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しおりを挟む「おっ……と! 」
勢いが付いて、倒れ込んだ先、ばふっとベッドのスプリングが沈み込む。
押し倒される形となった浩峨が美花の体を受け止めながら、ひゅうっと口笛を吹く。
「あらま、ダイタン 」
だけど、美花はその軽口にも言い返すことが出来ない。
ひっく……と、盛大にしゃくりあげると浩峨の肩口に顔を埋める。
「美花ちゃん、さっきから泣きっぱなしじゃん。 おめめ、うさちゃんになっちゃうよ 」
こっちは真剣なのに、どことなく楽しそうな声音。
いつまでも泣く美花にくすくすと笑って、浩峨は長い手で抱え込んだ頭を撫でた。
「そんなに俺のこと、好き……? 」
自信過剰な言葉にも、美花は頷くより他、術を持たない。
「すき……ぃ…… 」
詰まる喉から絞り出した声に、愛しい人の手が止まる。
「もっかい言ってよ、美花ちゃんの顔見ながら聞きたい 」
あまくねだられて、美花は洟を啜りながらおそるおそる顔を上げた。
そこにあったのは、想像していた余裕の表情ではなく、美花の気持ちを乞うような切ない瞳。
「……好き、で……す」
自然に口を突いて溢れた言葉。 それを聞いた浩峨が満足げに優しく目を細める。
「一番? 」
「はい 」
「誰よりも? 」
「はい……」
指先で口唇に触れて、猫のように喉を擽られた。
「俺も美花ちゃんが、《一番》、《誰よりも》、大好きだよ 」
掠れて濡れた囁きに、全身が震える。告白は媚薬のように、心も身体も蕩けさせた。
しかし、指先で辿る後を追うように浩峨の口唇が首筋に落ちてきて、うっとりとしそうになった美花はハッ……となる。
「橘さんっ! 何してるんですか?! 」
「何してるって…… 」
突然叫んだ美花に、浩峨が瞠目するのが分かった。
けれど、その瞳は直ぐに艶めいた色を宿す。
「想いを伝え合った恋人同士がすることなんて、一つじゃない? 」
「違……っ、ん…… 」
構わず行為を続ける悪戯な手に身体を探られて流されそうになるが、美花は慌ててその手を押さえる。
「だめ……っ、時間が無いって言ってたじゃ…… 」
「うん、言ってたね 」
ちゅっと、啄まれる口唇。
「……っ! 橘さんっ! 」
「ねぇ、美花ちゃん。 俺のこと、名前で呼んでよ 」
こちらの言うことを聞いているのかいないのか、そんな戯れ言を言う男に美花はキッ……と眦をきつくする。
「ふざけないで! 」
「ふざけてないよ。だって美花ちゃん、ホントは心の中で俺んこと、ずっと名前で呼んでるっしょ? 」
ニッ……と笑った浩峨が、美花の両手を戒めた。
けれど片手で纏められたそれよりも、指摘されたことの方に動揺してしまい抵抗が遅れてしまう。
「な、な、何言って…… 」
「それに、時間が無いって言ったのは仕事のことじゃないよ。
急がなきゃ、俺の我慢の限界が来ちゃうよって話。 まぁ、明日は早く行かなきゃなんないだろうけど 」
こういう時の為に周りに恩は売ってあるし? と嘯く男に美花はまた叫ぶ。
「うっ、嘘つきっ! 」
「いやいや、誤解したのは美花ちゃんでしょう? 」
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