溺れるカラダに愛を刻んで【完結】

山葵トロ

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★お兄さん達の本音(*BL要素アリマス。注意要*)

8-8

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 「お前なぁ…… 」

 けれど、目に飛び込んできたのは美花ではなく、もっと向こうにいる浩輔の姿。
 まともに視線がかち合ってしまい、どぎまぎとして身体が固まる。

 あっちも初めは驚いていたのか目を円くしていたけれど、直ぐに優しく瞳を細めるとヒラヒラと手のひらを振ってきた。


 「……っ! 」

 ずぎゅんと心臓が射貫かれる感覚に見舞われて、壱葉は慌ててキッチンに逃げ込む。
 ドンと台の上に置いたプリンの紙袋が、大きな音を立てたけれどそんなことはどうでもいい。

 壱葉はシンクに手を付いたまましゃがむと、暴れる心臓を抑える為に呼吸を整えた。



 どうして、俺これだけでこんなんなってんの?

 好きなのはあっちのハズ。俺はほだされただけなのに。
 こんなにときめくのは、窓からの柔らかい日差しにきらきらとして、ただでさえ男前なのが、三割増し、いや五割増しに見えただけだ。

 でも……。


 「……もぉ、油断したー」

 あんなにカッコ良く微笑わなくてもいいのに。
 ちゃんと準備してたら、こんなにダメージ受けなかったのに。


 くそぉ……と毒突いた瞬間、がっくりと力を抜いた弾みでゴンッ! とシンクの端に頭をぶつける。


 「いぃ……ってェーー!! 」

 飛び散る火花にあげた大声。 すると、背後から美花の呆れた声が聞こえた。


 「ばか壱葉、さっきから一体何やってんのよ 」

 尻餅ちを付いて見上げれば、そこには腕組みをして見下ろす妹の冷たい視線。
 キリッと切れ上がった、形の良い大きなアーモンド型の瞳は気の強さも相俟って、余計に呆れ返りこちらを見下しているように感じる。


 「おま……っ、俺は兄貴だぞ! 呼び捨てにするのも、馬鹿にするのもいい加減にしろっ! 」

 「それが嫌だったら、兄らしくしゃんとしなさいよ。あれ位で動揺しちゃってみっともないったら 」


 え……?

 全くもう……と肩を竦めた妹に、壱葉はまさかと青くなる。


 「美花、何言って…… 」

 「仕方ないから、暫くは頼りなくても兄さんって呼んであげるわ。でも、いずれは私があなた達の《お姉さん》になること、忘れないでよ? 」


 それは、浩輔との関係を知っているということで、口をパクパクさせる壱葉に美花はクスッと笑った。


 「い、いつから…… 」

 「それから、もう一人の未来の弟にも言っておいて。 いつも私の為に緑茶の葉を用意してくれてるけど、実はあんまり好きじゃないのよね 」

 本当は紅茶の方が好きなの……と、人差し指を下唇に当てる仕種は悪びれなさを装っている。

 分かっていてやっているのが、また小憎らしい。


 「こ、こ、こんの…… 」

 最近、しおらしくなっていたと思っていたが、やっぱり美花は美花だ。


 「性悪……!!」

 それを聞いた美花が堪え切れずに笑いだす。




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