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あれからの、あんなこと、こんなこと

11.井田が、あんなこと、こんなこと ②

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 ◇

 宇山とは、大学の入学式でたまたま隣に座って知り合った。話してみたら奇跡的に何もかもが合って、それなのに同族嫌悪みたいな不快感もいだかなかった。
 自慢だが俺は見た目がいい。興味はないけどモデル事務所にスカウトされることだってよくある。まあ、元もいいし努力もしてるからそれは当然か。だけど、見た目だけで寄ってきて勝手にがっかりして離れていく奴らには、学校でもそれ以外でもいいかげんうんざりしてた。
 他人のために理想像を演じるつもりはない。後になっていろいろ言われるくらいなら、早めに見切りをつけてくれた方がマシだ。誰に残念がられるとしたって、中身を隠すつもりも全然ない。
 結果として初対面であっさり引いてく人間が多い中、宇山は俺が童貞だってことや大学デビューの打算を知っても態度を変えたりしなかった。少しはびっくりしてたけど、むしろ自分と同類だってことに喜んでた気もする。
 俺に変な期待をしない七瀬と有川のそばも居心地がいいけど、俺のどうしようもない本質を知っても「好きだ」って簡単に口にする宇山の存在は特別だ。

 あいつは俺が七瀬とやってるのを見るのが好きで、自分が七瀬とやってるのを俺に見られるのも好きらしい。当然のように同じ性癖だと思われて、そんな宇山に同意したのも嘘じゃないけど、俺の場合はもうちょっと強欲かもしれない。
 七瀬にちんこを突っ込みながら、宇山がどんなふうにされるのが好きそうか顔色をうかがって。七瀬とやってる時の宇山にもアナルプラグを挿れさせて、いつかその尻を俺に差し出してくんねーかな、なんて期待して。
 そもそも宇山には、俺のちんこをくわえるのを嫌がる気配が最初から全然なかった。嬉々として有川の部屋をヤリ部屋に仕立て上げるくらい、エロいことも大好きだ。お盆明けから慣らしたアナルプラグだっていつも気持ちよさそうにはめてるし、あれから指も一本だけなら挿れさせてくれるようになった。それなのに、俺のちんこは穴にあてがうだけでも無理っていうのはどういうこった。酷いことはしたくないのに、宇山の「無理」の境目がよく分からない。
 どうしたら俺の要求に応えてくれるかなんて、そんなふうに他人のことを考えるのは初めてで、マジで分からないことだらけだ。

 ◇

 そんな膠着こうちゃく状態が続く中、うつぶせで足を開いている七瀬の尻たぶをつかんで、二人で指を挿れて穴の中をいじってた時のこと。宇山の口から衝撃発言が飛び出した。

「あ、すげ。ここちょっと膨らんでぴくぴくしてる。七瀬がこの前言ってた気持ちいいとこってここ? これって前立腺? なあ、井田も触ってみろって」
「え、あーこれ? つか俺いっつもここでイかせてるけど」
「マジか。えー、なんでそんなん知ってんの」

 えー、逆になんで知らねえの。かれこれ三か月も自分の尻にアナルプラグ挿れておきながら、中のどこが気持ちいいかも自覚してなかったとかおかしくね? つか、こいつは分かってなくてもいつもこんなに勃起してんのか。……すげーな。
 普通に話してるから忘れそうになるけど、今もプラグが収まってる宇山の尻とちんこの状態を思わず確認して、七瀬の尻に視線を戻す。

「いや普通にやってたら分かるって。ほら、こーやって……」

 宇山が惜しみなく使ったローションで濡れた穴の中で、宇山と俺の人さし指が絡み合いながら七瀬のいい所をとんとんと小刻みにたたく。と、ここまでおとなしくしていた七瀬が、抱きかかえた有川の枕から顔を上げてえた。

「るせっ。も、お前らぐちゃぐちゃ言ってねーで、早くどっちが先か決めて挿れろって!」



 あおむけでM字開脚した七瀬に俺がちんこを挿れると、前に有川がやってたみたいに、宇山がそのフチから指を滑り込ませて中から刺激し始めた。横から宇山に至近距離で見られてることにも興奮するし、ちんこに指の骨がコリコリ当たるのもかなり気持ちいい。

「あっすごい、イってる? 今イってるよね? これドライってやつ?」

 ちんこ汁も出さないで震える七瀬に、仕入れたばかりの知識を確認しながら宇山が追い打ちをかけた。初めて七瀬とやった時も自分のHを実況してたくらいだから、別に言葉責めのつもりじゃないんだろうけど。でも今の流れ弾、確実に有川に当たってんぞ。
 枕に口元をうずめて身体を小さく跳ねさせていた七瀬が、涙目で宇山をにらんだ後、頬杖をついてテキストを読んでいる有川に物欲しそうな視線を投げた。まだイってない俺も、まだ何度でもイける七瀬の穴に小刻みにちんこを打ち付けながらそっちをちらりと見る。
 いつもああやって涼しい顔で勉強してるふりをしてる有川だけど、実はあれで七瀬の気を引く作戦を実行中だ。こんな状況でテキストなんか読んでられるはずもなく、実際はフィボナッチ数列を数えたりしてやり過ごしてるとか笑える。
 つか、そんなに意識しまくってんのに、七瀬が俺らに輪姦まわされてても平気なのはどういうわけなんだか。いや、まあ、平気っていうか俺らに挿れられてる七瀬を見て興奮する類いの性癖だっていうのは分かるんだけど、理解まではできない。
 多分俺は、宇山の尻をいじるのは自分だけじゃないと無理だ。七瀬とやるのはマジで気持ちいいし、二人でいじるのも楽しいし、宇山が七瀬とやってんのを見るのも好きだけど。

