて、美花の心臓は跳ね上がった。

 「馬鹿なこと、言わないでよっ! そんなことある訳……っ 」

 「だから、さっき、好きなヤツの代わりにしていいって言ったのは取り消す 」


 美花の言うことを気にせず、浩峨は話を続ける。
 にっこりと笑った微笑みに捕らわれまいと、美花は最後の抵抗を試みた。


 「自惚れるのはいい加減にして! 私は貴方なんか…… 」

 押し返す胸元。 一見細く見えるくせに、どこにそんな力があるのかびくともしない。

 そんな美花を見て、浩峨がまた笑う。

 「うん、じゃあそういうことにしておいてあげる。でもその代わり、観念して僕に愛されちゃいなさいね 」

 「な……っ、んっ……!」


 重ねる口付けは、初めから先程のものとはまるで違った。
 角度を変え、吸って、舐めて、あまく食む。


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