 あの日軽いノリで始めたことに、まさかこんなにハマるなんて思わなかった。もし女の子と付き合えたとしても、今さら普通のHとかで満足できる気がしない。こんなとこまで気が合わなくてもいいだろってくらい四人ともどうかしてるけど、それでも時々、こん中で一番まともなのは俺なんじゃねーかと思う。

 ◇

「宇山に挿れる時さー、あれ、どーやったらお前みたいに気持ちよくできると思う?」

 あ、やべ。今3Pの最中だった。
 有川に手をつながれたまま俺の下で揺すぶられてた七瀬が、眉間にしわを寄せて俺を見上げた。つかなんでこいつら恋人つなぎだよ。
 まあ確かに、衝動的に切り出したはいいけど、やってる時には言うなって感じだよな。それに、本当は一回もやってないことを伏せたままじゃ、まともな相談にすらならない。
 前立腺のよさを知ったならそろそろ宇山ともやれるかと思ったのに、あれ以来、俺は宇山に挿れようとするたびに撃沈することになった。完全に手詰まりだし、期待した分だけ凹みもする。

「……俺、一回でも気持ちいいとか言いましたっけ」
「いや言ってねーけど分かるし。……ほら」

 相変わらず素直じゃないな。からかうように七瀬の弱いとこを強めにこすってやったら、一瞬息を詰めてにらんできた。つないでない方の手で、有川がなだめるように七瀬の頭を撫でるとこまでがワンセットだ。
 ……もうほんと何なのこいつら。これで付き合ってないとか嘘だろ。
 七瀬が俺らとのHをアナニーの延長線上みたいに考えてるとしても、有川が絡む時だけは何か違う気がする。俺も七瀬とやってんのはオナニーに近いけど、相手が宇山だったらまた違う感じになんのかな。いや、それ以前にどうやったらあいつに入るんだ、マジで。
 動きを緩めてやると、七瀬がため息をついて視線をそらしながら口を開いた。

「なあ。やってる時って、あいつちんこってんの?」
「あー……、勃ってはない、かな」

 アナルプラグなら勃つけど、俺のを挿れようとしたらちょっと心配なくらいしおしおになる。

「ん。え、……と、普通は中こすられてもぞわぞわするだけ、らしい。勃ってたら、前立腺とかすげー気持ちいいんだけど」

 ああ、そっか。こいつ常にノータッチで完勃かんだちだから、それ以外の場合が分かんねえのか。

「んじゃ、勃たせとけばいいってこと?」
「多分。あと、挿れるそっち側はどうだか知んないけど、こっち側は力抜いといた方が気持ちいから、そこ気を付けるとか」
「ほーん」

 まあ、宇山の場合その力抜くとこからなんだよな。あれは物理的な問題だけじゃない気もするし。
 七瀬は準備する時に自分でほぐしてくるのか、それとももうそういう身体になってんのか、いつもたいして慣らす必要もなく俺らのちんこを受け入れる。気持ちの面でも、「前戯とかいいから早く挿れろ」とか男前すぎて参考にならない。
 つか、俺の質問に答えながらでも七瀬が興奮してくるのが、穴から伝わってきた。言わせるような言葉責めも有効だった、って今度宇山に教えてやろう。
 結局何も解決しなかったけど、俺はそれなりに収穫もあったことに満足して腰振りを再開した。多少雑でも七瀬のちんこはえないし、有川の手柄でもあるけど簡単に中イキしてくれるからいろいろと安心だ。


 七瀬が風呂に入ると、慣れた手つきでシーツを取り換えながら有川が声を潜めて言った。

「なあ、つーかさあ、お前ちょっと一回引いてみたら?」
「いや……、俺あんまお前みたいな演技っぽいの? できそうにないんだけど」

 どう見たって両想いなのに、それでもこいつは七瀬の気を引くために涙ぐましい駆け引きを続けている。まあ、八割方そういうプレイを兼ねてるんじゃないかって気もするけど。
 ともあれ、同じように俺が宇山相手に、わざと興味がないふりをしてじらしたり、やる時だけ甘やかしたり、なんていう切り替えを今さらできるわけがない。つか、そもそもそんな器用なまねができてたらこの歳までこじらせてない。

「あー、そういうんじゃなくて。手出しすんの完全に止めてみたら、ってこと。そもそもお前目の前に宇山が裸で転がってたら無視とかできねーだろ」
「あ、ハイ」

 確かに、有川みたいに「前日にもうこれ以上出ねえってくらい抜いとく」なんていう裏技とも言えないただの力技で我慢できるはずがない。だったら最初から見ないでおく方が楽だ。

「だからしばらく宇山誘うの自体やめてみろよ。そしたら向こうから寄って来たりもするんじゃねえの?」
「ええー。そんなにうまくいくかー?」

 宇山は「無理」とは言っても「嫌だ」とは言わないから、可能性がまったくないとは思わないけど。理性と本能の間でぐらぐらしながら考え込んでると、風呂から出てきた七瀬が引き戸を開けるなり言い放った。

「そういえばローションちゃんと使ってんの? お前結構デリカシーねえし、いろいろ雑だしちょっとケチるとこあんじゃん。時間もローションもいっぱい使って、一回ゆっくり丁寧にやってみれば?」

 いや……、ずっと考えてたのかそれっぽいアドバイスくれたのはいいけど、微妙にディスられた気がすんのはなんでだ。
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